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三十五話

ハトとキャベツが舞い散った突撃ドッキリ配信から数日。

平和を取り戻したはずの駆のもとに、またしてもライブプロダクションの赤坂マネージャーから緊急の通話が入った。

『ヒューガ様、天宮様。朗報でございます。前回の劇場版『みるくちューにゅう』の大ヒットを受け、配給会社より【映画第二弾&世界同時公開】の制作決定打診が届きました!』

「映画第二弾ぁ!? 前回のキャベツタルト爆発で綺麗に締まっただろ!! なんで二作目作るんだよ!!」

『フフフ、今回はハリウッド・ヨーロッパ・アジアの各映画関係者を招いた【世界V映画サミット】の生配信にて、お二人から直接発表していただく予定です』

「スケールが海外の国家事業レベルになってんだよ!!」

こうして、登録者数500万人超の頂点ユニット「みるくちューにゅう」による、世界中のV映画ファン注目の緊急生配信がスタートした。

タイトル:『【世界同時生中継】みるくちューにゅう重大発表サミット! 映画第二弾……始動!?』

待機所には全世界から開始前から80万人を超えるリスナーが殺到。チャット欄は英語、日本語、インドネシア語、スペイン語が飛び交うカオスな状態となっていた。

【映画第二弾決定きたあああ!】

【ハリウッド進出マジ???】

【同接すでに開始前で80万人ww】

【キャベツタルトの悪夢再び】

20時ジャスト。配信スタート。

画面には、国連サミットのような重厚な会議室の3D背景。ヒューガ(3D)がビシッとスーツ(モデル仕様)を着こなし、天宮ミルク(3D)もフォーマルなドレス姿で着席していた。

「みなさんこんばんは。個人勢VTuberのヒューガです。本日は世界各国のファンの皆様へ、重大なお知らせがございます」

「こんミルク〜! 国際連合キャベツタルト委員会の天宮ミルクです〜!」

「勝手に存在しない国際機関を捏造するな!! 国際問題に発展したらどうすんだよ!!」

【wwwwwwwwwwww】

【開幕0秒の国際問題ツッコミ】

【フォーマルな格好で何言ってるんだww】

【ハリウッド関係者も見てるぞww】

配信中盤、海外支部のクリスとシトラ、そして黒羽レンが特別通訳&ゲストとして会議に参加。

クリス『HYUGA-SAN! 我、ハリウッドノ映画監督ニ「ヒューガの爆音ツッコミハ 映画館ノ音響設備ヲ 破壊スル威力ガ アル」ト アピールシテオイタぞ!』

「映画館のスピーカーを壊す営業をすな!! 損害賠償請求が飛んでくるだろ!!」

シトラ『新作映画の主題歌は、インドネシアの伝統楽器とキャベツを叩く音でフュージョンさせました〜♪』

「キャベツ叩く音を楽器にするな!! 映画のBGMがずっとベチャベチャ言ってるだろ!!」

黒羽レン『……ヒューガさん、僕の計算によれば、映画第二弾の興行収入目標は「地球の全人口の半分が観に来る」計算になっています』

「40億人観に来る映画ってなんだよ!! 宗教の開祖レベルの集客力求められてんだよ!!」

【40億人草wwwwww】

【スケールが地球規模すぎる】

【同接破竹の110万人突破!】

そして天宮ミルクが、胸を張って映画第二弾の「仮タイトル」をプレゼンし始めた。

「発表します! 映画第二弾のタイトルは……『劇場版みるくちューにゅう2 〜全宇宙キャベツ化計画と、ヒューガの叫び〜』です!」

「俺の悲鳴をタイトルに組み込むな!! なんで全宇宙をキャベツにしようとしてんだよ!! 悪役の野望かお前は!!」

「えへへ、監督のハリウッド映画プロデューサーさんも『OH! VERY CRAZY! PERFECT!』って大爆笑してました!」

「向こうのプロデューサーもノリで許可出すな!! 正気を保てハリウッド!!」

世界110万人の同時接続者数が腹を抱えて大爆笑。

サミット配信は世界トレンド1位をぶっちぎりで独走し、映画第二弾の制作(と事故)が正式決定したのだった。

――配信終了後。深夜の大学の部室。

サミットを終え、ネクタイを緩めるように首元を押さえて机に突っ伏す駆。

「……はぁ……はぁ……。世界サミットでツッコむの、人生で一番胃が痛かったぞ……」

「ふふっ、お疲れ様です日向くん!」

隣に座ったみずきが、冷えた缶のいちごミルクを手渡し、嬉しそうに微笑む。

「でも、世界中の人たちが日向くんのツッコミで大爆笑してましたね! ミルク、すっごく誇らしかったです!」

「お前が世界規模で暴走するからだろ……」

駆は缶コーヒーを開けて一口飲み、ふっと愛おしそうに窓の外の夜空を見上げた。

「……まあ、でも。映画が何本作られようが、世界中が相手になろうが……やることは変わらんな」

「えへへ、そうですね!……ねぇ日向くん」

みずきは悪戯っぽく目を輝かせると、駆の顔を覗き込んだ。

「映画の撮影が始まったら、もっともっとすごいボケをかましますからね!」

駆は呆れたように肩をすくめ、世界で一番頼もしい笑みを浮かべた。

「かかってこいよ。お前がどんなボケを世界に解き放とうと、俺が全部拾って叩き落としてやる。……それが俺たちの『みるくちューにゅう』だからな!」

「はいっ! やっぱり日向くんのツッコミ、世界一〜!」

夜空に溶けていく、二人の弾けるような笑い声と鋭い叫び。

画面を越え、国境を越え、ハリウッドへ。

世界一のツッコミと世界一のド天然の物語は、どこまでも賑やかに、最高速度で未来へ駆け抜けていく。

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