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六十四話

「胃袋が爆破するわ!」という駆の悲鳴もむなしく、翌日の14時。

天宮ミルクのチャンネルでは、見渡す限りの広大な青空と緑が広がる特設会場から、大食い対決生配信がスタートしていた。

タイトル:『【大食い】大自然へ原点回帰! 100人同時キャベツタルト大食いバトル&完食で世界記録達成!?』

第63話のSF密林化から一転、爽快感(?)あふれる屋外バトル企画。チャンネル登録者数600万人超のリスナーたちは「V界最大規模の大食い」「胃袋の耐久戦きた」と大歓喜し、開始わずか数分で同接数は115万人を突破していた。

【100人同時大食いは草ww】

【青空の下でやる規模じゃない】

【ヒューガの喉と胃袋が同時崩壊する回】

【参加者の胃袋の無事を祈る】

――14時ジャスト。配信スタート。

画面に映し出されたのは、ずらりと並んだ長机と、そこに集まった100人の参加者(※バーチャルモデル&公募リスナー&ゲスト勢)。

審判のハチマキをしめたヒューガと、メガホンを構えた天宮ミルク(3D)が特設ステージに立っている。

「……みなさんこんにちは。個人勢VTuberのヒューガです。……現在、見渡す限りの大草原にいます。目の前に長机がズラリと並び、100人のチャレンジャーが構えています。テーブルの上には、天宮さんが徹夜で量産した『特製ミニキャベツタルト』が山積みです。地獄の光景です。助けてください」

「こんミルク〜! 100人でキャベツタルトを食い尽くして『世界一番お腹がいっぱいなユニット』を目指す天宮ミルクです〜!」

「どんな世界記録を目指してんだよ!! 大食い大会の主催者気取りでメガホン構えてるんじゃねえよ!! なんで俺が実況兼ツッコミで100人分の胃袋を心配しなきゃいけないんだ!!」

【wwwwwwwwwwww】

【開幕0秒の大食い主催ツッコミ】

【100人分の胃袋心配ニキww】

【テーブルのタルトの山がエグい】

そこへ、大会の特別解説員(&勝手なエントリー選手)として仲間たちが通信で乱入してくる。

黒羽レン『……ヒューガさん、僕の計算によれば、100人が平均5個ずつ完食した場合、消費されるキャベツの総重量は250キログラムに達します』

「トン単位の消費量を個人Vの配信で叩き出すな!! どんなフードロス対策だよ!!」

鳳凰院カグラ『クックック……この我が暗黒の胃袋の深淵を見せてやろう! 50個など一呑みだ!』

「さっきから勢いだけで一口も入ってねえだろ魔王!! 威勢だけは世界一だな!!」

星空ルチア『ヒューガ先輩! AIの消化最適化データにより、大食いを爆速で完走する方法が判明しました!「タルトを噛まずにそのまま飲み込んで、ツッコミの衝撃波で胃の中で砕く」です!』

「俺のツッコミを胃薬代わりに使うな!! 喉に詰まらせて救急車呼ばれるわ!!」

【ツッコミ衝撃波消化法草ww】

【魔王ハッタリで草】

【同接破竹の140万人突破!】

「位置について……スタート〜!」のみずきの掛け声とともに、100人の大食いバトルが開幕。

サクサクとした生地と香ばしいカスタード、そして絶妙なキャベツの甘みが効いたタルトは、「意外と軽くてバクバクいける!」と大好評。

「ヒューガさん! 参加者の皆さんが『美味しくて止まらない!』ってどんどん完食していきます〜!」

「美味いのは良いことだけど完食ペースが早すぎるんだよ!! おかわり焼き増し隊のオーブンが爆発するだろ!!」

結局、100人のチャレンジャー全員が笑顔で目標個数を完食し、「世界一平和で美味しい大食い大会」として記録(?)を樹立。

同接155万人のリスナーから「最高に楽しかった」「見てるだけでお腹空く神回」とスパチャの雨が降り注ぎ、大盛り上がりの中で大食い対決は幕を閉じたのだった。

――配信終了後。大草原の特設会場の後片付けが終わり、静かになった夕暮れ。

草の上に大の字で寝転がり、抜けるような秋空を見上げる駆。

「……ハぁ……ハぁ……。100人の大食いを実況しながらツッコむの、声帯が千切れるかと思ったぞ……」

「ふふっ、日向くん、お疲れ様です!」

隣にちょこんと腰掛けたみずきが、冷たい缶のいちごミルクを駆の頬にポンと当てる。

「でも、みんなすっごく笑顔で、お腹いっぱいになってくれましたね!」

「……お前が変な味にしないで、ちゃんと美味しいタルト焼いたおかげだけどな」

駆は起き上がり、いちごミルクを受け取って一口飲み、夕陽に染まる大草原を見渡してふっと柔らかく笑った。

「……まあ、たまには大勢でバカ騒ぎするのも、悪くはないか」

みずきは嬉しそうに目を細めると、太陽のような飛び切りの笑顔を弾けさせた。

「はいっ! 1人でも、2人でも、100人でも! 日向くんと作る笑顔は全部が世界一の宝物です!」

「へいへい。……で、大食い大会も終わったし、明日は何やる気だ?」

みずきは悪戯っぽく目を輝かせると、胸を張って高らかに宣言した。

「明日は『大自然の余韻! 部室で静かにキャベツの芽生えを見守る超・放置ASMR配信』です!」

駆は夕暮れの大草原に向かって、本日一番の爆音ツッコミを叩き込んだ。

「動のあとの静が極端すぎるわ!!!! 配信画面で画動きがゼロになるだろ!!!」

「きゃはは! やっぱり日向くんのツッコミ、世界一〜!」

橙色の夕空に溶けていく、二人の弾けるような笑い声と快晴のような叫び。

大食いバトルを越えて、再びまったりとした日常へ。

世界一のツッコミと世界一のド天然の物語は、どこまでも賑やかに、最高の未来へ続いていく。

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