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五十五話

「観光協会と警察に捕まるわ!」という駆の至極全当な悲鳴を響かせながら、愛知から新幹線で一瞬にして移動してきた二人。

翌日の18時。天宮ミルクのチャンネルでは、ド派手なネオンが輝く大阪・道頓堀の戎橋(えびすばし)前からの特別生配信がスタートしていた。

タイトル:『【大阪編】食い倒れの街へ! 道頓堀の巨大カニ看板をキャベツタルトにジャック!?』

チャンネル登録者数600万人超の怪獣ユニットが道頓堀に降臨するという噂に、現地の戎橋周辺は大混雑。配信の同時接続数も開始わずか3分で100万人を突破していた。

【大阪編きたああああ!】

【道頓堀のあのカニ看板を狙うなww】

【本当に警察沙汰になるぞww】

【ヒューガの叫び声がグリコのポーズくらい有名になりそう】

――18時ジャスト。配信スタート。

画面に映し出されたのは、ド派手なネオンと川面に映る光が美しい道頓堀の3D特設ステージ。法被(はっぴ)姿のヒューガと、たこ焼きの被り物をした天宮ミルク(3D)が立っている。

「……みなさんこんばんは。個人勢VTuberのヒューガです。……現在、大阪・道頓堀のど真ん中にいます。隣の天宮さんが巨大な『キャベツタルト型の立体模型(全幅3メートル)』を台車で運んできました。通報される前に回収したいです」

「こんミルク〜! 道頓堀のシンボルを『キャベツタルト看板』に塗り替えようとしている天宮ミルクです〜!」

「看板を勝手に掛け替えるな!! 何十年の歴史がある名物だと思ってんだ!! 怒られるどころか大阪中の名物店主から一斉に追放されるぞ!!」

【wwwwwwwwwwww】

【開幕0秒の道頓堀ツッコミ】

【全幅3メートルのタルト模型草ww】

【たこ焼き被り物てぇてぇ】

そこへ、大阪のコテコテな熱気を感じ取った仲間たちが通信で参戦してくる。

黒羽レン『……ヒューガさん、僕の計算によれば、その3メートルのタルト模型をカニ看板の位置に設置した場合、風圧で道頓堀川へ落下の危険性が98%です』

「物理的な落下の心配をする前に犯罪であることを指摘しろ!! 警察を呼ばれるだろ!!」

鳳凰院カグラ『クックック……食い倒れの街か。ならば我が暗黒の胃袋で、道頓堀中のたこ焼きを飲み尽くしてくれよう!』

「ただの大食いタレントになろうとするな魔王!! 威厳をどこに捨ててきたんだ!!」

星空ルチア『ヒューガ先輩! AIの関西文化解析データにより、大阪で最も歓迎される挨拶が判明しました!「開口一番に『なんでやねん!』と叫びながらハリセンで叩く」です!』

「コテコテの吉本新喜劇か!! 街中で急にハリセン振ったらただの不審者だろ!!」

【吉本新喜劇AI草ww】

【道頓堀川に落下ww】

【同接破竹の120万人突破!】

そんな大混乱の中、天宮ミルクは諦めずに持参した「大阪限定・たこ焼き風キャベツタルト」を取り出した。

「ヒューガさん! 看板の掛け替えがダメなら、この『たこ焼きソースがかかったキャベツタルト』を道頓堀の名物スイーツにしましょう!」

「タルトにソースとマヨネーズと青のりをかけるな!! 洋菓子なのかお好み焼きなのかハッキリしろ!! 味の渋滞を起こしてんだよ!!」

しかし、現地で配信を見守っていた大阪のリスナーや屋台のおっちゃんたちが「お、なんやこれ! おもしろそうやんけ!」と興味津々で試食。

「……あれ? ソースの甘辛さとタルト生地の香ばしさが……意外とお好み焼きっぽくてイケるで!?」

おっちゃんたちのまさかの高評価に、天宮ミルクは大喜び。

「本当ですか〜!? ありがとうございます! 大阪の『食い倒れスピリッツ』最高です〜!」

「大阪の人たちの懐が深すぎるんだよ!! 変な奇食を温かく受け入れるな!!」

【おっちゃんたちの懐が深すぎるwwww】

【たこ焼き風タルトまさかの高評価】

【浪速の食い倒れスピリッツ】

【同接130万人突破!】

結局、カニ看板のジャック(?)は自粛されたものの、「たこ焼き風キャベツタルト」は大好評。道頓堀の熱気と爆笑の渦の中、弾丸ツアー第三弾(大阪編)は幕を閉じたのだった。

――配信終了後。戎橋のたもとで、川面を見つめながら缶ココアを飲む駆。

「……はぁ……はぁ……。大阪でツッコむの、周りのレスポンスが早すぎて倍疲れたぞ……」

「ふふっ、日向くん、お疲れ様です!」

隣に座ったみずきが、たこ焼きの被り物を脱ぎ、冷えた缶のいちごミルクを美味しそうに飲む。

「でも、大阪の人たち、みんな笑ってくれてすっごく温かかったですね!」

「……お前の無茶苦茶なボケに付き合ってくれる貴重な街だったな……」

駆は缶ココアを一口飲み、道頓堀の煌びやかなネオンを見上げてふっと柔らかく目を細めた。

「……まあ、でも。天下の台所でも、お前の奇食のインパクトは群を抜いてたわ」

みずきはパッと目を輝かせ、飛び切りの笑顔を浮かべた。

「えへへ! じゃあ弾丸日本縦断ツアーのラスト! 明日の第56話は……!」

みずきはスケッチブックを広げて、高らかに宣言した。

「明日は『北の試される大地・北海道! 雪山で100メートルの巨大キャベツタルト雪像を作るフィナーレ配信』です!」

駆は夜の道頓堀川に向かって、本日一番の快晴のような叫び声を叩き込んだ。

「南国から急に極寒の雪山に飛ぶな!!!! 気温差で体調が崩壊するわ!!!」

「きゃはは! やっぱり日向くんのツッコミ、世界一〜!」

道頓堀の夜空に溶けていく二人の笑い声。

群馬、愛知、大阪を駆け抜け、舞台は極寒の北海道へ。

世界一のツッコミと世界一のド天然の「終わらない旅」は、どこまでも賑やかに続いていく。

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