☆二章☆1-7☆旧王族
───共和国政府庁舎
白い石材で造られた巨大な庁舎は、砂漠の陽光を反射して眩しいほどに輝いていた。正面には太い円柱が何本も並び、その間では、獅子をはじめとする様々な獣を模した紋様が描かれた色鮮やかな布が、砂漠の風にはためいている。
「共和国を構成する主要部族の紋章だよ。王国になる前は部族同士で争うことも多く、一つの王国になった時に“それぞれ違っても、一つの国を作る”って意味を込めて作られて、共和国になってからは、この共和国政府庁舎に飾られるようになったんだって」
隣でフィンが教えてくれた。
「へえ……」
よく見ると、庁舎へ入っていく人々の姿は実に様々だった。獅子や狐の耳を持つ者、大きな角を生やした者、羽毛に覆われた腕を持つ者までいる。尻尾も細いものから、床を掃除できそうなほど立派なものまであり、人間が大半を占めるミネルヴァ王国とは、街の景色そのものがまるで違っていた。
『ノエル』
「ん?」
肩に座っていたソルが、ノエルの耳元で淡々と言った。
『あの尻尾、気持ちよさそう』
「触るなよ?」
『まだ何もしてない』
「“まだ”って言ったよな?」
『妾も触りたい』
「ルナまで!?」
二人の視線の先には、警備をしている犬系獣人らしい男性の、ものすごくふさふさした尻尾が揺れていた。
(頼むから国際問題を起こさないでくれ!)
妖精王が外国政府庁舎で警備員の尻尾に飛びついた───なんて外交記録、後世に絶対残したくない。
「君たち、そろそろ行くよ」
少し前を歩いていたコンラッドが、苦笑しながら振り返った。
「政府庁舎で問題を起こすと、僕も担任として報告書を書くことになるからね」
『では我慢する』
『教師の書類仕事を増やすのはよくない』
「俺の心配じゃないんだ……」
この二人は教師への配慮だけは妙に現実的だなと思いながら、ノエルはコンラッドの後に続き庁舎へ歩いていった。
────
───
──
庁舎内は、外観から想像していた以上に広かった。巨大な吹き抜けの下には幾つもの受付窓口が並び、職員たちが忙しなく行き交っている。壁には共和国全土を描いた巨大な地図が掲げられ、その隣には各地域の水源状況や交易路、魔物の発生区域までが細かく表示されていた。魔道具や各種装置を手に駆け回る職員の姿もあり、庁舎内はまるで一つの巨大な都市のような活気に満ちていた。
「なんというか……活気がありますわね。王城の官庁とは、随分雰囲気が違いますわ」
「王国だと部署ごとに建物が分かれていることも多いからな。こちらは国民が直接利用する窓口も多いようだ」
アイリスが周囲を見回し、アルベルトも興味深そうに辺りを見ていた。
「共和国だからね。選ばれた議員とか、地域代表とか、部族代表とか、いろんな人がここに集まって国を動かしてるんだよ」
『めんどくさ…複雑そう』
『めちゃくちゃめんどくさ……複雑』
「意見が多いからね。でも、一人で全部決めるよりはいいって考え方」
(なるほど…王様が最終的な決定権を持つミネルヴァ王国とは、根本から違うのか…)
そんなことを考えていると──
「フィン」
低く、落ち着いた声が聞こえた。
「あ!ライブ兄さん!」
フィンの顔がぱっと明るくなった。ノエルも振り返り、思わず息を呑む。
そこに立っていたのは、銀色の髪と澄んだ蒼い瞳、砂漠の日差しに映える褐色の肌を持つ、二十代後半ほどの男性だった。頭には獅子の耳があり、腰の後ろでは同じ色の長い尾がゆっくりと揺れている。
端正な顔立ちだが、柔らかいというより凛々しい印象が強い。背筋は真っ直ぐに伸び、立ち姿には一切の無駄がない。服装は決して派手ではない。それなのに、彼が歩く先では、周囲の人々が自然と道を空けていた。
───この人は偉い人だ。
説明されなくても、ひと目で分かった。
