三十七話
ハリウッドでの超大作映画撮影を無事に(?)終えた勢いそのままに、ついに開幕した『みるくちューにゅう 1st World Tour 〜全人類ツッコミ化計画〜』。
その記念すべき第一弾の舞台は、歴史と伝統の街・イギリスのロンドン。
現地の大規模アリーナ会場には数万人の観客が詰めかけ、世界同時生配信の同接数は開始前にもかかわらず破竹の130万人を突破していた。
【ワールドツアー初日ロンドンきたあああ!】
【会場の熱気すごすぎww】
【イギリスでもキャベツタルトが猛威を振るうのか】
【ヒューガの英語ツッコミ(?)期待】
――ライブ開演。
大スクリーンのVFX映像とともに、サイバーパンク風の豪華衣装に身を包んだヒューガ(3D)と天宮ミルク(3D)がステージに召喚される。
『WELCOOOOOOME TO LONDON!!』
会場を揺るがすような大歓声とスパチャの嵐。
「みなさんこんばんは! 個人勢VTuberのヒューガです! ロンドンの皆さん、聴こえてますかー!?」
「こんミルク〜! イギリスの伝統あるアフタヌーンティーに『キャベツタルト』を持ち込もうとしている天宮ミルクです〜!」
「英国の歴史と伝統を奇食で汚すな!! 貴族のティータイムが悲劇の現場になるわ!!」
【wwwwwwwwwwww】
【英国紳士大爆笑で草】
【ロンドンの観客が「CABBAGE! CABBAGE!」ってコールしてて草】
【開幕0秒でイギリスの伝統撃破】
ライブ中盤、現地ゲストとして欧州支部のクリスとシトラ、そして日本からリモート参戦の鳳凰院カグラと黒羽レンがステージ上の大画面に登場。
クリス『HYUGA-SAN! 我、イギリスの伝統行事「ビッグ・ベン(時計台)の鐘の音」ヲ、ヒューガの叫び声ニ 差し替えるハッキングヲ 完了シタぞ!』
「歴史的建造物の音声を勝手に俺の叫び声に変えるな!! ロンドン市民が毎時「なんでだよ!」って叫び声聴かされることになるだろ!!」
カグラ『クックック……このロンドンの深い霧(霧の都)は、我が暗黒の魔力で発生させたもの……!』
「ただのロンドン名物の気候だよ!! 自分の魔力みたいに誇るな!!」
シトラ『ロンドン橋落ちた〜♪の歌詞を、キャベツタルト落ちた〜♪にアレンジして歌いま〜す♪』
「童謡の歌詞を改変するな!! 橋じゃなくてタルトが落ちてどうするんだよ!!」
【ロンドン橋キャベツタルト草ww】
【ビッグベンの叫び声はヤバすぎるww】
【同接破竹の140万人突破!】
さらに、天宮ミルクがステージ中央のティーセットの前に歩み寄り、笑顔で巨大なポットを掲げた。
「ロンドンの皆さん! ミルク特製の『煮込みキャベツ紅茶』をどうぞ〜!」
「紅茶にキャベツを煮込むな!! イギリス人が一番怒るタイプの文化侵害なんだよ!! 紳士淑女が泡吹いて倒れるわ!!」
ロンドンアリーナの現地観客たちは大爆笑。腹を抱えて転げ回りながら、会場中に「HYUGA! HYUGA!」の大合唱が響き渡った。
言葉の壁すら軽々と越えていく爆音ツッコミと圧倒的カオス。
ワールドツアー初日・ロンドン公演は、歴史的大成功を収めたのだった。
――公演終了後。ホテルの部屋(リモート接続)。
激闘のロンドン公演を終え、ベッドに倒れ込む駆。
「……はぁ……はぁ……。ロンドンっ子相手にツッコむの、喉の消費量が凄まじいわ……」
「ふふっ、日向くん、お疲れ様です!」
画面越しに、みずきが温かいいちごミルクを両手で持ちながら嬉しそうに微笑む。
「ロンドンの人たち、みんな日向くんの『なんでだよ!』を英語で真似して叫んでましたね!」
「お前が変な英国紅茶作ろうとするからだろ……」
駆は冷えた缶コーヒーを開けて一口飲み、窓の外に広がるロンドンの美しい夜景を見上げた。
「……まあ、でも。国が変わっても、言葉が変わっても……やることは一つだな」
みずきは一瞬目を丸くし、それから飛び切りの笑顔で深く頷いた。
「はいっ! どこに行っても、日向くんがツッコんでくれれば、そこが世界一のステージです!」
「へいへい。……さあ、明日はどの国で暴走する気だ?」
みずきは悪戯っぽく目を輝かせると、ノートを開いて高らかに宣言した。
「明日はパリ公演で『エッフェル塔を巨大キャベツタルトのピックにする配信』です!」
駆は夜のロンドンの空に向かって、本日一番の快晴のような叫び声を叩き込んだ。
「フランスの象徴をタルトの飾りにするな!!!! 芸術の都から出禁食らうわ!!!」
「きゃはは! やっぱり日向くんのツッコミ、世界一〜!」
世界の夜空に溶けていく二人の笑い声。
ロンドンからパリ、そして世界中へ。
二人の「終わらないワールドツアー」は、最高の爆爆笑とともにどこまでも駆け抜けていく。




