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三十九話

ワールドツアーの最終到達地点。アメリカ・ニューヨーク。

「マンハッタンが大混乱に陥る」という駆の悲鳴は世界の情熱にかき消され、世界中の視線がタイムズスクエアの超巨大ビジョンへと注がれていた。

タイトル:『【ワールドツアーFINAL】タイムズスクエア生中継! 全世界へ捧ぐ最後の爆音ツッコミ!』

チャンネル登録者数はついに600万人の大台に到達。

タイムズスクエアを埋め尽くす現地の大観客と、世界同時生配信の同時接続数はVTuber史上の前人未到である200万人を軽々と突破していた。

【同接200万人到達きたああああ!】

【タイムズスクエアのビジョン全部みるくちゅーにゅうww】

【ニューヨークがキャベツの熱気に包まれている】

【ワールドツアー感動のフィナーレ(?)】

――ライブ開始。

タイムズスクエアに並ぶ数十枚の街頭ビジョンが一斉にジャックされ、自由の女神風の衣装を纏ったヒューガ(3D)と、キャベツの王冠を戴いた天宮ミルク(3D)が降臨した。

『HELLOOOOOOO, NEW YORK CITY!!!!!!』

ブロードウェイを揺らすような地鳴りのごとき大歓声。

「みなさんこんばんは! 個人勢VTuberのヒューガです! ニューヨークの皆さん、声出していけますかー!」

「こんミルク〜! 自由の女神の松明を『巨大キャベツタルト』に差し替えようとしている天宮ミルクです〜!」

「象徴的な松明を奇食に変えるな!! 自由の女神が夜道でタルトを掲げる謎のオブジェになるわ!!」

【wwwwwwwwwwww】

【開幕0秒のニューヨーク爆破ツッコミ】

【自由の女神「解せぬ」】

【現地の歓声が「OH MY GOD!」で埋め尽くされてるww】

ライブクライマックス、海外勢のクリス、シトラ、そして日本からリモート参戦のレン、カグラ、ルチアが画面いっぱいに集結。

クリス『HYUGA-SAN! 我、タイムズスクエアの紙吹雪の代わりに「100万枚のキャベツの葉」を空から降らせる準備を完了したぞ!』

「紙吹雪の代わりに生野菜を降らせるな!! マンハッタンの路上にキャベツの千切りが敷き詰められて交通麻痺を起こすだろ!!」

カグラ『フハハハ! このニューヨークの夜景すら我が暗黒の輝きには及ばぬ!』

「摩天楼の街光に張り合おうとするな!! イルミネーションに嫉妬する魔王があるか!!」

ルチア『ヒューガ先輩! AIの最適化計算により、タイムズスクエアで最も映える決めポーズが判明しました!「二人でキャベツを抱きしめて号泣」です!』

「なんでシュールな感動シーンを捏造しようとしてんだよ!! 誰も泣かねえよそんな映像!!」

【キャベツを抱きしめて号泣草ww】

【マンハッタン交通麻痺不可避】

【同接破竹の230万人突破!!】

そして、天宮ミルクがタイムズスクエアの画面越しに、集まった世界中のファンと画面前のリスナーへ語りかけた。

「みんな! 最初の配信は、たったの4人でした。……でも、日向くんがツッコんでくれて、みんなが笑ってくれて、気づいたら世界中の人たちと一緒に笑い合えるようになりました!」

「天宮さん……」

「だから! 今日のラストは、世界中の人にミルクたちの『大好き』を届けます! 受け取ってください! ……特大キャベツタルト砲、発射〜〜〜っ!」

「最後に砲撃するな!!!! 世界中の画面に向かって危険物を射出するんじゃない!!!」

ドガーン!!(画面弾けるようなVFX演出)

世界230万人の視聴者とニューヨークの観客が腹を抱えて大爆笑。

歓喜と大爆笑の嵐の中、ワールドツアーFINALは伝説的な大狂乱とともに幕を閉じた。

――終演後。ニューヨークのホテルの屋上。

摩天楼の夜景を見下ろしながら、激闘を終えてパイプ椅子に腰掛ける駆。

「……はぁ……はぁ……。タイムズスクエアの規模でツッコむの、本当に命削れたわ……」

「ふふっ、日向くん、お疲れ様です!」

画面越しに、みずきが温かい缶のいちごミルクを両手で持ちながら、眩しい笑顔を向ける。

「でも、世界中の人たちが日向くんのツッコミで笑顔になってました! ミルク、世界で一番幸せです!」

駆は缶コーヒーを一口飲み、マンハッタンの美しい夜景を見つめながら、ふっと柔らかく目を細めた。

「……ああ。お前が世界中で暴走してくれたおかげだな。……ありがとな、天野」

みずきは一瞬目を丸くし、それから照れくさそうに、けれど飛び切りの笑顔で深く頷いた。

「はいっ! ……ねぇ日向くん、ワールドツアーが終わったら……次はどこへ行きましょうか?」

駆は呆れたように肩をすくめ、世界で一番力強く、頼もしい笑みを浮かべた。

「どこへだって行ってやるよ。地球の裏側でも、宇宙の果てでも……お前がボケて、俺がツッコむ。それが俺たちの日常だからな」

「はいっ! じゃあ明日は……二人で大学の部室に帰って、いつもの『同接4人ごっこ配信』をやりますね!」

駆はニューヨークの夜空に向かって、本日一番の快晴のような叫び声を響かせた。

「600万人登録で同接4人ごっこすな!!!! 贅沢すぎる逆サプライズだろ!!!」

「きゃはは! やっぱり日向くんのツッコミ、世界一〜!」

世界一の摩天楼の空に溶けていく二人の笑い声。

タイムズスクエアを飛び越えて、原点であるあの部室へ。

世界一のツッコミと世界一のド天然の物語は、これからもどこまでも、最高の笑顔と共に続いていく。

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