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六十一話

「最後はキャベツじゃなくて肉かい! 最高の締めくくりだな!」という駆のテンション高めなツッコミから一夜。

約束通り、翌日の18時から天宮ミルクのチャンネルで「ご褒美肉パーティー」をかけた生配信がスタートしていた。

タイトル:『【ご褒美】小麦粉まみれの部室をピカピカに! A5ランク和牛をかけた「大掃除&肉パーティー」配信!』

5000個のタルト焼き耐久を終えた二人の慰労会(?)を見届けようと、チャンネル登録者数600万人超のリスナーたちは開始数分で100万人を超える同接で殺到。チャット欄は「ついにキャベツ以外の肉が喰えるのか」「フラグにしか見えない」と大賑わいを見せていた。

【ついに肉きたあああ!】

【小麦粉の被害が凄まじすぎるww】

【ヒューガが嬉しそうで草】

【※ただし無事に肉が焼けるとは言っていない】

――18時ジャスト。配信スタート。

画面に映し出されたのは、真っ白な粉で雪国のようになった部室。掃除機を持ったヒューガと、ホットプレートと巨大な保冷バッグを抱えた天宮ミルク(3D)が立っている。

「……みなさんこんばんは。個人勢VTuberのヒューガです。……昨日5000個のタルトを焼いた代償として、部室の床と壁が小麦粉で雪山状態です。ですが! 掃除が終われば天宮さんが奮発して買った『A5ランク高級和牛』が待っています! 今日の俺は本気です!」

「こんミルク〜! 高級和牛の隠し味に『特製熟成キャベツソース』を仕込んできた天宮ミルクです〜!」

「肉にまでキャベツを侵食させるな!! 今日くらいは素直に焼肉のタレで食わせろ!! A5ランクの肉の旨味を奇食で消すんじゃない!!」

【wwwwwwwwwwww】

【開幕0秒の高級肉防衛ツッコミ】

【キャベツソース草ww】

【ヒューガの本気ww】

そこへ、高級肉の匂い(?)につられた仲間たちがDiscord経由で続々と乱入してくる。

黒羽レン『……ヒューガさん、僕の計算によれば、部室の小麦粉を高吸引力の掃除機で一気に吸い上げると、粉塵爆発を起こす危険性が12%あります』

「不穏な爆発フラグを立てるな!! 静かに雑巾がけして掃除するわ!!」

鳳凰院カグラ『クックック……肉だと……!? 我が暗黒の胃袋を満足させるため、その肉の7割を我に献上するのだ!』

「部室の掃除も手伝ってない奴がタダで肉食おうとするな!! ひと拭きしてから出直してこい!!」

星空ルチア『ヒューガ先輩! AIの効率化データにより、部室を一瞬で綺麗にする方法が判明しました!「部室全体を水で丸洗いしてプールにする」です!』

「部室をプールにするな!! 小麦粉が水で練られて部室全体が巨大なうどん生地になるだろ!!」

【粉塵爆発と巨大うどん生地ww】

【魔王ちゃっかり肉狙いで草】

【同接破竹の125万人突破!】

絶叫しながらも、肉への執念で猛スピードで部室をピカピカに磨き上げた駆。

ついにホットプレートがセットされ、ジュージューと音を立てて香ばしい匂いを漂わせるA5ランクの高級和牛。

「日向くん! お掃除お疲れ様でした! 最初の一口は、日向くんからどうぞ!」

「……おお……! 天宮、お前……本当に普通の肉を焼いてくれたんだな……!」

感動に震えながら肉を口に運ぶ駆。口の中で極上の脂と肉汁がとろけていく。

「……う、美味い……!! 涙が出るほど美味い……!! 奇食じゃない本物のメシがこんなに美味いなんて……!」

「えへへ、良かったです〜! じゃあ、次はミルク特製の『キャベツを巻いて食べるサムギョプサル風』でどうぞ!」

「……ん? あれ、サンチュの代わりにキャベツ巻いても普通に美味いな……?」

「ふふっ、キャベツと肉の相性は最高なんですよ〜!」

結局、最後はキャベツが添えられたものの、久しぶりの「ただただ美味いご褒美パーティー」に同接140万人のリスナーからも「ヒューガが報われてよかった」「平和な神回」と温かいスパチャが降り注ぎ、大満足のうちに配信は終了した。

――配信終了後。ピカピカになった夜の部室。

お腹いっぱいになり、パイプ椅子で満足そうに天井を見上げる駆。

「……ふぅ……。最高の肉だった……。たまにはこういう平和な配信も良いもんだな……」

「ふふっ、日向くん、満足してもらえて良かったです!」

隣でいちごミルクを飲んでいたみずきが、愛おしそうに駆の横顔を見つめて微笑む。

「日向くんが美味しそうに食べてくれる顔、ミルク大好きなんですよ」

駆は一瞬驚いて照れくさそうに顔を背け、缶コーヒーのプルタブを開けて一口飲んだ。

「……たく。お前が変なボケ挟まないで普通に料理作れば、いつだって美味いんだよ」

みずきは嬉しそうに目を細めると、パッと飛び切りの笑顔を弾けさせた。

「はいっ! じゃあ明日の第62話の配信は……!」

みずきは悪戯っぽく胸を張って高らかに宣言した。

「明日は『エネルギーチャージ完了! 部室の地下から埋蔵金を発掘してキャベツ王国を建設する配信』です!」

駆は夜のキャンパスに向かって、本日一番の快晴のような叫び声を叩き込んだ。

「部室の地下を勝手に掘るな!!!! 大学の敷地を陥没させる気か!!!」

「きゃはは! やっぱり日向くんのツッコミ、世界一〜!」

夜空に溶けていく二人の弾けるような笑い声。

高級肉でパワーを充填し、次なる野望(?)へ。

世界一のツッコミと世界一のド天然の物語は、どこまでも賑やかに未来へ続いていく。

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