# 第一話 ## 「宇宙で、一番遠い君」
# 第一話
## 「宇宙で、一番遠い君」
西暦2489年。
巨大宇宙要塞は、
今日も無数の宇宙船で溢れていた。
士官学校の朝は早い。
警報。
エンジン音。
整備士の怒鳴り声。
その喧騒の中を、
ひとりの少年が眠そうな顔で歩いていた。
天音ユウ。
成績最下位寸前。
協調性なし。
だが、
一部の教官だけは知っていた。
――こいつは、異常だ。
「おいユウ! 今日の模擬戦サボったら減点だからな!」
「……行きますよ」
気の抜けた返事。
だがその目だけは、
どこか宇宙の奥を見ているようだった。
---
格納庫。
そこには最新鋭戦闘機、
《セラフ》が並んでいる。
白銀の機体。
発光する翼。
パイロットたちの憧れ。
その中でも一際目立つ機体の前で、
少女が腕を組んでいた。
長い黒髪。
鋭い瞳。
星崎ルナ。
学校始まって以来の天才パイロット。
「遅い」
「……ごめん」
「ほんとやる気ないわね、あんた」
ユウは軽く欠伸をした。
ルナはイラッとする。
だが不思議だった。
初対面なのに、
どこか懐かしい。
そんな感覚がある。
---
模擬戦開始。
宇宙空間へ飛び立つ《セラフ》。
青い地球が遠くに見える。
ルナは圧倒的だった。
高速旋回。
正確な射撃。
次々に相手機を撃墜していく。
「さすがルナ様〜!」
通信で歓声が飛ぶ。
一方ユウは――
ふらふら。
やる気ゼロ。
「お前ほんとにパイロットか!?」
教官が頭を抱える。
しかしその瞬間だった。
警報。
赤いランプが点滅する。
> 『緊急警報。
> 未確認生命体接近』
空気が変わった。
モニターに映る黒い穴。
そこから現れたのは、
人類の敵――
《虚空種ヴォイド》。
「うそ……
演習空域になんで!?」
混乱する生徒たち。
ヴォイドは黒い霧のような身体で、
戦闘機を次々飲み込んでいく。
悲鳴。
爆発。
通信が途切れる音。
ルナは歯を食いしばった。
「全機散開!
落ち着いて――」
その瞬間。
巨大ヴォイドが、
彼女の機体へ突進する。
回避不能。
警告音が鳴り響く。
> 『機体損傷率48%』
「っ……!」
死。
その文字が脳裏をよぎる。
思わず、
小さく呟いた。
> 「……死にたくない」
その声を、
ユウが聞いた。
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次の瞬間。
彼の《セラフ》が光った。
銀河みたいな粒子が、
機体の翼から溢れ出す。
教官たちが凍りつく。
「なんだあの出力……!」
ユウの目が、
淡く蒼く輝いていた。
> 「……ルナを傷つけるな」
低い声。
瞬間。
機体が消えた。
否。
速すぎて見えない。
一閃。
巨大ヴォイドが真っ二つになる。
宇宙に黒い破片が散った。
誰も動けなかった。
ありえない。
人類の兵器では、
ヴォイドは簡単に倒せないはずなのに。
ルナも呆然としていた。
「……あんた、何者なの」
だがユウは答えない。
そのまま機体が停止する。
通信が切れる。
「ユウ!?」
ルナは慌てて彼の機体へ向かった。
コックピット。
意識を失ったユウ。
そして彼の首筋には――
星空みたいな、
青い模様が浮かんでいた。
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その夜。
医務室。
眠るユウは夢を見る。
真っ暗な宇宙。
果てのない孤独。
そこで誰かが泣いていた。
少女のような声。
優しく、
寂しそうな声。
> 「やっと……
> 会えた」
ユウは手を伸ばす。
だが届かない。
遠い。
宇宙より遠い。
その瞬間。
目が覚めた。
隣には、
椅子に座ったまま眠るルナがいた。
彼女は小さく寝息を立てている。
ユウは少しだけ笑った。
そして小さく呟く。
> 「……綺麗だ」
窓の外では、
無数の星が静かに輝いていた。
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## 次回予告
第二話
### 「銀河の落ちこぼれ」
ルナはユウの秘密を探り始める。
一方、
軍上層部はユウを危険視していた。
そして宇宙の果てから、
新たなヴォイドが迫る――。




