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100/153

百話

「高級温泉宿から即出禁になるわ!」という駆の至極まっとうな悲鳴がひがし茶屋街の夕空に溶けてから一夜。

ついに迎えた、連載第100話の記念すべき配信。

秋休み全国ロケツアー第3弾の舞台は、風情溢れる岐阜県・飛騨高山の奥奥飛騨温泉郷。天宮ミルクのチャンネルでは、ゆったりとした温泉湧き出るせせらぎの音と、雅でどこかドラマチックな和風オーケストラBGMとともに、前代未聞の超・大迫力生配信がスタートしていた。

タイトル:『【100話記念&重大発表】祝・100話! 飛騨高山・貸切露天風呂から生配信!? 100gの超高級飛騨牛&夜空を彩る100発のサプライズ打ち上げ花火!』

100話という不滅の大節目。チャンネル登録者数600万人超のリスナーたちは「100話おめでとうううう!!」「え、待って温泉配信!?」「浴衣ヒューガの破壊力えぐい」「混浴(?)配信とかV界の歴史動くだろww」と大狂乱で押し寄せ、配信開始わずか数分で同接数は前人未踏の220万人を軽々と突破していた。

【100話到達おめでとううううう!】

【部室から始まった物語がついに100話へ!!】

【※老舗高級温泉旅館の最上階・貸切露天風呂(足湯&特別テラス)を完封貸切しています】

【浴衣ヒューガ×湯上がり髪下ろし姿てぇてぇの限界突破】

――20時ジャスト。配信スタート。

画面に映し出されたのは、湯煙が幻想的に立ち上り、竹林と星空を望む老舗旅館の最上階・貸切露天風呂の特別テラス。温泉の足湯に浸かりながら、しっぽりと黒地の粋な浴衣を着崩し、普段のセットを解いた「湯上がり前髪下ろしスタイル」のヒューガと、可愛らしい桜柄の浴衣を羽織り、ほんのり頬を上気させた天宮ミルク(3D)が並んでいた。

「……みなさんこんばんは。個人勢VTuberのヒューガです。……画面をご覧ください。おかげさまで、このハチャメチャな配信も本日で『第100話』を迎えました。みなさんの応援に心から感謝いたします。……昨日の俺の激怒を受け、キャベツ湯は完全回避され、足湯テラスでの優雅な配信となりました。出禁にはなっていません。……ですが、湯上がりで頭がのぼせている天宮さんが、さっきから俺の浴衣の袖をずっと掴んで離してくれません。助けてください」

「こんミルク〜! 100話分の愛と感謝を込めて、世界一幸せな湯上がりをお届けする『温泉の姫君天宮』です〜!」

「勝手に温泉の姫君を名乗るな!! そして100話目だからって距離感がバグり散らかしてんだよ!! なんで俺の真横にぴったり密着して座ってんだ!! 湯加減よりお前の熱気で俺の体温が爆発しそうなんだよ!!」

【wwwwwwwwwwww】

【100話到達おめでとう!!】

【開幕0秒の湯上がり前髪下ろしヒューガに全リスナー死亡】

【袖掴み密着てぇてぇの最終兵器】

そこへ、記念すべき100話のお祝い(と無駄にハイテンションな冷やかし)を述べるべく、Discord経由で仲間たちがフルメンバーで接続してくる!

黒羽レン『……ヒューガさん、天宮さん、100話達成おめでとうございます。僕のデータ計算によれば、おふたりがこれまで起こしたボヤ・騒音・部室損壊の被害総額は780万円ですが、それによって生まれたリスナーの笑顔は測定不能の無限大です』

「被害総額のリアルな金額を100話のお祝いでぶち込んでくるな!! でも……まあ、ありがとなレン!」

鳳凰院カグラ『クックック……100話の節目を讃えよ! 我が魔界の宴『飛騨牛の極秘召喚』を執り行ってやったぞ!(※旅館の仲居さんがA5ランク飛騨牛の網焼きセットを運んでくる)』

「魔界の召喚じゃなくて普通に旅館の超豪華料理だろ魔王!! 感謝する!! 網焼きの匂いが最高すぎる!!」

星空ルチア『ヒューガ先輩! AIの100話記念解析データにより、全世界を感動の渦に包む最強の秘策が判明しました!「露天風呂に向かってふたりで『キャベツ愛してるぞー!』と叫んで絆を永遠にする」です!』

