空飛ぶサメVS巨大植物
ルル火山の、時空の歪みが発生しやすい地点を順に捜索していく。
すると冒険者達はわりとすぐに見つかった。
崖っぷちに生えているウツボカズラに似た巨大植物の蔓に捕まっていたのだ。
巨大植物は栄養が欲しくなると、捕らえた人を消化液の入った袋に浸けている。
「人が捕まってる……炎とか吹雪は使っちゃ駄目だね、フカ。
かと言って糸、怪力、分身が役に立つのは思えない」
リタが言うと、ガルルと吠えてフカも同意する。
「とにかく協力して倒すしかない。
下級兵士は植物の上空を飛んで、あの厄介な蔓を引き付けてくれ。
上級兵士は袋を攻撃するんだ」
ジェネの命令に従って、騎士団は二手に分かれた。
リタとフカ、シアに乗ったヴェイルは下級兵士として上空に赴く。
巨大植物は早速、飛び回る兵士達をうっとうしがって蔓をもたげ、暴れさせる。
その隙にジェネやセーナ達が袋の部分に斬り掛かる。
少し傷を付けることは出来たが、痛みに反応した巨大植物が蔓を激しく振り下ろしたせいで撤退せざるを得なかった。
蔓に叩き潰されて負傷した者まで出る。
植物の蔓は再びリタ達目がけて振り上げられた。
その時、ヴェイルが驚異的な反射神経で蔓を掴み返した。
ヴェイルはそのまま巨大植物の周りを旋回し、袋に蔓を巻き付けた。
「これで窒息でもしろ……!」
「ヴェイル! こいつは全身で呼吸している。
一箇所を締めても無駄だ!」
「そんな……!」
ジェネの忠告にヴェイルは虚を突かれる。
しかしリタは、ヴェイルが掴んでいた蔓を代わりに持った。
「リタさん?」
「今のお話しで思い付いたことがあります。
ヴェイルさんは蔓を捕まえて兵士達に渡してください。
貴方の反射神経がなくては無理なことです」
「分かりました!」
ヴェイルはシアを駆って飛び回り、リタに言われた通り蔓を捕まえては兵士に預けた。
やがて巨大植物は全ての蔓を掴まれ、身動き出来なくなる。
「今のうちに袋を斬れば良いのね!?」
セーナが訊くが、蔓を掴んでいる下級兵士達は叫ぶ。
「駄目だ、こいつの袋は硬すぎる!
袋を斬れる前に、俺達の体力が尽きそうだ……」
彼の言う通り、蔓は今も兵士達の手から逃れようと暴れ続けていた。
いつ手を放してしまう者が居てもおかしくない。
するとリタが叫んだ。
「フカ、吹雪を吐いて!
ただし袋にじゃなくて、地面に!」
フカは嬉々として吹雪を吐く。
地面はだんだん凍り付くも、火山の地熱ですぐに氷が溶け、ぬかるんだ。
地面がぬかるんだことで植物はぐらついた。
上級兵士も蔓を掴むのに加わり、全員で巨大植物を引っ張り上げる。
「うおー、かっけー! 雪ザメとか最高だぜフカ様ー!」
ヴェイルだけは少し変なテンションになっていたが、今は彼に突っ込んでいる余裕など無かった。
轟音と共に、巨大植物の根が地面から抜けた。
途端に植物は力を失い、その場で萎れる。
「助かりました……」
「騎士団の皆さん、ありがとう。特に噂のサメさん」
やっと蔓の拘束から抜け出すことが出来た冒険者達が言った。
「え、フカって噂になっているんですか」
リタが訊くと、冒険者達は微笑んだ。
「はい、とても」
「私は、サメに乗った兵士さんが大蜘蛛から助けてくれたって。
救助された本人から聞きました」
「ああ、あの時の人から!?
やっぱりフカは凄いねえ」
リタが褒めると、フカはリタの頭を撫でた。
君も凄いよ、とでも言っているかのようだった。
「フカ、食べるか」
ジェネが巨大植物の一部を持って来てくれた。
勿論フカは食べて、能力を得る。
「フカ様は植物も食べるんですね!」
ヴェイルが目を輝かせながら近付いて来た。
「はい。一番の好物はトウモロコシ料理なんですよ」
「それは凄い!」
リタとヴェイルがフカを挟んで話している横で、セーナがジェネに訊ねた。
「ジェネ様。この巨大植物ってどうなさるんですか?
利用出来ると小耳に挟んだのですが」
「ああ、こいつは疲労がぶっ飛ぶ薬の材料になる。
だから持ちかえって騎士団の財源にするんだ。
さて、巨大植物を切り分ける作業に斬りかかるとするか」
「……そんなものを食べてフカは何の能力を手に入れたのかしらねえ……」




