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四十四話

南国の無人島から無事に生還を果たした数日後。

「勉強に集中しろ」という駆の悲鳴も虚しく、定期テスト前夜の22時、天宮ミルクのチャンネルで「深夜の耐久勉強配信」の枠が立ち上がっていた。

タイトル:『【赤点回避】テスト前夜の徹夜勉強会! 100点取れる完璧なボケ暗記術!』

登録者数600万人超の怪物チャンネルがお届けする、あまりにも親近感にあふれた修羅場企画。配信開始と同時に、同接数は破竹の勢いで70万人を突破していた。

【テスト前夜のV配信助かる(助からない)】

【Vの留年危機草】

【ヒューガは成績優秀そうだけどミルクがヤバそう】

【暗記術(物理)の予感】

――22時ジャスト。配信スタート。

画面に映し出されたのは、教科書と参考書が山積みになった深夜の大学部室。

「……みなさんこんばんは。個人勢VTuberのヒューガです。……明日が大学の前期期末テストなんですが、隣の天宮さんのノートが真っ白です。マジで留年がかかっています」

「こんミルク〜! 歴史の年号を全部『キャベツの収穫年』に置き換えて暗記している天宮ミルクです〜!」

「歴史を勝手に農業史に塗り替えるな!! 1192年は鎌倉幕府の成立だろ!!『いい国つくろうキャベツ畑』にするんじゃない!!」

【wwwwwwwwwwww】

【開幕0秒の鎌倉幕府ツッコミ】

【いい国つくろうキャベツ畑草ww】

【語感が良すぎてテスト本番で書きそう】

絶望的な進捗の天宮ミルクを救うべく(?)、Discord経由で仲間たちが次々と家庭教師(暴走)として参戦してくる。

黒羽レン『……ヒューガさん、僕が天宮さんに微積分を教えてあげましょう。えー、この極限値を求める数式ですが……』

「レンさん助かる! 頼むから論理的に教えてやってくれ!」

「わかりました! グラフの曲線をキャベツの千切りの角度として計算します!」

「数学にまでキャベツを侵入させるな!! 微分積分が急に調理実習になるだろ!!」

鳳凰院カグラ『フハハハ! 英語のテストなど恐るるに足らん! 我が暗黒の英単語帳を伝授しよう!“Cabbage”の意味は……『世界を統べる王』だ!』

「辞書を書き換えるな!! 英文法以前に単語の意味が崩壊してんだよ!!」

星空ルチア『ヒューガ先輩! AIの最適化計算により、一夜漬けで満点を取る唯一の方法が判明しました!「解答用紙にキャベツのタルトの絵を描いて採点官の情に訴える」です!』

「情に訴えられても0点なんだよ!! 採点官も『なんだこの絵は』って即不合格にするわ!!」

【全員教える気がないwww】

【テスト前夜のカオス】

【同接破竹の95万人突破!】

テスト勉強の疲労とカオスなアドバイスで脳が破裂しそうになった天宮ミルクは、ついに最終兵器を取り出した。

「ヒューガさん! 勉強疲れに効く、脳細胞が活性化する『暗記パン風・キャベツタルト』を作ってきました!」

「ノートの文字をタルトに転写して食おうとするな!! 墨汁とインクの味がするだけだろ!! 胃の中に暗記してもテスト用紙に書けなきゃ意味ねえんだよ!!」

深夜の部室に響き渡る絶叫ツッコミ。

テスト前夜の静けさなどどこへやら、同接100万人のリスナーに見守られながら、二人の徹夜勉強会は大爆笑のうちに朝を迎えたのだった。

――翌日。テスト終了後の夕方。

部室のパイプ椅子に魂が抜けたように深く腰掛ける駆。

「……ハぁ……ハぁ……。徹夜でツッコんでそのままテスト受けるの、人生で一番頭が回らなかったぞ……」

「ふふっ、日向くん、お疲れ様です!」

隣に座ったみずきが、冷えた缶のいちごミルクを駆の手に持たせ、嬉しそうに微笑む。

「でも、日向くんのおかげで、歴史のテスト『いい国つくろう鎌倉幕府』って正しく書けました!」

「そこは当たり前なんだよ!! 他の教科はどうだったんだよ!?」

「えへへ……英語の解答用紙に、ちょっとだけキャベツの絵を描いちゃいました!」

「描くなと言っただろ!!!! 採点官に怒られるわ!!!」

駆の快晴のようなツッコミが、夕暮れのキャンパスに高く響き渡る。

「きゃはは! やっぱり日向くんのツッコミ、世界一〜!」

赤点でも、満点でも、留年の危機でも。

二人の弾ける笑い声と終わらない日常は、どこまでも賑やかに未来へ続いていく。

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