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三十六話

映画第二弾の発表から数ヶ月。

ハリウッドの超大手スタジオから招聘された二人は、最新鋭のバーチャルプロダクション(超巨大LEDスタジオ)を備えた最高峰の撮影現場へと降り立っていた。

「……なぁ天宮さん。映画の予算、何十億ドルかかってんだよこれ? セットの豪華さが意味不明なんだけど」

自室で最高性能のマイクを構えながら、モニターに映し出されたハリウッドスタジオのVR映像に圧倒される駆。

『ヒューガ様、天宮様! 撮影準備が整いました! 本日はクライマックスシーン「巨大キャベツ要塞の崩壊」の撮影です!』

現地のアメリカ人映画監督がテンション爆発でメガホンをとる。

「……ちょっと待て監督!! 億単位の予算かけて作るセットが『巨大キャベツ要塞』ってどういうことだ!! 豪華な無駄遣いか!!」

【ハリウッド撮影配信きたあああ!】

【ハリウッドの予算でキャベツ要塞作るの草】

【同接すでに開始5分で90万人ww】

【監督が一番ノリノリなの笑う】

生中継を兼ねた撮影配信がスタートするやいなや、同接数は破竹の勢いで120万人を突破。

【撮影本番:ハリウッドクオリティの惨劇】

ハリウッド級VFXで描かれるキャベツ要塞:

CGの域を超えた超リアルなキャベツの千切りがメテオのように空から降ってくる。

ヒューガ「千切りを隕石レベルの密度で降らせるな!! 映像技術の極致を奇食の災害に使うな!!」

ハリウッド俳優(吹き替えV)の参戦:

黒羽レンと鳳凰院カグラが、無駄にダンディなハリウッド吹き替え風ボイスで重厚な会話を展開。

カグラ(イケボ)『我が友ヒューガ……この要塞のキャベツは、我が暗黒のオーラで熟成されている……』

ヒューガ「ダンディな声で腐りかけのキャベツの解説をするな!! 声の重厚感と内容のくだらなさが噛み合ってねえんだよ!!」

クライマックス:天宮ミルクのNG連発(?)アドリブ:

劇中、悲壮感漂うBGMが流れる中、天宮ミルク(3D)が巨大爆薬(※演出用)のスイッチをドヤ顔で掲げる。

「ヒューガさん! このスイッチを押すと、全世界のキャベツタルトが同時に焼き上がります!」

「爆破スイッチをオーブンのタイマーみたいに使うな!! 要塞ごと全滅するだろ!! 押すな!! 絶対に押すなよ!!」

『カット!! PERFECT!! AMAZING!!』

ハリウッド監督が大絶賛のスタオベ(スタンディングオベーション)。

【wwwwwwwwwwww】

【ダチョウ倶楽部ばりの押すなよww】

【ハリウッド監督大興奮で草】

【映画館で観たら腹筋崩壊確定】

結局、撮影現場は全編ヒューガの爆音ツッコミとハリウッドの圧倒的映像美が交錯するカオス空間と化し、全世界のリスナーを大爆笑の渦に巻き込んだ。

――撮影終了後。深夜の部室(リモート接続)。

ハリウッドとの時差と大撮影の疲労で、すっかり脱力している駆。

「……はぁ……はぁ……。ハリウッドの規模でツッコむの、マジで命が削れるわ……」

「ふふっ、日向くんお疲れ様です! ハリウッドの監督さんも『ヒューガのツッコミはハリウッドの音響技術でも再現不可能な芸術だ』って大絶賛してましたよ!」

画面越しに、みずきが温かいいちごミルクの入ったマグカップをかかげて笑う。

「褒められてる気がまったくしねえ……」

駆は冷えた缶コーヒーを喉に流し込み、画面に映る最高の相方に向かって、ふっと柔らかい笑みを向けた。

「……まあでも。ハリウッドだろうがどこだろうが、お前のボケを落とせるのは俺しかいねえからな」

みずきは一瞬パッと目を輝かせ、それから飛び切りの笑顔で頷いた。

「はいっ! だからミルクは、これからも世界一のツッコミのために、世界一のボケを投げ続けます!」

「手加減はしろ!!」

どこまでも高く、どこまでも賑やかに。

二人の「終わらないエンターテインメント」は、ハリウッドの空すら突き破って、未来へと駆け抜けていく。

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