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五十六話

「気温差で体調が崩壊するわ!」という駆の悲鳴もむなしく、大阪の熱気から一転。

翌日の13時。天宮ミルクのチャンネルでは、視界一面が銀世界に包まれた北海道・さっぽろ雪まつり会場(※特設エリア)からの生配信がスタートしていた。

タイトル:『【北海道編】日本縦断ツアーフィナーレ! マイナス10度の極寒雪山で巨大キャベツタルト雪像を作ってみた!』

群馬、愛知、大阪を経てたどり着いた極寒の大地。チャンネル登録者数600万人超のリスナーたちは「体調だけは気をつけて」「寒暖差バグ」と心配と期待の入り混じる中、開始数分で同接数は105万人を突破していた。

【本当に北海道まで行ってて草】

【大阪から北海道への移動速度が光速】

【ヒューガの息が真っ白ww】

【マイナス10度の中で叫んだら喉が凍りそう】

――13時ジャスト。配信スタート。

画面に映し出されたのは、激しい吹雪が舞う銀世界の3D特設ステージ。防寒着(ダウンジャケット&耳当て)を完璧に装備したヒューガと、ペンギン風の着ぐるみを着た天宮ミルク(3D)が立っている。

「……みなさんこんにちは。個人勢VTuberのヒューガです。……現在、北海道の極寒雪山にいます。気温マイナス10度。口を開けるたびに冷気が肺に直撃して息が白いを通り越して透明になりそうです。助けてください」

「こんミルク〜! 北の大地に舞い降りた『氷結キャベツペンギン』の天宮ミルクです〜!」

「ペンギンの着ぐるみで凍えてる場合か!! マイナス10度でふざけてたらマジで遭難するぞ!! さっさと雪像作って温かい部屋に入れ!!」

【wwwwwwwwwwww】

【開幕0秒の極寒ツッコミ】

【氷結キャベツペンギン草ww】

【ヒューガの防寒装備がガチすぎる】

そこへ、寒さに耐えかねた二人を(室内から)温かく見守る仲間たちが通信で繋がってくる。

黒羽レン『……ヒューガさん、僕の計算によれば、その気温下でヒューガさんが叫び続けると、呼気に含まれる水分が一瞬で凍結して氷の結晶(ダイヤモンドダスト)が発生します』

「叫び声で気象現象を起こそうとするな!! 喉が痛くて物理的に限界なんだよ!!」

鳳凰院カグラ『クックック……この絶対零度の世界こそ、我が暗黒の魔界「氷河期」の再現! 今こそ全土を氷漬けにしてやろう!』

「何もしなくても最初から氷漬けなんだよ!! 寒さで頭がバグってんのか魔王!!」

星空ルチア『ヒューガ先輩! AIの防寒解析データにより、極寒の雪山で体温を保つ唯一の方法が判明しました!「二人で密着してひたすらキャベツタルトの歌を踊り続ける」です!』

「吹雪の中で謎のダンス踊ったら体力が削れて真っ先に凍死するわ!! 室内に入れと言え!!」

【叫び声でダイヤモンドダストww】

【AIの助言がただの狂乱ww】

【同接破竹の130万人突破!】

そんな極寒のカオスの中、天宮ミルクは雪かき用のスコップを手に取り、巨大な雪の山へ突撃していく。

「見てくださいヒューガさん! ついに完成しました!『全長10メートルの超巨大キャベツタルト雪像』です!」

「いつの間に完成させてんだよ!! てか雪像のてっぺんに、本物のキャベツがそのまま100個くらい埋め込まれてんだけど!!」

「フフフ……これぞ北海道の自然とキャベツが融合した『永久凍土タルト』です! 溶けない限り永遠に保存できます!」

「春になったら雪が溶けてキャベツが雪解け水と一緒に流れていくんだよ!! 環境破壊すな!!」

そこへ、現地の観光客や札幌のリスナーたちが「ヒューガの叫び声を聞きに来た!」と大集結。

手作りのホットキャベツスープ(※地元の農家さん提供)が振る舞われ、極寒の雪山が一瞬にして温かい大宴会会場へ早変わりした。

同接140万人のリスナーが見守る中、弾丸日本縦断ツアーのラストは最高潮の盛り上がりで大フィナーレを迎えたのだった。

――配信終了後。ロケ地のロッジの暖炉の前。

暖炉の炎に手をかざし、あったかいスープを飲んでふぅっと息をつく駆。

「……ハぁ……ハぁ……。マイナス10度の中でツッコむの、人生で一番体力を消耗したぞ……」

「ふふっ、日向くん、お疲れ様です!」

隣の丸太椅子に座ったみずきが、ペンギンの着ぐるみを脱ぎ、冷えた缶のいちごミルクを両手で抱えながら嬉しそうに笑う。

「群馬、愛知、大阪、北海道……日本中のみんなに会えて、すっごく楽しかったですね!」

「……お前が弾丸ツアーなんて言い出さなきゃ、もっと平和に部室で過ごせたんだけどな……」

駆はスープを一口飲み、暖炉のパチパチという温かい音を聞きながら、ふっと柔らかく目を細めた。

「……まあ、でも。お前と日本中を駆け回ったこの数日間、退屈する暇だけは一切なかったわ」

みずきはパッと目を輝かせ、飛び切りの笑顔を弾けさせた。

「はいっ! 日本中どこへ行っても、日向くんのツッコミがあればそこが一番楽しい場所です!」

「へいへい。……で、日本縦断も終わったし、明日は大学の部室に戻って何やるんだ?」

みずきは悪戯っぽく微笑むと、胸を張って高らかに宣言した。

「明日は『無事に帰還! 大学の部室で、全国のお土産キャベツを食べ比べしながら雑談配信』です!」

駆は温かいロッジの中に、本日一番の快晴のような叫び声を響かせた。

「全部キャベツじゃねえか!!!! 北海道の蟹とか鮭とか買ってこいよ!!!」

「きゃはは! やっぱり日向くんのツッコミ、世界一〜!」

暖炉の温もりに溶けていく、二人の弾けるような笑い声。

日本縦断を終え、再び原点の部室へ。

世界一のツッコミと世界一のド天然の物語は、どこまでも賑やかに、最高の未来へ続いていく。

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