「最後くらいキャベツから離れろ!! 感動の雰囲気がギャグに上書きされるだろ!!」

【被害総額780万円草ww】

【仲居さんを召喚する魔王ww】

【同接前人未踏の250万人突破!!】

仲間たちの祝福を受け、極上のA5ランク飛騨牛を炭火で焼き上げ、あーんと互いに口へ運び合うふたり。肉汁の旨味と温泉の温もりに、心も体も解けていく。

そして、配信も終盤――。

湯煙の向こう、夜空を見上げるみずきが、ふと静かに、でも溢れ出るような想いを込めてマイクを握り直した。

「……ねえ、日向くん。100話ですよ? 最初は部室で、ミルクのわがままから始まった配信が……こんなに遠くまで来て、こんなにたくさんの人が見てくれて……」

「……そうだな。最初は『一回で打ち切りにしてやる』と思ってたのにな。気づけばお前の暴走につき合わされて、ここまで来ちまった」

みずきは浴衣の袖でぎゅっと駆の腕を抱きしめ、潤んだ瞳でまっすぐ駆を見つめた。

「日向くん……。ミルクをここまで連れてきてくれて……いつも隣で笑って、守ってくれて、本当にありがとうございます。……ミルクね、日向くんと出会えて、世界で一番幸せ者です!」

静まり返る夜の奥飛騨。

駆は真っ赤になった顔を隠さず、でも心底愛おしそうに柔らかく目を細めると、みずきの手を優しく握り返した。

「……バカ。俺をここまで連れてきたのは、お前だろ。……お前がどんなに暴走しても、どこへ行こうとも……俺がずっと、お前の隣でツッコミ続けてやるよ。101話目も、その先もずっとだ」

「……っ……日向くん……っ!」

二人の気持ちが通じ合ったその瞬間――!

ヒュ――――――――……ドンッ!!!!!

夜空を切り裂く轟音とともに、露天風呂の目の前、飛騨の夜空に一発の巨大な大輪の花火が打ち上がった!

赤、金、緑、そしてパステルカラーの光が夜空を染め上げる。天宮ミルクが密かに準備していた、『100話記念・100発の特注サプライズ打ち上げ花火』が開幕したのだった!

「わあぁぁぁ……! 日向くん、見てください! 花火です……!」

「……っ、お前、まさかこれ……!?」

「へへ……100話の記念に、日向くんへのプレゼントです!」

次々と夜空を咲き誇る100発の大輪の花火。その最後の100発目は、夜空いっぱいに広がる鮮やかな「巨大な緑のキャベツ型花火」!

「ぶはっ……!! 最後、キャベツ花火になってんじゃねぇか!!」

「あはは! 日向くん、100話目も、世界一大好きです〜!」

花火の光に照らされながら、弾けるような笑顔で駆の胸に飛び込むみずきと、参ったように笑いながらもしっかりと抱きとめる駆。

同接300万人を叩き出した画面には、画面が見えなくなるほどのスパチャの雨と、「100話おめでとう!!」「全人類大号泣」「てぇてぇの最高峰」「最高の100話」「ずっとついていくぞ!!」という祝福のコメントが地鳴りのように吹き荒れたのだった。

――配信終了後。花火の煙が夜空に消え、静寂を取り戻した貸切露天風呂のテラス。

浴衣の襟を整え、冷えた缶コーヒーを飲みながら満天の星空を見上げる駆。

「……ハぁ……。最後に特注花火まで打ち上げるなんて、相変わらず桁外れの暴走だったな……」

「ふふっ、日向くん、お疲れ様です!」

隣で桜柄の浴衣のまま、冷たい缶のいちごミルクを両手で持ち、幸せそうに駆の肩に頭を預けるみずき。

「日向くん……101話目からも、ミルクの隣にいてくれますか?」

駆は一口コーヒーを流し込み、預けられたみずきの頭にそっと自分の頭を寄り添わせると、満開の笑顔で優しく呟いた。

「当り前だろ。お前を一人で暴走させられるかよ。……これからもよろしくな、みずき」

みずきは嬉しそうに目を細めると、打ち上がったどの花火よりも眩しい、世界一の笑顔を咲かせた。

「はいっ! 日向くんと一緒なら、私たちの未来はどこまでも一番の快晴です!」

100話という壮大な節目を越えて、二人の絆は永遠の宝物へ。

舞台は飛騨高山から、さらなる101話目の新たな旅路と、変わらない部室の日常へ!

世界一のツッコミと世界一のド天然の物語は、どこまでも、どこまでも賑やかに未来へ続いていく――。

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