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四十九話

学園祭初日の巨大屋台大狂乱から一夜。

「食べ物を燃やすな」という駆の至極全当な説教は夕闇に消え、学園祭最終日の19時、グラウンドの中央にそびえ立つキャンプファイヤーの櫓(やぐら)の前から特別生配信がスタートしていた。

タイトル:『【学園祭後夜祭】グラウンドから生中継! 巨大焚き火で「焼きキャベツタルト」を作ってフィナーレ!』

学園祭の有終の美(?)を見届けようと、チャンネル登録者数600万人超の画面前には開始前から100万人を超えるリスナーが集結。グラウンドを囲む全校生徒の歓声と相まって、配信枠は異様な熱気に包まれていた。

【後夜祭きたああああ!】

【燃やすんじゃなくて「焼く」ことになったのかww】

【消防署への申請は大丈夫なのか】

【ヒューガの喉が最終日で限界突破しそう】

――19時ジャスト。配信スタート。

画面に映し出されたのは、赤々と炎が揺らめくキャンプファイヤーの3D特設ステージ。甚平姿のヒューガと、可愛い浴衣姿の天宮ミルク(3D)が炎の前に立っている。

「……みなさんこんばんは。個人勢VTuberのヒューガです。……学園祭最終日、後夜祭の現場です。消防署と大学総務課の許可のもと、安全に配慮してキャンプファイヤーを行っております。……隣の天宮さんが巨大なアルミホイルの包みを担いでいること以外は平和です」

「こんミルク〜! 後夜祭のフィナーレを飾る『巨大ホイル焼きキャベツタルト』を火の中に投げ込もうとしている天宮ミルクです〜!」

「直火で炭にしようとするな!! ホイルで包んだって中身はタルトなんだよ!! 焼き芋感覚でスイーツを焚き火にくべるんじゃない!!」

【wwwwwwwwwwww】

【開幕0秒の焚き火ツッコミ】

【巨大ホイル焼きキャベツタルト草ww】

【浴衣姿てぇてぇのにやってることが豪快すぎる】

そこへ、後夜祭のダンス&ライブステージに触発された仲間たちがDiscord経由で乱入してくる。

黒羽レン『……ヒューガさん、僕の計算によれば、その炎の火力量であればタルトの表面が炭化するまであと3分です』

「カウントダウンすな!! 早く火から遠ざけろ!!」

鳳凰院カグラ『クックック……この赤々とした焔こそ、我が暗黒のソウルにふさわしい! 今こそ炎の周りで『闇のフォークダンス』を踊ろうぞ!』

「ただのフォークダンスを禍々しい名前にするな!! 生徒たちが引いてんだろ!!」

星空ルチア『ヒューガ先輩! AIの感情分析により、後夜祭で最も感動的なフィナーレを迎える方法が判明しました!「炎に向かって二人で叫びながら、焼き上がったキャベツを空に投げる」です!』

「感動の方向性がバグってんだよ!! 熟したキャベツが上空から降ってくるホラー映画になるだろ!!」

【闇のフォークダンス草ww】

【空から降ってくるキャベツホラーww】

【同接破竹の130万人突破!】

大騒ぎの中、ついに長火バサミで救出された巨大ホイル焼きキャベツタルト。

ホイルを開くと、香ばしいカスタードの香りと……なぜかほんのり香ばしい焼きキャベツの香りが広がった。

「ヒューガさん! できました!『後夜祭特製・香ばし焼きキャベツタルト』です! 一緒に食べましょう!」

「……たく、焦げてねえだろうな?」

駆がおそるおそる一口かじりつくと、サクッとしたタルト生地と香ばしいキャラメリゼ、そして絶妙な甘みが口いっぱいに広がった。

「……ん? あれ、美味い……? 奇跡的に焼きリンゴみたいな香ばしさになってる……?」

「えへへ! ミルク、隠し味にりんごジャムも入れておいたんです! 大成功〜!」

「最初からそう言えよ!! 焦げて炭になったかと焦っただろ!!」

【美味いんかいwwwwww】

【奇跡の絶品スイーツ誕生】

【ツッコミ損のヒューガ草】

【同接140万人突破で大フィナーレ!】

グラウンドに集まった学生たちからも「うめぇ!」「ヒューガ最高ー!」と大歓声が上がり、夜空に大きな打ち上げ花火が打ち上がった。

爆笑と歓声、そして満開の花火に包まれながら、伝説の学園祭配信は最高潮のうちに幕を閉じたのだった。

――配信終了後。片付けが終わり、静まり返った夜のグラウンド。

ベンチに並んで座り、夜空に残る花火の煙を見上げる駆とみずき。

「……ふぅ……。怒涛の学園祭が終わったな……」

「はい! すっごく、すっごく楽しかったです!」

みずきは浴衣の袖をキュッと握りしめ、隣の駆を眩しそうに見つめた。

「日向くん。……ミルク、日向くんと一緒に大学に通えて、配信ができて、本当に幸せです」

駆は一瞬驚いたように目を丸くし、それから缶コーヒーのプルタブを開けて一口飲み、照れくさそうに柔らかく笑った。

「……俺もだよ。お前が隣にいない大学生活なんて、想像もつかんわ」

「えへへ……!」

みずきは嬉しそうに顔をほころばせると、夜空に向かって背伸びをした。

「じゃあ日向くん! 学園祭も終わったことですし……記念すべき『第50話』の次回配信は、超豪華な特別企画にしましょう!」

駆はふっと力強い笑みを浮かべ、夜空に届くような堂々とした声で返した。

「ああ、何が来ようと受けて立つぜ。お前がどんなボケをぶち込んできても、俺が全部叩き落としてやるからな!」

「はいっ! やっぱり日向くんのツッコミ、世界一〜!」

夜のキャンパスに溶けていく、二人の弾けるような笑い声。

学園祭を越え、節目の50話へ。

世界一のツッコミと世界一のド天然の物語は、どこまでも眩しく、最高の未来へ駆け抜けていく。

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