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五十一話

「月面を奇食でテロするな」という駆の至極当然な叫びを置き去りにしたまま迎えた、記念すべき第51話の20時。

YouTubeの「みるくちューにゅう」チャンネルでは、前回の50話記念の余韻も冷めやらぬ中、宇宙規模の超大型配信枠が立ち上がっていた。

タイトル:『【月面着陸】月面をキャベツタルトで埋め尽くせ! NASA全面協力(?)の宇宙テロ配信!』

50話を経てさらに勢いを増すチャンネル登録者数600万人超の画面前には、開始前から110万人を超えるリスナーが集結。チャット欄は天文学的スケールのカオスを察知して大盛り上がりとなっていた。

【本当に月に行こうとしてて草】

【NASA全面協力(絶対勝手に巻き込んでる)】

【ウサギじゃなくてキャベツが餅つきする月面】

【ヒューガの叫び声が真空の宇宙を伝わる謎技術】

――20時ジャスト。配信スタート。

画面に映し出されたのは、最新鋭の宇宙船船内風3Dステージ。無重力空間の中で、宇宙服(モデル仕様)を着たヒューガと天宮ミルクが無重力でフワフワと浮遊していた。

「……みなさんこんばんは。個人勢VTuberのヒューガです。……現在、僕たちは時速数万キロで月へ向かうロケットの船内にいます。無重力で体が浮いていて非常に喋づらいです。……そして、僕の目の前には無重力で漂う数千個のキャベツタルトがあります。地獄の無重力空間です」

「こんミルク〜! 無重力空間で『キャベツタルトの浮遊演舞』を披露している天宮ミルクです〜!」

「優雅に舞ってる場合か!! 船内で奇食を散乱させるな!! 制御パネルにタルトのカスが挟まったら一発で宇宙ゴミ(スペースデブリ)になるだろ!!」

【wwwwwwwwwwww】

【開幕0秒の無重力ツッコミ】

【制御パネルにタルトのカス草ww】

【宇宙空間でも変わらない安定感】

そこへ、地上コントロールセンター(※設定)から仲間たちが通信で参戦してくる。

黒羽レン『……ヒューガさん、僕の計算によれば、月面に直径100メートルのキャベツタルトを設置した場合、地球からの天体観測でハッキリと緑色の斑点として視認できるようになります』

「地球から見えてどうすんだよ!! 天文学者が『月に謎の緑のクレーターができた』って大騒ぎするだろ!!」

鳳凰院カグラ『フハハハ! この我が暗黒の魔力で月面を常闇に染め上げてくれよう!』

「月を暗黒に染めるな!! 潮の満ち引きが変わって地球の生態系がおかしくなるわ!!」

星空ルチア『ヒューガ先輩! AIの宇宙解析データにより、月面で最も映える決めポーズが判明しました!「ウサギの耳をつけて月面でタルトを掲げる」です!』

「ウサギのコスプレで奇食掲げるな!! 宇宙飛行士の歴史的瞬間に変な映像を混ぜ込むんじゃない!!」

【天文学者の悲鳴www】

【ウサギ耳ヒューガ見たい】

【同接破竹の140万人突破!】

ついに月面着陸に成功した二人。

クレーターの広がる月面に降り立った天宮ミルクは、ドヤ顔で巨大な『特製キャベツ旗』を月面の砂(レゴリス)に突き立てた。

「人類にとっては小さな一歩ですが、みるくちューにゅうにとっては大きなキャベツの一歩です!」

「アームストロング船長の名言を奇食で汚すな!! 月面調査の記録画像にキャベツの絵入りの旗を残すんじゃない!!」

さらに、月面の低重力を利用して巨大なキャベツタルトを月面でバウンドさせる天宮ミルク。

「見てくださいヒューガさん! タルトがフワフワ跳ねてます〜!」

「月面でタルトのジャグリングすな!! 月面の砂がくっついてただの砂利まみれの奇食になってんだろ!!」

月面からの超技術生配信に、世界150万人の同時接続リスナーが大爆笑。

NASAの通信網(※バーチャル)をジャックした伝説の宇宙配信は、大狂乱のうちに幕を閉じたのだった。

――配信終了後。地球へ帰還する宇宙船の船内。

無重力空間でシートに体を固定され、脱力している駆。

「……はぁ……はぁ……。宇宙空間でツッコむの、酸素の消費量が半端ねぇわ……」

「ふふっ、日向くんお疲れ様です!」

隣のシートで、みずきが無重力でプカプカ浮かぶ缶のいちごミルクを両手でキャッチしながら微笑む。

「でも、月の上から見る地球、すっごく綺麗でしたね!」

「お前が旗立てたりタルト跳ねさせたりしなきゃ、もっと風情があったんだけどな……」

駆は無重力の中で浮かぶ缶コーヒーを上手く掴んで一口飲み、窓の外に広がる青い地球を見つめてふっと柔らかく笑った。

「……まあ、でも。月まで来ても、お前とのやり取りは何も変わらんな」

みずきはパッと目を輝かせ、無重力の中でクルッと一回転しながら飛び切りの笑顔を浮かべた。

「はいっ! 地球でも月でも宇宙でも、日向くんと一緒ならどこだって世界一の部室です!」

「へいへい。……で、地球に帰ったら明日は何やる気だ?」

みずきは悪戯っぽく微笑むと、宇宙船のノートを開いて高らかに宣言した。

「明日は『地球に帰還記念! 大学の部室でこたつを出してミカンを食べる超まったり配信』です!」

駆は漆黒の宇宙空間に向かって、本日一番の快晴のような叫び声を響かせた。

「スケールの落差が凄まじいな!!!! 宇宙の次はこたつかよ!!!」

「きゃはは! やっぱり日向くんのツッコミ、世界一〜!」

漆黒の宇宙に溶けていく二人の笑い声。

月を越え、宇宙を駆け抜け、再びあの温かい部室へ。

世界一のツッコミと世界一のド天然の物語は、どこまでも賑やかに、最高の日常を描き続けていく。

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