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七十五話

「アレルギーと大学の飼育規約を確認しろ!」という駆の当然すぎる叫びが夜空に轟いてから一夜。

翌日の17時。天宮ミルクのチャンネルでは、画面一面が圧倒的な癒やしのオーラに包まれた生配信がスタートしていた。

タイトル:『【モフモフ降臨】部室が猫カフェに!? 10匹の猫ちゃんと楽しむまったり癒やし雑談!』

足つぼデスレースの過酷さから一転、まさかのモフモフ天国。チャンネル登録者数600万人超のリスナーたちは「寒暖差で情緒がおかしくなる」「画面が可愛さで埋め尽くされている」「ヒューガのデレ顔が見れるぞ」と大歓喜し、開始わずか数分で同接数は125万人を軽々と突破していた。

【猫カフェ回きたああああ!】

【部室にキャットタワーと猫用ベッドが完備されてて草】

【※大学公式の保護猫ボランティア協力です(概要欄記載)】

【ヒューガの猫耳カチューシャ(強制装着)たすかる】

――17時ジャスト。配信スタート。

画面に映し出されたのは、キャットタワーや猫用おもちゃが綺麗に配置された部室。猫耳カチューシャを頭につけさせられたヒューガと、猫の手グローブを嵌めた天宮ミルク(3D)が床に座り込んでおり、その周囲を10匹の可愛い保護猫たちが自由気ままに歩き回っている。

「……みなさんこんにちは。個人勢VTuberのヒューガです。……画面をご覧ください。大学の保護猫ボランティア団体と正式に連携して、本日限定で部室が『保護猫カフェ』になりました。規約とアレルギー対策は完璧です。俺の頭に乗っかっている猫耳カチューシャについては触れないでください。助けてください」

「こんミルク〜! 猫ちゃんとキャベツの可愛さを世界に届ける猫耳ミルクです〜にゃん!」

「語尾に『にゃん』をつけるな恥ずかしい!! あと俺の頭の上に三毛猫の『たま』が乗っかって動けないんだよ!! 動いたらたまちゃんが起きちゃうだろ!!」

【wwwwwwwwwwww】

【開幕0秒の三毛猫たまちゃんツッコミ】

【猫耳ヒューガてぇてぇww】

【たまちゃんに頭を占領されるヒューガ草】

そこへ、画面越しのモフモフ空間に耐えかねた仲間たちが、Discord経由で次々と参戦してくる。

黒羽レン『……ヒューガさん、僕の計算によれば、猫の首筋を1秒間に3回のペースで優しく撫でると、猫のゴロゴロ音が430ヘルツに達し、ヒューガさんのストレス値が99.9%軽減されます』

「めちゃくちゃ具体的な撫で方の指示を出すな!! でも実際に喉鳴らしててめちゃくちゃ可愛いから文句言えねぇわ!!」

鳳凰院カグラ『クックック……我が暗黒の魔導ニャンコよ! 我が秘技『猫じゃらし無限乱舞』を受け止めるがいい!(※画面越しに画面を揺らす音)』

「画面越しに猫じゃらし振っても部室の猫には1ミリも届かねぇんだよ魔王!! 画面酔いするからカメラ揺らすな!!」

星空ルチア『ヒューガ先輩! AIの猫カフェ満足度データにより、猫ちゃんたちが一瞬で集まってくる奇跡の方法が判明しました!「乾燥キャベツにマタタビ粉末をふりかけた『特製キャベツマタタビ』を構える」です!』

「マタタビの力でキャベツをドーピングするな!! 猫がキャベツの虜になっちゃうだろ!!」

【ゴロゴロ音430ヘルツww】

【画面越しに猫じゃらし振る魔王草ww】

【キャベツマタタビ爆破予告】

【同接破竹の145万人突破!】

仲間たちのカオスな実況(?)を余所に、天宮ミルクが持ってきた「特製キャベツおもちゃ(キャベツ型の布製ぬいぐるみ)」を投げると、10匹の猫ちゃんたちが一斉に大群で飛びついてくる!

「わぁ〜! みんなキャベツおもちゃが大好きみたいです〜!」

「うわっ、待て! 俺の膝の上に茶トラと黒猫が同時に乗ってきた……! あかん、モフモフすぎる……動けん……!」

猫たちのモフモフ攻撃に完全にノックアウトされ、目尻を下げてデレデレになりながら猫を撫で回す駆の姿に、同接165万人のリスナーは大爆笑&大歓喜。「ヒューガのデレ顔たすかる」「猫になりたい」「最高の癒やし回」というスパチャの嵐が降り注ぎ、猫カフェ配信は最高に平和な形で幕を閉じたのだった。

――配信終了後。ボランティアの人たちに猫ちゃんたちを送り届け、静かになった夕暮れの部室。

猫耳カチューシャを外し、パイプ椅子に腰掛けて温かい缶コーヒーを飲む駆。

「……はぁ……。足つぼの激痛の後にこれは、ギャップで脳みそが溶けそうだったぞ……」

「ふふっ、日向くん、お疲れ様です!」

隣で猫の手グローブを外し、冷えた缶のいちごミルクを飲んでいたみずきが嬉しそうに微笑みかける。

「日向くんが猫ちゃんたちをすっごく愛おしそうに撫でてるお顔、とっても優しくて大好きです!」

駆は一口コーヒーを流し込み、猫の毛が少しついたブラウスの袖を見つめながら、照れくさそうに顔を横へ背けた。

「……たく。猫が可愛かっただけだっつの。……まあ、たまにはこういう穏やかな企画も……悪くはねぇよ」

みずきは一瞬驚いたように目を丸くし、それから夕陽に負けないくらい温かい笑顔をパッと咲かせた。

「はいっ! 日向くんが優しい笑顔になってくれて、ミルクも猫ちゃんたちも大満足です!」

「へいへい。……で、モフモフ猫カフェも無事に終わったし、明日は何やる気だ?」

みずきは悪戯っぽく目を輝かせると、胸を張って高らかに宣言した。

「明日は『癒ややされたあとは究極の頭脳戦! 部室をボードゲーム王国にして24時間カタン&人狼耐久バトル配信』です!」

駆は夕暮れのキャンパスに向かって、本日一番の快晴のような爆音ツッコミを叩き込んだ。

「急に徹夜の泥沼心理戦に持ち込むんじゃない!!!! 友情が崩壊して配信が終わるわ!!!」

「きゃはは! やっぱり日向くんのツッコミ、世界一〜!」

夕闇に溶けていく二人の弾けるような笑い声。

モフモフの癒やしを胸に、次なる徹夜の心理戦(?)へ。

世界一のツッコミと世界一のド天然の物語は、どこまでも賑やかに未来へ続いていく。

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