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四十八話

部室の大掃除から数週間。秋の大学キャンパスは、年に一度のビッグイベント「学園祭(キャンパスフェスティバル)」の熱気に包まれていた。

「模擬店で勝手に巨大な奇食を作るな」という駆の至極まともな釘差しも虚しく、学園祭初日の午前9時、天宮ミルクのチャンネルでは現場からの緊急生配信枠が立ち上がっていた。

タイトル:『【学園祭】売上世界一を目指せ! 全長10メートルの「超巨大キャベツタルト」屋台をオープンしてみた!』

登録者数600万人超の怪獣ユニットが大学の学園祭で屋台を出すという噂は瞬く間に駆け巡り、一般来場者が校門前に殺到。世界同時生配信の同接数も、開始わずか10分で95万人を突破していた。

【学園祭配信きたあああ!】

【10メートルのキャベツタルトはもはや建築物】

【大学のグラウンド占拠してて草】

【ヒューガの叫び声が学内スピーカーで全校放送されそう】

――9時ジャスト。配信スタート。

画面に映し出されたのは、人だかりで溢れかえる大学のグラウンド。エプロン姿のヒューガと、ねじり鉢巻きをしめた天宮ミルクが、巨大な特設テントの前に立っている。

「……みなさんおはようございます。個人勢VTuberのヒューガです。……目の前に、建築基準法に引っかかりそうなサイズの『タルトの台座』が鎮座しています。大学側から『他のお客様の邪魔にならないように』って言われた直後にグラウンドの半分を占拠しました。助けてください」

「こんミルク〜! 学園祭の看板メニュー! 1ピース100円の『超巨大キャベツタルト・学祭スペシャル』焼き上がりました〜!」

「焼き上がったんじゃないんだよ!! 厨房のオーブンじゃなくて建設現場のコンクリートミキサーで作っただろこれ!! 焼き上がりの匂いが完全に『炒めた野菜』なんだよ!!」

【wwwwwwwwwwww】

【コンクリートミキサー調理草ww】

【開幕0秒の建築基準法ツッコミ】

【タルトじゃなくて野菜炒め】

そこへ、学園祭のゲスト(&客)として仲間たちが大集結して押しかけてくる。

黒羽レン『……ヒューガさん、僕の計算によれば、このタルトを完売させるには、本日来場する全学生および近隣住民が1人あたり5キログラム食す必要があります』

「大喰い大会を開催しようとするな!! 胃袋が爆発するだろ!!」

鳳凰院カグラ『フハハハ! この我が学園祭の『ステージ企画』を乗っ取り、暗黒の儀式を執り行ってやろう!』

「ステージ企画の実行委員会に激怒されるからやめろ!! お前は大人しくタルトの売り子をしてろ!!」

星空ルチア『ヒューガ先輩! AIの集客最適化データにより、売上を10倍にする画期的な呼び込みが判明しました!「タルトを買うと、ヒューガ先輩の生ツッコミが一発もらえる」です!』

「俺を学園祭の景品にするな!! なんで俺が朝から晩まで『なんでだよ!』って叫び続けなきゃいけないんだよ!!」

【生ツッコミ券草wwwwww】

【行列が1キロ超えそう】

【同接破竹の120万人突破!】

しかし、ルチアの提案(暴走)が引き金となり、「ヒューガの生ツッコミが聞ける屋台」として学園祭の来場者が大殺到。

「ヒューガさん! お客さんから『タルトにキャベツが入ってないぞ!』ってクレームが入りました!」

「タルトにキャベツ入ってないならただの普通のタルトだろ!! 奇食じゃなくなって逆に成功してんじゃねえか!!」

『うわあああ! ヒューガの生ツッコミだー!!(歓喜する客たち)』

「ツッコミで客が喜ぶな!! どんなファン層が集まってんだよこの屋台!!」

結局、10メートルの超巨大キャベツタルト(※味は普通のカスタードとキャベツが奇跡的に半々だった)は、ヒューガの爆音ツッコミの連発とともにわずか2時間で完売。

学園祭実行委員会から「今年度最も盛り上がった模擬店」として表彰されるという、謎の快挙を成し遂げて配信は幕を閉じたのだった。

――配信終了後。夕暮れの学園祭の後片づけ。

グラウンドのベンチに腰掛け、喉を完全に枯らしてスポーツドリンクをあおる駆。

「……ハぁ……ハぁ……。学園祭で何千人相手にツッコんだんだ俺は……声が出ねぇ……」

「ふふっ、日向くん、お疲れ様です!」

隣に座ったみずきが、冷えた缶のいちごミルクを駆の手に持たせ、夕陽に照らされながら楽しそうに笑う。

「でも、大学のみんなも、リスナーさんも、世界中のみんなが笑顔になってましたね!」

「……お前の無茶苦茶なボケと、巨大タルトのせいだけどな」

駆はガラガラ声で笑いながら缶のプルタブを開け、一口飲んでから愛おしそうにキャンパスの夕焼けを見上げた。

「……まあ、でも。大学の思い出としては、悪くないか」

みずきは一瞬驚いたように目を丸くし、それから飛び切りの笑顔を弾けさせた。

「はいっ! 日向くんと作る思い出は、全部が最高で一番の宝物です!」

「へいへい。……で、明日は学園祭2日目だけど、何やる気だ?」

みずきはパッと目を輝かせると、胸を張って高らかに宣言した。

「明日は『後夜祭のキャンプファイヤーで、巨大キャベツタルトを燃やす配信』です!」

駆は夕暮れのグランドに向かって、枯れた声で本日一番の爆音ツッコミを叩き込んだ。

「食べ物を燃やすな!!!! 消防署に通報されるわ!!!」

「きゃはは! やっぱり日向くんのツッコミ、世界一〜!」

秋の夕空に溶けていく、二人の弾けるような笑い声と快晴のような叫び。

学園祭でも、日常でも、世界のどこであっても。

世界一のツッコミと世界一のド天然の「終わらない青春」は、どこまでも賑やかに続いていく。

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