二十五話
2.5次元舞台の熱気も冷めやらぬまま、迎えた初冬。
マネージャー赤坂から届いた「ハリウッド実写映画化!」……ではなく、「全国ロードショー! アニメーション劇場版『みるくちューにゅう THE MOVIE 〜キャベツと宇宙と爆走特急〜』の公開」の知らせに、ネット上は大激震に見舞われていた。
『Vのコメディが全国の映画館で上映される時代きたww』
『映画館で爆笑上映決定(応援上映あり)』
『映画になってもキャベツタルトの呪縛から逃れられないの草』
——そして、公開初日。都内有名劇場での舞台挨拶&全国ライブビューイング付き上映会。
劇場は超満員。スクリーン前には特設モニターが置かれ、舞台裏からリアルタイムで接続されたヒューガと天宮ミルクの3Dモデルが映し出されている。
「みなさんこんにちは! 個人勢VTuberのヒューガです! ……まさか自分が映画館の大スクリーンに映る日が来るとは思いませんでした」
「こんミルク〜! 映画監督の天宮ミルクです〜!」
「監督じゃねえだろ!! お前は口を出して現場を混乱させただけだ!!」
【開幕即安定の爆音ツッコミww】
【映画館の音響で聴くヒューガのツッコミ最高すぎる】
【劇場のウーファーが響いてて草】
スクリーンで始まったアニメ本編は、作画も音響も映画クオリティの超豪華仕様。
……にもかかわらず、内容はいつもの『みるくちューにゅう』そのものだった。
【劇中の名場面】
冒頭:超美麗作画で描かれる壮大な宇宙空間。そこに、作画コストを無駄使いした「ハイパーリアルなホールキャベツ」が浮遊してくる。
ヒューガ「宇宙の作画のクオリティにキャベツを合わせるな!! 映像美の無駄遣いか!!」
中盤:鳳凰院カグラと星空ルチアが映画オリジナル怪獣「メガ・タピオカ」を召喚し、東京タワーをなぎ倒す。
ヒューガ「映画だからって破壊のスケールを急に特撮レベルにするな!! 弁償できるのか!!」
クライマックス:天宮ミルクが巨大ロボ「ダイ・ミルクー」に乗り込み、地球に接近する大彗星に向かってキャベツタルトを射出。
ヒューガ「彗星をタルトで迎撃しようとするな!! 宇宙規模の奇食テロか!!」
豪華な劇伴音楽(劇伴BGM)と劇場用5.1chサラウンドの立体音響に乗せて放たれるヒューガの爆音ツッコミに、全米……ならぬ全国の映画館の観客が腹を抱えて大爆笑。
同時接続(ライブビューイング&配信)は55万人を突破。
ハッシュタグ #みるくちゅーにゅう映画 は世界トレンド1位を独走した。
舞台挨拶のラスト、天宮ミルクがスクリーン越しに客席を見渡しながら、嬉しそうに語りかけた。
「みなさん、今日は映画館まで観に来てくれてありがとうございました!……最初に日向くん……あ、ヒューガさんと出会った時は、まさかこんな大きなスクリーンでみんなと笑い合えるなんて思っていませんでした」
「天宮さん……」
「これからもミルクは、映画になっても、世界に行っても、ずっとヒューガさんの隣で一番面白いボケをし続けます! だからみんな、これからも『みるくちューにゅう』をよろしくね!」
万雷の拍手と歓声が映画館全体を包み込み、劇場版は大盛況のうちに幕を閉じた。
――終演後。都内映画館の屋上庭園。
映画館の喧騒を離れ、私服姿の駆とみずきは、夜空に浮かぶ綺麗な月を見上げていた。
みずきは温かい缶のいちごミルクを両手で持ちながら、ふふっと笑った。
「日向くん、映画館で自分の声が響くの、なんだか夢みたいでしたね」
「……ああ。スクリーンに映るお前のド天然を見て、全国の奴らが爆笑してるのは変な気分だったけどな」
駆は缶コーヒーのプルタブを開け、一口飲んでから夜空に向かって微笑んだ。
「でもまあ……スクリーンがどんなにデカくなっても、俺たちのやることは変わらんよ」
「えへへ、そうですね!……ねぇ日向くん、次はどこへ行きましょうか?」
みずきは駆の顔を覗き込み、悪戯っぽく目を輝かせた。
「月? 宇宙? それとも……もっと先の未来?」
駆は呆れたように肩をすくめ、力強く答えた。
「どこだって行ってやるよ。お前がボケて、俺がツッコむ。それがどこであろうと、そこが俺たちの特等席だ」
夜風が二人を包み込み、街の明かりが祝福するように輝く。
一つの「事故配信」から始まった奇跡の物語は、画面も、次元も、世界も飛び越えて。
最高の笑顔とツッコミと共に、未来へとどこまでも続いていく。




