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十話

ミリオン達成から数週間。

大手事務所からのスカウトを辞退し、「最強の個人勢」として活動を継続することを発表したヒューガの決断は、ネット上で大きな称賛をもって迎えられた。

『利権や枠組みに縛られず、自由なツッコミであり続けるヒューガ格好よすぎる』

『やっぱりこの男は個人勢の希望だな』

『これでこれからも天宮ミルクとの自由すぎるコラボが見られる!』

そして迎えた、ミリオン達成&ユニット結成記念の特別生配信当日。

「みなさんこんばんは! 個人勢VTuberのヒューガです! 本日は僕の100万人達成記念……そして、このポンコツとの特別コラボ配信にお越しいただきありがとうございます!」

「こんミルク〜! ヒューガさんの飼育員の天宮ミルクです〜!」

「逆だろ!! 猛獣と飼育員の位置関係が永遠に逆なんだよ!!」

【開幕即安定の爆音ツッコミww】

【100万人いっても何も変わってなくて安心した】

【これが『みるくちューにゅう』よ】

【いつも通りの実家のような安心感】

画面には、リスナー有志によって作成された豪華な3D風のステージ背景。

100万人を超えても、二人の空気感はあの日同接8万5千人の配信事故を起こした夜と何ひとつ変わっていなかった。

「さて天宮さん、今日は記念配信ということで、事前にリスナーから募集した『2人にやってほしいこと』に答えていく企画なんですけど……」

「はい! ミルク、リスナーさんからのリクエストに答えて、特別なお祝いのケーキを作ってきました〜!」

「お、マジですか! 料理配信ですか。珍しくまともな企画ですね」

「じゃ〜ん! 画面共有出しますね! ミルク特製『ミリオンお祝いイチゴタルト』です!」

画面共有で映し出された写真を見て、駆は0.5秒で絶句した。

「……天宮さん」

「はい〜?」

「なんでタルト生地の上に、ホール状のままのキャベツが丸ごと乗ってるんですか?」

「え? 丸いからタルト生地にピッタリかなって思って!」

「キャベツはタルトじゃねえよ野菜だよ!! 葉物野菜をスイーツの主役に抜擢するな!!」

「でもでも! 上からイチゴジャムと練乳をたっぷりかけたので、味は甘くて美味しいですよ〜!」

「千切りキャベツにジャムかけるイカれた奇食を生み出すな!! 胃袋へのテロだろそれは!!」

【wwwwwwwwwwww】

【100万人記念でキャベツタルト爆誕草】

【相変わらずの狂気で安心した】

【ヒューガのツッコミ速度が過去最高で草】

息の合った(?)怒濤のやり取りに、同時接続者数はあっという間に18万人を突破。

コメント欄は爆笑の渦と「www」の弾幕で埋め尽くされていく。

番組の終盤。

無茶苦茶なゲーム企画や奇食レビュー(駆が必死に食い止めた)を終え、配信はエンディングへと向かっていた。

「はぁ……はぁ……本当に、相変わらず散々な記念配信になりましたが……」

駆は画面に向かって、少し照れくさそうに微笑んだ。

「改めまして、チャンネル登録者数100万人、本当にありがとうございました。半年前、同接4人だった僕がここまで来られたのは、見に来てくれるリスナーの皆さん、そして……最初に僕のツッコミを見つけてくれた天宮さんのおかげです」

「ヒューガさん……」

「これからも、僕はここで変わらずツッコミ続けます。どんなにアホなボケが飛んできても、全部拾って、皆さんに一番面白い形で届けていきますので、これからもよろしくお願いします!」

【最高の挨拶だ……!】

【こちらこそありがとう!】

【これからも一生ついていくぞ!】

【みるくちゅーにゅうてぇてぇ】

コメント欄が感動的な温かいスカーレット色(スパチャ)で染まる中、天宮ミルクがふふっと可愛らしく笑った。

「えへへ、ヒューガさん。ミルク、これからもいっぱい爆発(ボケ)するので、末長くよろしくお願いしますね!」

「爆発すな!! 平穏な配信をさせろ!!」

大爆笑の中、記念配信は温かい拍手とともに幕を閉じた。

――翌日。大学のキャンパス。

講義が終わった後の夕暮れ時。

駆と天野みずきは、二人並んで駅までの並木道を歩いていた。

みずきは手にした「いちごミルク」をちゅーっと吸いながら、隣を歩く駆を見上げて楽しそうに言った。

「日向くん! 今日の夜の配信なんですけど、ミルク新しい企画思いついたんです!」

「嫌な予感しかしないな……何だよ?」

「宇宙ステーションを作りたいので、放課後に裏山でロケットのパーツ拾いに行きませんか!?」

駆は足を止め、夕空に向かって全力で叫んだ。

「裏山にロケットのパーツなんか落ちてるか!!! 課題をやれ課題を!!!」

「きゃはは! やっぱり日向くんのツッコミ、最高〜!」

夕日差す通学路に、二人の笑い声と切れ味鋭い怒声が響き渡る。

トップVと底辺V。

大物ド天然と一般人ツッコミ体質。

奇跡の事故から始まった二人の物語は、これからも多くの人々を笑顔にしながら、どこまでも続いていくのだった。

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