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没落令嬢は空飛ぶサメを駆る 〜異世界転生してきた最強生物と一緒に騎士として成り上がります〜  作者: 二階堂まりい


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10/23

空飛ぶサメと謎の美青年

 騎士団員が詰所に集まってくると、集会が始められた。リタとフカもその列に並んでいる。


「本日より新たな仲間が加わる」

 ダンテの紹介に合わせて、建物から男が出て来た。

 その姿を見て、リタとフカは思わず声を出しそうになった。

 彼はシノビとの市街戦でリタや子どもを助けてくれた、御伽噺の王子様のように美しい青年だったからだ。


「はじめまして、ヴェイル・ドレイクと申します」

 彼の自己紹介に、兵士達は喋ったり動いたりはしなかったものの動揺したようだった。

 無理もない、ドレイクといえば小さいが領地を持つ、伝統ある子爵家だ。


「ドレイク家の家訓により、子爵家以外の視点を持てるよう、一定期間ではありますが騎士団に所属させていただくこととなりました。

 足を引っ張らないよう頑張りますので、よろしくお願いします」

ヴェイルの謙虚な挨拶に、団員達からは素直な拍手が巻き起こった。

 フカも見様見真似で拍手をする。


『……あのヴェイルって人、今、私達の方を凝視してなかった?』

 リタの中で胸騒ぎがした。



 集会が終わると早速、ヴェイルは兵士達に話し掛けられる。

「へえ、ヴェイルって長男なのかよ! 

 子爵家の後継ぎなのに下級兵士からの出発で良かったのか?」

「ええ、僕だけ特別扱いなんて変でしょう。

 それに腕には覚えがあるので、すぐに上級に上り詰めて騎士にも任じられてみせますよ」

「言うなあ、君」

 さらっと自信満々の発言をするヴェイルに、皆が苦笑する。


「子爵家以外の視点を持つって言うんなら文官にでもなっておけば良かったのに、何でわざわざ危険な騎士団に?」

 訊ねられると、ヴェイルは真剣な表情になった。

「……会いたい方が居たっていう動機は不純でしょうか?」

「え、誰に!」

「では今から個人的にご挨拶してきます」

 ヴェイルは立ち上がると、近くでセーナと剣の打ち合いをしていたリタの方へと真っ直ぐに歩いて来た。


「ヴェイルさん。一緒に鍛錬しますか?」

 手を止めて言ったリタの前で、ヴェイルは跪く。

「シノビと戦っているお姿を一目見た時から、なんて格好いいのだろうと思っておりました。

 あの日から一度とてそのお姿を忘れたことはございません」

 恭しく言うヴェイルの前で、リタは混乱した。

 こんな情熱的な言葉に対して、何と返して良いか分からない。

 セーナや周りの兵士達も、まさか超絶美形子爵家長男が没落令嬢ごときにいきなり告白なんて、と見守っている。


「どうかお名前を教えてはいただけませんか……麗しきサメさん」

 ヴェイルが語り掛けていたのは、リタの少し後ろに漂っていたフカだった。


 フカは首を傾げている。

 セーナや兵士達は一気に脱力した。


「フカです」

 自分に愛情が向けられているのではなかったと分かって安堵したリタは、にこやかに答えた。

 フカもヴェイルと仲良くしたいらしく近付くと、ヴェイルはぱあっと目を輝かせる。

「フカ様とおっしゃるのですね! 

 ああ……刺々しいお姿、鋼のような光沢、漆黒の瞳、サメにして空を飛ぶという訳の分からなさ……最高すぎるぜ!」

 リタ以上に変な奴が増えたな……とセーナは思ったが、口には出さなかった。


 リタはヴェイルに引くどころか、同調する。

「初対面でフカを怖がったり警戒したりしなかったのは、うちの母とヴェイルさんくらいのものですよ。

 そうか、格好いいと思ってくれてたんですね」

「勿論です!」

「フカは強くて格好いいだけじゃなくて優しいんですよ。聞きます?」

「是非!」


 はしゃぐヴェイルの背中を小突く者があった。

 一頭の天馬が、ヴェイルを冷ややかに見下ろしている。

「シア。嫉妬してるのかい? 

 大丈夫だよ、シアへの特別とフカ様への好きは全く別物で、比べられるようなものじゃないんだから」

 このシアという天馬が、ヴェイルの相棒らしい。

 フカが絡まなければヴェイルは紳士のようだが、とセーナは密かに頭を抱えた。


「そうだ、僕はリタさんのことも凄いと思ってますよ」

 唐突にヴェイルが言った。

「え? 私何か凄いことしたことあったかな……」

「僕が二度目にフカ様とリタさんを見た時、リタさんはフカ様に食べさせる前の合成獣肉を毒見していらしたでしょう? 感心しました」

「は、はあ……それは、お褒めいただきありがとうございます……!」

 モンスターの肉を齧るという無茶な行動をまさか将来の同僚に見られていたとは思っていなかった。

 何故か、他の人に見られていたよりも恥ずかしい気がする。


「リタ、そんなことしてたのね。

 確かに凄いとは思うけど……大丈夫だった? 

 お腹壊したりしなかった?」

 セーナが心配してくれる。

「うん、大丈夫だった! 

 全く平気だったから、それ以上この話は掘り下げないで……」

 その時、詰所の門が開いた。

 入って来た男女はそれぞれにルル火山の管理人と、冒険者組合の委員長だった。


「どうされましたか」

 詰所に緊張が走る中、ジェネが二人の対応をする。

「ルル火山に入山した冒険者が、予定していた日数までに戻らないのです」

「ルル火山は時空の歪みが発生しやすいので心配で……」

「承知しました。騎士団がすぐ向かいます」


 そうして組織された出動隊の中にはリタとフカ、セーナ、ヴェイルの名があった。

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