「久しいな」
「久しぶり! 元気だった?」
「ああ」
「俺も元気!」
「だろうな。一目で分かる」
「そう?」
(……フィンの再従兄弟のお兄さん)
偉い人特有の空気を一瞬でぶち壊していくフィンのおかげで、急に身近に感じた。
ライブ・ラージュは、ノエルたちへ視線を移す。
「君たちが、ミネルヴァ王立アストル魔法学院から来た遠征隊か」
「はい。引率を務めています、コンラッド・スターリットです」
「ライブ・ラージュだ。この国では外政及び治安政策の一部を担当している」
コンラッドとライブが握手を交わした後、ノエルたちも順番に頭を下げる。
「ノエル・メレディスです」
「アイリス・ステラルーチェですわ」
「アルベルト・ノービリタスです」
「シャスール・フォレスティ」
最後にフィンが胸を張る。
「フィン・クローバー!」
「お前のことは産まれた時から知っている」
「そっか!」
ノエルは、思わず吹き出しそうになった。この二人は、きっといい関係なのだろう。厳しそうなライブさんの瞳には、フィンを見守る兄のような温かさが宿っていた。
「立ち話もなんだ。こちらへ」
案内されたのは、庁舎の上階にある会議室だった。
☆
「まず確認したい」
机を挟んで、ライブさんが腕を組む。
「君たちは、枯れたオアシス群と古代遺跡との関連性を疑っている──そういう理解で間違いないか?」
「はい。偶然にしては位置関係が整いすぎています」
コンラッドが鏡晶石を机の上に置くと、画面に共和国の地図が浮かび上がった。そこには、枯れたオアシスの位置を示す点と、それらを結んだ巨大な円、さらにその中心に位置する特級封鎖区域が表示されている。
「地下の魔力流にも異常が確認されています。枯れた水源から中心方向へ向かって、微弱ながら魔力が流れているようです」
「まるで……吸い取られているようにね」
シャスールがさらりと言うと、ライブさんの獣耳がわずかに動いた。
「吸い取られている、か」
「可能性だけなら、だけど」
「いや。無視はできない」
ライブさんは鏡晶石の地図へ視線を落とした。
「政府も、今回のオアシス枯渇が単純な干ばつではない可能性を疑っていた。しかし、古代遺跡との関連までは掴めていなかった」
「政府は異常気象と発表してたよな?」
ノエルが尋ねるとライブは軽く頷いた。
「あれは現時点で国民へ説明できる範囲の情報だ」
「……全部は発表してない?」
「不用意な混乱を招く情報は、公表できない場合もある」
言い切る声に迷いはなかった。
「水は、この国の生命線だ。『何者かが意図的に水源を枯らしているかもしれない』などと確証なく発表すれば、買い占め、暴動、地域間の水利権争いを招く可能性がある」
「なるほど……」
ノエルもライブの説明に納得した。真実を伝えることが、必ずしも正しいとは限らない。少なくとも、国を預かる立場の人たちにとっては。
「難しいですわね。民へ情報を開示する責任と、民を混乱から守る責任。両立しない場合もあるというのは…」
アイリスの言葉にライブは頷いた。
「そうだ。政治とは、正解を選ぶ仕事ではないことの方が多い。損失の少ない選択をし、その結果に責任を負う仕事だ」
「ライブ兄さん、昔からこうなんだよ。十五歳くらいからずっと難しい顔してた」
フィンが小声で囁いてきた。
「聞こえているぞ」
「耳いいなぁ」
「獣人だからな」
「そういう問題?」
ノエルが突っ込むと、ライブの口元がほんの少しだけ緩んだ。
「そういえば、一つ気になっていたことがありますの。ラージュ家は、かつてこの国を治めていた王家なのですよね?」
アイリスが姿勢を正して尋ねた。
「ああ」
「王政が廃止された際、反発はなかったのですか?」
かなり踏み込んだ質問だったが、ライブは嫌な顔一つせず、静かに答えた。
