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十九話

登録者数200万人突破の狂乱から1ヶ月。

フリーランスとして順風満帆な配信生活を送る駆のもとに、またしてもライブプロダクションから規格外のオファーが舞い込んだ。

『ヒューガ様。我が社の海外支部【ライブプロダクションEnglish】主催による、ロサンゼルスでの現地リアルオフイベントへのゲスト出演が決定いたしました』

「……ロサンゼルス!? アメリカですか!?」

自室で叫ぶ駆に、赤坂マネージャーは事もなげに頷く(※画面越しのボイス)。

『はい。海外勢のクリス様とシトラ様、そして天宮ミルク様と共に現地の特設ステージへ登壇していただきます。もちろん、渡航費・滞在費・【国際ツッコミ手当】はすべて弊社が負担いたします』

「ツッコミ手当のスケールがデカくなりすぎなんだよ!!」

こうして、日向駆(ヒューガ)と天宮ミルク(中の人:天野みずき)の二人は、太平洋を越えてアメリカ・ロサンゼルスへと飛ぶことになった。

――ロサンゼルス現地。大規模コンベンションセンター。

会場には、アメリカ全土から集まった1万人を超える熱狂的な海外VTuberファンが詰めかけていた。

楽屋で通訳スタッフと英語の打ち合わせをする駆。

その横では、私服姿のみずきが機内食で余ったパンをパクパクと食べている。

「天野、緊張とかないのか? 1万人だぞ、1万人」

「えへへ〜、ロサンゼルスのいちごミルク(ストロベリーミルク)がすごく美味しくて、緊張するの忘れちゃいました!」

「心臓に毛が生えすぎだろお前は……」

――そして、ステージ本番。

大歓声の中、巨大スクリーンに3D姿のヒューガ、天宮ミルク、クリス・ヴァルキリー、シトラ・ラマダンが映し出された。

『OHAYOU GOZAIMASU, LA——!!(おはよう、ロサンゼルス!)』

クリスの威勢の良い英語のアナウンスとともに、会場のボルテージは一気に最高潮へ達する。

「Hello, Los Angeles! 個人勢VTuberのヒューガです! 本日はよろしくお願いします!」

流暢な英語で挨拶を決める駆。

客席から『HYUGA—!』『BEST TSUKKOMI!(最高のツッコミ!)』と野太い歓声が上がった。

しかし、海外勢&ド天然Vが揃って平和に終わるはずがなかった。

トーク企画『日米Vカルチャー比較コーナー』でのこと。

クリスが自信満々に巨大なフリップを取り出した。

『我、日本の「素晴らしいおもてなし文化」を学ぶべく、現地のアメリカン・ファストフード店で「ツンデレ接客」を実践してきたぞ!』

「アメリカのバーガーショップでツンデレ接客すな!! 銃撃されても知らんぞ!!」

【wwwwwwwwwwww】

【LAでも即座に叩き落とされるボケww】

【英語圏の観客が大爆笑してる】

【TSUKKOMIは国境を超える】

さらにシトラが続く。

『私も〜! アメリカの広大な大地に敬意を表して、グランドキャニオンに向けて呪文を唱えてきました〜! “サムライ・タコス・ハリケーン〜♪”』

「ハリケーン起こすな!! 地球規模の災害を発生させるような呪文をグランドキャニオンで叫ぶな!!」

1万人の会場が腹を抱えて大爆笑。英語字幕スクリーンには、駆のツッコミが超高速で英訳され、現地のファンたちが手を叩いて拍手喝采を送っている。

そして極めつきは天宮ミルクだった。

「ヒューガさ〜ん! ミルク、本場のハリウッドに感化されて、新しい映画の企画を考えてきたんです!」

「映画? お前が監督するのか?」

「はい! タイトルは『全米が泣いた! キャベツタルト対巨大マグマ怪獣』です!」

「全米が泣く前に観客が激怒して返金求めてくるわ!! なんでハリウッドまできてキャベツタルトの悪夢を引きずってんだよ!!」

ドガーン!!(ステージ背景の演出花火が爆発)

【wwwwwwwwwwww】

【LAの会場が揺れてるwww】

【キャベツタルトハリウッド進出草】

【同接YouTubeと現地合わせて50万人突破!!】

配信の同時接続者数は、世界中からの視聴者を巻き込んで破竹の50万人を記録。

ロサンゼルスの会場は、万雷の歓声と大爆爆笑の渦に包まれたのだった。

――イベント終了後の夜。

ハリウッドの街並みを見渡せるホテルの屋上テラス。

夜風を浴びながら、駆は冷えた炭酸飲料を口に含んだ。

「……はぁ。本当に世界中どこに行っても、やることは変わらんな」

「ふふっ、お疲れ様です、日向くん!」

隣にやってきたみずきが、ストロベリーミルクのカップを手に笑いかけてきた。

「世界中の人たちが、日向くんのツッコミで笑ってましたね。ミルク、すっごく誇らしかったです」

「……お前らが滅茶苦茶なボケかますからだろ。まったく、寿命が5年縮んだわ」

駆は呆れたように頭を掻いたが、その口元には優しい微笑みが浮かんでいた。

言葉が違っても、国籍が違っても、生まれ育った環境が違っても。

目の前の「ボケ」を拾い、世界を笑顔に変える。

「ねぇ、日向くん。次は月で配信ですね!」

「宇宙に行く計画立てるな!! 宇宙服のヘルメットの中でボケられてもツッコめないだろ!!」

ロサンゼルスの夜空に、どこまでも響き渡る最高のツッコミ。

「世界一のツッコミ役」と「世界一のド天然」の物語は、地球を狭しと駆け巡りながら、どこまでも続いていく。

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