# 第二話 ## 「銀河の落ちこぼれ」
# 第二話
## 「銀河の落ちこぼれ」
医務室の朝は静かだった。
機械音だけが、
規則正しく響いている。
白い天井を見上げながら、
ユウはゆっくり目を覚ました。
「……朝か」
起き上がろうとした瞬間。
「動くな」
冷たい声。
振り向くと、
腕を組んだルナがいた。
「……なんでいるの」
「監視」
「怖」
ルナはジト目になる。
「怖いのはあんたよ」
昨夜の戦闘。
ユウの異常な力。
あの光。
普通じゃない。
軍上層部も騒ぎになっていた。
ルナはベッドの横にある端末を放り投げる。
そこには、
昨日の戦闘映像。
銀河みたいな光を放つ《セラフ》。
ありえない速度。
そして一撃でヴォイドを撃破する瞬間。
「説明して」
「……できない」
「じゃあ何者なの」
ユウは少し黙る。
その横顔が、
妙に寂しそうだった。
「自分でも、
よくわからないんだ」
その言葉だけは、
嘘じゃなかった。
---
同時刻。
アステリア連邦軍本部。
巨大モニターに、
ユウの戦闘データが映されていた。
幹部たちの空気は重い。
「出力数値が異常です」
「人間の神経接続限界を超えている」
「危険因子では?」
そして中央の男が口を開く。
白髪の司令官。
レオン・ヴァルク。
「監視を続けろ」
低い声。
「場合によっては……
処分する」
空気が凍った。
---
午後。
士官学校の食堂。
ユウはカレーを食べていた。
無表情でもぐもぐ食べる。
その向かいに、
ルナが座っている。
周囲はヒソヒソ騒いでいた。
「あれが昨日の……」
「ヴォイド倒したってマジ?」
「怖くね?」
ユウは慣れていた。
昔から、
どこへ行っても浮いていた。
馴染めない。
うまく笑えない。
自分が、
どこか人と違う気がしていた。
すると突然。
ルナがスプーンを突きつける。
「今日からあんた、
私と組むから」
「……は?」
「ペア訓練」
「なんで」
「監視って言ったでしょ」
絶対それだけじゃない。
でもルナ自身も、
理由を説明できなかった。
ただ気になる。
放っておけない。
ユウを見ると、
胸がざわつく。
それだけだった。
---
その夜。
訓練宙域。
二機の《セラフ》が並ぶ。
ルナ機――
《セラフ・ヴァルキリア》。
ユウ機――
《セラフ・ノヴァ》。
「ついてこれる?」
ルナが挑発的に笑う。
次の瞬間、
彼女の機体が加速。
彗星みたいに宇宙を駆ける。
普通なら見失う速度。
だが。
「速っ……!?」
ユウは簡単についてくる。
しかも、
少し楽しそうだった。
ルナは驚く。
「なによそれ……
昨日と別人じゃない」
ユウは小さく笑う。
「宇宙、飛ぶの好きだから」
その笑顔を見て、
ルナの心臓が跳ねた。
一瞬だけ。
本当に一瞬だけ。
宇宙より綺麗だと思った。
---
だがその時。
警報。
赤い光が宇宙を染める。
> 『未確認ヴォイド反応。
> 数――12』
「っ!?」
空間が裂けた。
黒い穴から、
巨大ヴォイド群が現れる。
昨日より多い。
しかも速い。
「なんで訓練宙域に!?」
ルナが叫ぶ。
軍の防衛ラインを突破している。
異常事態だった。
ヴォイドの中心。
そこに、
人型の黒い影が立っていた。
人間のような姿。
白い仮面。
そして、
こちらを見ている。
ユウの背筋が凍る。
頭の奥で、
声が響いた。
> 「見つけた」
その瞬間。
ユウの胸が激しく痛む。
星空模様が、
身体に浮かび上がる。
ルナが叫ぶ。
「ユウ!?」
ユウは震えながら、
その影を見つめていた。
まるで――
昔から知っている存在を見るみたいに。
---
## 次回
第三話
### 「恋する戦闘機」
ルナとユウ、
初めての共闘。
だがヴォイドの狙いは、
ユウそのものだった――。