「当然、あった。だが、王政そのものが完全な悪だったわけではない。歴代の王の中には、民を愛し、国のために尽くした者も多い。街道を整備した王、水利を改善した王、部族間の争いを終わらせた王もいた」
ライブは窓の外へ目を向けた。砂漠の中央に築かれた共和国の首都が、陽光を浴びて広がっている。彼はその街並みを見つめながら、少し声を落として言葉を続けた。
「だが、時代が進むにつれて、一部の貴族が腐敗した。税を私物化する者、交易商から賄賂を受け取る者、法を自らに都合よく運用する者、地位を家柄だけで継ぎ、責任を果たさぬ者」
「……それが、王政廃止の原因に?」
「積み重なった結果だ」
数百年前、民衆の不満は限界に達していたが、大規模な内戦には至らなかった。改革派の貴族や商人、部族長、一般市民、そして王家が長い議論を重ねた末、国民投票によって共和制への移行が決定された。
「国民投票……」
「当時のラージュ王家は、その結果を受け入れた」
アルベルトが驚いたように眉を上げる。
「王位を、自ら放棄したのですか?」
「正確に言えば、国民がもう王を必要としないと判断した時、私たちは王位にしがみつかなかった。国は王のためにあるんじゃない。王が国のためにあるんだ。だから、国民が王を必要としないと決めた時点で、王としての役目は終わる」
「それで、今のラージュ家は貴族として残った?」
ノエルが尋ねると、ライブは頷いた。
「ああ。ただし、意味合いは昔とは違う。支配するための家ではない、国民へ責任を負うための家だ。……家柄というものは、権利ではない。先人が積み重ねた信用と責任を、次代へ引き継ぐ仕組みだと私は考えている」
フィンがそこで口を開いた。
「信用かぁ…それなら商人とそんなに変わらないね」
「……ほう?」
ライブがフィンを見る。
「父さんもよく言ってるよ。商人にとって一番大事なのは信用だって」
「利益ではないのか?」
「利益も大事だよ!めちゃくちゃ大事!!」
「力強い言葉だな」
「だって商売だからね!」
フィンは笑う。
「儲からなきゃ、雇ってる人に給料も払えない。商品も仕入れられないし、困ってる土地へ物資を運ぶこともできない」
「それはそうだな」
「でも、目先の金だけ追いかけて信用をなくしたら、もっと大きな商売ができなくなる」
机へ頬杖をつきながら、フィンは続けた。
「父さんは、人との縁ってよく言うんだ」
遠い国で助けた旅人、小さな村で買った特産品、一度だけ取引した職人、護衛を依頼した冒険者。そうした一つひとつの縁が、何年も後になって思いがけない形で商売へとつながっていくのだ。
「商人はね、人と人の間を物でつなぐ仕事なんだって」
「フィデル殿らしいな。さすが、お祖父様から愛妹を攫っていった男の息子だ」
ライブが、しみじみと息を吐いた。
「いや、待って!? 確かに若い頃のじいちゃんは顔が良かったって、ばあちゃんがよく惚気てたけど、そこじゃないからね!?」
フィンが即座に立ち上がる。
「じいちゃんがばあちゃんを攫ったんじゃなくて、ばあちゃんが自分から家を飛び出して、じいちゃんについていったんだから! うちでは“大恋愛”! なのにラージュ家では“令嬢誘拐事件”!? 家同士で歴史の名前が違いすぎない!?」
「ラージュ家の記録では、“当主が溺愛していた妹が、家を飛び出し、顔だけは良い商人の男と駆け落ちした”となっている」
「顔だけは良いって、そこだけ妙に褒め言葉なのやめて! あと、駆け落ちなら誘拐じゃないよね!?」
「クローバー家の記録では?」
「“運命の大恋愛”!」
「一方は誘拐事件、もう一方は運命の大恋愛……随分と温度差がありますわね」
アイリスが真顔で首を傾げる。
「歴史とは、立場によって解釈が変わる良い例だね」
