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七十四話

「痛みに耐えかねて声が出なくなるわ!」という駆の魂の叫びから一夜。

翌日の18時。天宮ミルクのチャンネルでは、前回の優雅なお茶会が幻だったかのような、阿鼻叫喚のバラエティ生配信がスタートしていた。

タイトル:『【激痛】胃腸復活記念! 部室を埋め尽くす「激痛足つぼマット」障害物レースで悲鳴の嵐!』

癒やしのお茶会からの過酷な体当たりバラエティ。チャンネル登録者数600万人超のリスナーたちは「寒暖差で風邪ひくわww」「ヒューガの叫び声助かる」「足つぼの突起がエグすぎる」と大歓喜し、開始わずか数分で同接数は120万人を軽々と突破していた。

【足つぼデスレースきたあああ!】

【お茶会からの落差がV界一ww】

【マットの突起が物理的に殺しにきてる】

【ヒューガの足裏の命日】

――18時ジャスト。配信スタート。

画面に映し出されたのは、部室の入り口から奥のデスクまで隙間なく敷き詰められた、黒と赤の禍々しい「超激痛足つぼマット」。体操服姿のヒューガと、同じくジャージ姿でスターターピストル(※おもちゃ)を構えた天宮ミルク(3D)がスタートラインに立っている。

「……みなさんこんばんは。個人勢VTuberのヒューガです。……画面をご覧ください。前回の紅茶で癒やされた足裏と体力を全て破壊するための地獄のロードです。突起の高さが5センチくらいあります。靴下を脱がされました。助けてください」

「こんミルク〜! 足裏のツボを刺激して『超健康V』を目指す天宮ミルクです〜!」

「健康を目指す突起のレベルを超えてんだよ!! 凶器だろこれ!! なんで俺が素足でこの突起の山を爆走して障害物をクリアしなきゃいけないんだ!!」

【wwwwwwwwwwww】

【開幕0秒の足つぼ凶器ツッコミ】

【突起5センチは埋木なんだよww】

【裸足で爆走させられるヒューガ】

そこへ、レースの過酷さを実況(&妨害)すべく、Discord経由で仲間たちが次々と参戦してくる。

黒羽レン『……ヒューガさん、僕の計算によれば、その足つぼマットの上を体重60キロの人間が踏み込んだ場合、足裏にかかる圧力は1平方センチメートルあたり約12キログラムです』

「物理的な威力を数値化して脅すな!! 一歩踏み出すだけで激痛で膝から崩れ落ちるわ!!」

鳳凰院カグラ『クックック……試練を受けよ! 我が暗黒の罠『キャベツお玉リレー』を足つぼの上で完遂してみせよ!』

「足つぼの上でお玉にピンポン球載せて走らせるな!! バランス崩して顔面からマットに落としたら即死だわ!!」

星空ルチア『ヒューガ先輩! AIの痛覚遮断データにより、激痛を和らげる唯一の方法が判明しました!「激痛が走った瞬間に『キャベツ!!』と絶叫して脳をバグらせる」です!』

「悲鳴の代わりにキャベツって叫ぶだけだろ!! 痛みは1ミリも和らいでねぇわ!!」

【足裏への圧力12kgww】

【絶叫『キャベツ!!』草ww】

【同接破竹の140万人突破!】

「位置について……よーい、ドン!」のみずきの合図とともに、意を決して足つぼマットを踏み出す駆。

「あ゛ッ―――――!!!! 痛ぇぇぇぇ!! 痛い痛い痛い!! 脳揺れるわこんなん!!」

「ヒューガさん頑張ってください! ほら、『キャベツ!!』ですよ!」

「痛ぇよキャベツ!!!! なんの効果もねぇじゃねえか!!」

激痛にのたうち回りながらも、お玉の上のピンポン球を死守し、執念のキャッチ&ランでゴールへ飛び込む駆。

しかし、ゴールの瞬間、みずきが「お疲れ様です〜!」と手渡してきたのは……冷えた「キャベツ足冷やしシート(※湿布)」。

「冷たくてめちゃくちゃ気持ちいい……って、最後までキャベツかい!!」

同接160万人のリスナーから「腹抱えて笑った」「悲鳴のバリエーションが豊富すぎる」「V界最高のリアクション」と爆笑のスパチャが降り注ぎ、激痛レースは幕を閉じたのだった。

――配信終了後。湿布を足裏に貼り、ソファでぐったりと横になる駆。

「……ハぁ……ハぁ……。足裏のツボが全部破壊された気がするぞ……」

「ふふっ、日向くん、お疲れ様です!」

隣に座ったみずきが、冷えた缶のいちごミルクを駆の手に持たせ、申し訳なさそうに、でも嬉しそうに微笑む。

「でも、日向くんのリアクション、世界一格好良くて面白かったです!」

駆は缶のプルタブを開け、甘い液体を一口飲み込んでから照れくさそうに顔を背けた。

「……たく。お前が無茶なコース作るからだろ。……まあ、体は確かに軽くなった気がするけどな」

みずきは嬉しそうに目を細めると、パッと太陽のような笑顔を弾けさせた。

「はいっ! 日向くんの健康も笑いも、ミルクが全部プロデュースします!」

「へいへい。……で、足つぼ地獄も終わったし、明日は何やる気だ?」

みずきは悪戯っぽく目を輝かせると、胸を張って高らかに宣言した。

「明日は『痛みのあとは究極の癒やし! 部室を猫カフェ化して10匹のモフモフ猫ちゃんと戯れるまったり配信』です!」

駆は夜のキャンパスに向かって、本日一番の快晴のような爆音ツッコミを叩き込んだ。

「部室に勝手に猫を10匹持ち込むな!!!! アレルギーと大学の飼育規約を確認しろ!!!」

「きゃはは! やっぱり日向くんのツッコミ、世界一〜!」

夜空に溶けていく二人の弾けるような笑い声。

激痛レースを乗り越え、次なるモフモフ(?)の境地へ。

世界一のツッコミと世界一のド天然の物語は、どこまでも賑やかに未来へ続いていく。

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