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六十二話

「大学の敷地を陥没させる気か!」という駆の切実なツッコミはどこへやら。

翌日の19時。天宮ミルクのチャンネルでは、なぜか暗闇の中でヘルメットのライトがぼんやりと光る謎の生配信がスタートしていた。

タイトル:『【埋蔵金】部室の床下を掘ってみた! 伝説の「キャベツ王国」の財宝を発掘して一獲千金!?』

ご褒美肉パーティーで精気を養った直後の大暴走。チャンネル登録者数600万人超のリスナーたちは「展開の飛躍が凄まじい」「部室の床下はダンジョンじゃないんだよ」と大歓喜し、開始数分で同接数は105万人を突破していた。

【本当に掘ってて草ww】

【部室の床下が暗闇ダンジョン化】

【大学の営繕課が飛んでくるぞ】

【ヘルメット姿の二人てぇてぇ】

――19時ジャスト。配信スタート。

画面に映し出されたのは、部室の畳を剥がした床下空間。スコップを構えた作業着姿のヒューガと、探検家風の帽子をかぶった天宮ミルク(3D)が立っている。

「……みなさんこんばんは。個人勢VTuberのヒューガです。……現在、部室の床下数十センチの暗闇にいます。土の匂いがすごいです。大学の許可? 取ってるわけねぇだろ!! 助けてください」

「こんミルク〜! 地下1000メートルまで掘り進めて『キャベツ王国』を建国しようとしている天宮ミルクです〜!」

「勝手に穴掘るな!! 建築基準法以前に大学の敷地破壊行為なんだよ!! 床下に隠しスペースがあったのも意味不明だし、なんでスコップ片手にノリノリなんだよお前は!!」

【wwwwwwwwwwww】

【開幕0秒の敷地破壊ツッコミ】

【床下に隠しスペースがある大学】

【地下1000mは地球のマグマ層に行くわww】

そこへ、部室の地質構造(?)をリアルタイム監視していた仲間たちが通信で参戦してくる。

黒羽レン『……ヒューガさん、僕の計算によれば、その直下をさらに3メートル掘進した場合、大学のメイン配管を貫通して水浸しになる確率が99.4%です』

「掘るのを今すぐ止めろ!! 浸水事故を起こしたら俺たちの学業生活が完全に終わるだろ!!」

鳳凰院カグラ『クックック……ついに見つけたか。かつて我が暗黒魔界の尖兵が封印された『地下迷宮』を……!』

「ただの大学の旧校舎の基礎工事跡地だよ!! 勝手に魔界の歴史を捏造するな!!」

星空ルチア『ヒューガ先輩! AIの埋蔵金探索データにより、宝箱の発見確率が最大になる方法が判明しました!「叫び声を壁に向かって反響させ、超音波ソナーとして使う」です!』

「俺のツッコミを魚群探知機みたいに使うな!! 叫んだ振動で土砂崩れが起きたらどうすんだ!!」

【配管貫通フラグ草ww】

【ツッコミ超音波ソナーww】

【同接破竹の130万人突破!】

そんなカオスなやり取りの中、みずきが「あ! 何か硬いものに当たりました!」とスコップを止める。

土の中から掘り出されたのは……重厚な木箱と、一巻の古びた巻物だった。

「見てくださいヒューガさん! 埋蔵金です! 古文書も入ってます〜!」

「マジで何か埋まってたのかよ!? どんな大学だよここ!!」

大興奮で古文書を広げるみずき。しかし、そこに書かれていた古代文字のような文様を解読した瞬間、みずきの顔が輝いた。

「ヒューガさん! 解読できました!『この地にキャベツを植えし者、永久の繁栄を得ん』って書いてあります!」

「それただの昔の農家さんのメモ書きだろ!! 埋蔵金でも何でもねえわ!! 100年前のキャベツ栽培の記録を大発見みたいに語るな!!」

結局、木箱の中身は昔の農業用器具とキャベツの種(※レプリカ)であり、埋蔵金による一獲千金&キャベツ王国建設の野望は脆くも崩れ去った。

同接145万人のリスナーから「オチが完璧すぎる」「ただの農業遺産で草」と爆笑のスパチャが降り注ぎ、床下探検配信は幕を閉じたのだった。

――配信終了後。穴を埋め戻し、畳を敷き直した深夜の部室。

泥を拭き取り、パイプ椅子に倒れ込むように腰掛ける駆。

「……ハぁ……ハぁ……。土掘って埋め戻すの、肉パーティーで得たエネルギーが全部吹き飛んだぞ……」

「ふふっ、日向くん、お疲れ様です!」

隣で雑巾を持ったみずきが、冷えた缶のいちごミルクを駆に差し出しながら嬉しそうに微笑む。

「埋蔵金はなかったですけど、日向くんと宝探しができて、ミルクすっごく楽しかったです!」

駆は缶のプルタブを開け、一口流し込んでから、呆れたように、でも愛おしそうにみずきを見た。

「……たく。宝探しつったって、出てきたのは昔の農具だからな。お前といると、毎日が変なダンジョン探検みたいだわ」

みずきは一瞬目を丸くし、それからパッと飛び切りの笑顔を弾けさせた。

「はいっ! 日向くんとなら、部室の床下でも世界の一番端っこでも、全部が最高の冒険になります!」

「へいへい。……で、穴掘りも終わったし、明日は何やる気だ?」

みずきは悪戯っぽく目を輝かせると、高らかに宣言した。

「明日は『発掘された100年前の種(?)を使って、宇宙最速で育つ超高速キャベツ栽培配信』です!」

駆は夜のキャンパスに向かって、本日一番の爆音ツッコミを叩き込んだ。

「植物の成長速度をバグらせるな!!!! サイエンスフィクションを現実でやろうとするな!!!」

「きゃはは! やっぱり日向くんのツッコミ、世界一〜!」

夜のキャンパスに溶けていく二人の弾けるような笑い声。

床下探検を終え、次なる怪奇(?)現象へ。

世界一のツッコミと世界一のド天然の物語は、どこまでも賑やかに未来へ続いていく。

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