コンラッドまで、どこからか教師らしい顔で頷いた。
「先生、教材にしないで!」
『フィンの家族は面白い。しかも、祖父は顔が良い』
『父親も顔が良い。子供が十四人いるだけの理由はある』
「何を納得してるの!?」
フィンの顔が一気に真っ赤になる。ソルとルナは、そんなフィンをじっと見つめた。
『祖父から受け継いだ顔の良さ。フィデルに六人の妻がいるのも納得できる。六人とも、フィデルを選んで当然』
『そして、その美貌を受け継いだ子供が、なんと十四人もいる。祖父は誰もが振り返るほどの美男子で、父も負けず劣らずの整った顔立ち。フィンも当然のようにその血を受け継いでいる。つまりクローバー家とは、家系図ではない。上から下まで美形が連なる、まさに美貌の大行列』
「いや、ルナはなんで急にそんな長文を一息で言えるの!? 肺活量どうなってるんだよ! あと、俺まで当然のように美形扱いするのやめて! 恥ずかしすぎて顔から火が出そうだし、今すぐ砂漠に穴を掘って埋まりたいから!」
ノエルはとうとう堪えきれず、吹き出してしまった。フィンは顔を真っ赤にしたまま、ソルとルナを指差した。
「ノエル! 笑ってないで助けてよ!」
「いや、だって……」
ノエルは笑いを堪えながら、フィンを見た。
「十四人兄妹になるだけの理由は、確かにあるんだなって」
「そこに納得するなぁ!」
「……でも、確かに似てるのかもな」
ひとしきり笑ったあと、ノエルはふと思ったことを口にした。
「え?」
「ライブさんと、フィンのお父さん」
「私とフィデル殿が?」
「考え方はかなり違うけど…ライブさんは、責任とか秩序とか、国への奉仕を大事にしてる」
「そうだな」
「フィンのお父さんは、信用とか利益とか、人との縁を大事にしてる」
「うん」
「でも結局さ」
ノエルは窓の外へ目を向けた。街道を行き交う人々や荷車を引く商人、庁舎へ入っていく役人、遠くを進む隊商の姿が見える。
「どっちも、この国を回してるんじゃないか?」
国を治める者だけでも、商人だけでも、国は成り立たない。秩序を守る者、物を運ぶ者、水を管理する者、農作物を育てる者、武器を作る者、そして人々を守る者──それぞれが役割を果たし、互いに支え合っているからこそ、国は成り立っている。
「……なるほど」
ライブが、感心したようにこちらを見る。
「面白い見方だ。学生にしては、悪くない」
「なんか上からだな! ……いや、元王族だから仕方ないのか?」
「私は二十八だ」
「年齢の話だった!?」
「それに、政府高官でもある」
「肩書きまで追加された!」
「ノエル、諦めた方がよろしいですわ」
アイリスが肩を竦める。
「その方に口喧嘩で勝とうとするのは、砂漠で水を撒いて湖を作ろうとするようなものですわ」
「例えがこの国仕様になってない!?」
「でも、千年くらい続ければできるかもしれない」
シャスールが真顔で呟いた。
「できるかどうかの話じゃない!」
さっきまで国の在り方について真面目に話していたはずなのに、いつの間にか、ノエルがライブに口喧嘩で勝てるかどうかの話になっている。
しかも、誰も止める気がない。
ライブまで、いつの間にか口元をわずかに緩めていた。厳格な表情を崩さないように見える人だけに、その小さな変化が妙に印象に残る。けれど、本人も自分が笑いかけていたことに気づいたのか、やがて表情を引き締めた。
ひとしきり笑いが落ち着いたところで、ライブが小さく咳払いをする。
その音を合図に、和やかだった空気がゆっくりと引き締まり、再び本題へと切り替わった。
「では、本題へ戻ろう。古代遺跡の開門石板について、だったな」
「はい。資料館の記録では、代々王家が管理していたとあります」
コンラッドが頷く。
「その記録は正しい」
