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二十九話

11月の超フライング忘年会から約2ヶ月。正真正銘の12月31日、大晦日。

日向駆(ヒューガ)と天宮ミルクのYouTubeチャンネルでは、バーチャル界最大級となる年越し特番の生配信がスタートしていた。

タイトル:『【年越し生放送】行くボケ来るツッコミ! 2026-2027カウントダウン全V大集合スペシャル』

チャンネル登録者数はついに400万人を達成。

配信開始と同時に同接数は破竹の勢いで80万人を突破し、画面上のチャット欄は世界の全言語が入り乱れるお祭り騒ぎとなっていた。

【ついに本当の大晦日きたあああ!】

【400万人達成おめでとう!!】

【今年最後のヒューガの叫び声を聴きに来た】

【みるくちゅーにゅう最強!】

画面には、豪華な正月仕様の3D特設スタジオ。門松や鏡餅、そしてなぜか中央に鎮座する巨大なキャベツのオブジェ。

「みなさんこんばんは! 個人勢VTuberのヒューガです! ついに2026年も残り1時間を切りました!」

「こんミルク〜! 年越し蕎麦の代わりに『キャベツの千切りタルト』を茹でて食べている天宮ミルクです〜!」

「蕎麦の要素がどこにもねえよ!! めんつゆにキャベツ浸して食べるな!! 胃がもたれたまま年を越す気か!!」

【開幕0秒の大晦日ツッコミww】

【年越しキャベツタルト助かる】

【今年も最後までブレない天宮ミルク】

番組中盤、黒羽レン、鳳凰院カグラ、星空ルチア、さらには海外勢のクリスとシトラも豪華晴れ着衣装の3Dモデルでスタジオに大集結。

カグラ『クックック……我の暗黒の儀式により、2027年の到来を阻止し、永久の除夜の鐘を鳴らし続けてやろう!』

「除夜の鐘を連打するな!! ご近所迷惑だろ!! 108回叩いたら素直に年を越せ!!」

ルチア『AIの最新データ解析により、初詣で大吉を引く確率を100%にする方法が解明されました! お賽銭箱に「100万円」を投入することです!』

「札束で神様を買収しようとするな!! 徳を積め徳を!!」

クリス『HYUGA-SAN! 我、日本の伝統文化「羽子板」デ勝負シタイ! 負けた方ハ顔ニ墨デ「キャベツ」ト書く!』

「なんで書く文字がキャベツ限定なんだよ!! 罰ゲームの癖が強すぎるわ!!」

カオスな大喧嘩と大爆笑が繰り広げられる中、カウントダウンの時刻が刻一刻と近づいていく。

——23時59分45秒。

画面上のカウントダウンタイマーが残り15秒を刻み始める。

同接数は驚異の100万人を記録。VTuber史上初となる金字塔の瞬間に、世界中が息を呑んだ。

10……9……8……

「ヒューガさん! 2027年になったら、ミルク一番最初にとびっきりの『初ボケ』をかましますね!」

「新年初ボケの予告すな!! ろくなことにならない予感しかしないわ!!」

5……4……3……2……1……

【HAPPY NEW YEAR 2027!!】

画面全体に豪華な花火が打ち上がり、チャット欄が「あけおめ」「あけましておめでとう!」の弾幕で埋め尽くされる。

その瞬間、天宮ミルクがドヤ顔でマイクに飛びついた。

「あけましておめでとうございます! 2027年の天宮ミルクの抱負は……『全世界の主食をキャベツタルトにする』です!」

駆は2027年最初の息をめいっぱい吸い込み、新春の大空を突き破るような爆音ツッコミを叩き込んだ。

「元旦早々から地球規模の食糧危機を起こそうとするな!!!! 餅を食え餅を!!!!」

【wwwwwwwwwwww】

【2027年最初のツッコミきたあああ!】

【世界一早い初ツッコミwww】

【今年も平和(カオス)な1年になりそう】

【同接100万人の前で叫ぶ男】

世界100万人の視聴者が腹を抱えて大爆笑。

2027年の幕開けは、万雷の祝福と大爆死級の笑顔と共にスタートしたのだった。

——配信終了後。深夜3時。

初詣に向かう人々が遠くに見える、大学の部室の屋上。

私服姿の駆とみずきは、分厚いコートを羽織り、缶のココア(みずきはいちごミルク)を手に、冷たい夜空を見上げていた。

「……はぁ。年明け早々、喉が千切れるかと思ったわ」

「ふふっ、日向くん、2027年の初ツッコミも最高にキレてましたよ!」

みずきが白い息を吐きながら、嬉しそうに笑う。

「お前が元旦から物騒な抱負を言うからだろ。……まったく」

駆はココアを一口飲み、隣に立つ最高の相方に向かって、柔らかい笑みを向けた。

「……今年もよろしくな、天野」

みずきは一瞬目を丸くし、それから飛び切りの笑顔で深く頷いた。

「はいっ! 今年もよろしくお願いします、日向くん! ……ねぇ、日向くん」

「ん?」

「初日の出を見ながら、新しいコンビのオリジナル曲『キャベツと爆音のシンフォニー』を歌いませんか?」

駆は夜空に向かって、今年2回目の快晴のような叫び声を響かせた。

「元旦の初日の出に向かって変な歌を歌うな!! 縁起が悪いわ!!」

どこまでも高く、どこまでも響く最高のツッコミ。

2027年も、その先も。

二人の「終わらない事故配信」と奇跡の毎日は、眩しい初日の光と共に、どこまでも広がっていく。

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