# 第三話 ## 「恋する戦闘機」
# 第三話
## 「恋する戦闘機」
宇宙は静かだった。
静かすぎるほどに。
だがその静寂の中心で、
ヴォイドだけが不気味に脈動している。
黒い霧。
裂ける空間。
そして、
人型の影。
白い仮面のヴォイドは、
じっとユウを見ていた。
> 「見つけた」
その声が頭の中に響いた瞬間、
ユウの身体に星空模様が広がる。
「っ……!」
激痛。
息が詰まる。
ルナが通信越しに叫ぶ。
「ユウ! しっかりしなさい!」
ヴォイド群が動いた。
十二体同時突撃。
「来るぞ!」
ルナの《ヴァルキリア》が加速する。
青白い光を引きながら、
敵を迎撃。
一機、
二機、
三機。
正確無比。
さすがエース。
だが数が多すぎる。
「ちっ……!」
背後。
ヴォイドが迫る。
その瞬間。
銀色の閃光。
ユウの《ノヴァ》が割り込んだ。
黒い敵を一瞬で切り裂く。
「……大丈夫」
「遅い!」
ルナは怒鳴る。
だが少し安心していた。
ユウがいる。
それだけで、
怖くないと思ってしまう。
---
戦闘は激化する。
レーザー。
爆発。
破片。
星々の間を、
二機の《セラフ》が駆け抜ける。
すると突然、
ルナの機体警報が鳴る。
> 『エネルギー低下』
「しまっ――」
ヴォイドが迫る。
回避不能。
だが次の瞬間。
ユウの機体が、
彼女の前へ出た。
巨大な衝撃。
《ノヴァ》が直撃を受ける。
「ユウ!?」
煙。
火花。
それでもユウは操縦桿を握っていた。
「なんで庇ったの!?」
少し沈黙。
そしてユウは、
当然みたいに言った。
> 「ルナが泣くの、
> 嫌だから」
ルナの心臓が止まりそうになる。
「……は?」
「え?」
「え、じゃない!!」
顔が熱い。
戦闘中なのに。
なのに、
頭が真っ白になる。
その隙を、
ユウは見逃さなかった。
「危ない」
「へ?」
ユウが彼女の機体を押す。
直後、
後方で爆発。
「ちょっ……!」
「戦闘中にぼーっとしてる」
「誰のせいよ!!」
ユウは少しだけ笑った。
それはたぶん、
初めて見せた自然な笑顔だった。
ルナは思う。
ああ、
ずるい。
こんなの。
好きになるに決まってる。
---
しかしその時。
空間が震えた。
白い仮面のヴォイドが、
ゆっくり手を上げる。
すると周囲のヴォイドが融合。
巨大な怪物へ変貌する。
「なによ……
あれ……」
全長数百メートル。
惑星みたいな黒い巨体。
圧倒的な威圧感。
通信にノイズが走る。
教官たちの悲鳴。
> 『撤退しろ!
> 勝てる相手じゃない!』
だが。
ユウだけは、
その怪物を見つめていた。
なぜか知っている。
あれを。
ずっと昔から。
頭の奥で、
また声が響く。
> 「帰っておいで」
胸が痛む。
寂しい。
泣きたくなるほど。
するとユウの《ノヴァ》が、
再び光り始める。
銀河みたいな翼。
星屑の粒子。
ルナが息を呑む。
「また……
あの力……!」
ユウは静かに前を見る。
その横顔は、
どこか人間じゃなかった。
でも。
とても綺麗だった。
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ユウが前へ出る。
「待ちなさい!」
ルナが叫ぶ。
「一人で行く気!?」
「……大丈夫」
「大丈夫じゃないでしょ!」
ルナは震える声で叫んだ。
> 「死んだら……
> 許さないから」
ユウは驚いた顔をする。
その言葉が、
胸の奥に刺さった。
温かかった。
知らない感覚。
孤独じゃない、
という感覚。
ユウは少し笑って、
前を向く。
> 「……うん。
> ちゃんと帰る」
その瞬間。
《セラフ・ノヴァ》が、
流星みたいに加速した。
銀河を切り裂きながら――。