俺は思わず身を乗り出した。
「じゃあ、石板はラージュ家に?」
けれど、ライブはすぐには答えず、表情を僅かに硬くした。
「古代遺跡の鍵となる石板は、確かにラージュ家が管理していた……が、今はない」
「それは、紛失したということですか?」
「そんな重要な物を?」
「どういうことですの?」
アルベルトが聞き返し、俺とアイリスも身を乗り出した。
「……石板は───」
ライブが言いかけた、その瞬間だった。バンッ!! 会議室の扉が勢いよく開いた。
「ライブ様!」
駆け込んできたのは、共和国政府の制服を着た獣人の男性だった。
「何事だ」
「緊急報告です!妹君、レナ様が行方不明とのことです!」
ライブの獣耳がぴくりと動いた。
「……何?」
「本日昼頃から所在が確認できず、護衛とも連絡が途絶えています!」
「最後の確認場所は」
「西商業区です!」
「捜索隊を──「まだあります!」」
職員が声を重ねる。
「同時刻、クローバー商会からも失踪届が!アイリーン・クローバー様、エレン・クローバー様が同じく行方不明だと!」
「……姉ちゃんたちが?」
室内の空気が凍りついた。ノエルは反射的に彼へ視線を向ける。いつも笑顔を絶やさず、どんな時でも明るいフィンから、表情が完全に消えていた。
「最後に目撃された時点では、三名とも同じ区域にいた可能性があります」
レナ、アイリーン、エレン。いずれも、この国では名の知られた家の娘だ。そんな三人が同じ時期に姿を消したことを、偶然で片づけていいはずがない。
胸の奥で、嫌な予感がざわめいていた。
枯れていくオアシス。古代遺跡。消えた開門石板。そして、彼女たちの行方。
さらに、フィデルから聞かされていた三隊もの交易隊の消息不明。一見すれば、どれも別々に起きた出来事に思える。けれど実際には、すべてが一本の線でつながっている、そんな気がしてならなかった。
「……ライブ兄さん…三人が最後にいた場所、教えて」
「私も行く」
「政府の仕事は?」
「妹が消えた。そして国民が二人消えている。私が動かない理由にはならん」
ライブは椅子から立ち上がった。獅子の尾が大きく揺れる。その姿を見て、俺は先ほどの言葉を思い出した。
───支配するための家ではない
───国民へ責任を負うための家
(口だけじゃなくて、この人は、本当にその言葉どおりに生きているんだ…)
「俺たちも手伝います」
気づけば、そう言っていた。
「ノエル君」
「俺たち、今この国で起きてることを調べに来たんですよね」
コンラッドを見る。
「だったら、関係ないとは思えません」
「同感ですわ」
アイリスが立ち上がる。
「三名同時の失踪。しかも、大商会の娘二人と旧王家の令嬢。単なる偶発事件として扱うべきではありません」
アルベルトが続く。
「僕も行きます!誘拐であるなら、時間が経つほど救出は難しくなります」
「僕も」
シャスールが静かに弓を確認した。
「人探しなら得意」
「みんな……ありがとう」
「当然だろ」
ノエルは気づいていた。ライブが、まだ何かを言えてないことに。
さっき、開門石板について「石板は」と口にした直後、三人の失踪を知らせる急報が入った。
もし、消えた石板と三人の失踪が繋がっているとしたら───
「……先生」
「ああ」
コンラッドも同じことを考えていたらしく、穏やかな笑みを消すと、静かに鏡晶石を手に取った。
「どうやら僕たちは、古代遺跡より先に調べるべき場所ができたようだね」
ノエルは強く頷いた。
銀色の英雄が眠る古代遺跡。そこへ至る鍵。そして、突然姿を消した三人。
この時のノエルたちは、まだ知らなかった。
すべてが一本の道に繋がっていると思っていた。その先が、ずっと前から、もっと暗く醜い場所へ続いていたことを……




