↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界マッチングアプリで相性0%の彼女を救ったら、忘れられるたびに能力を継承して最強になりました  作者: 藤崎聖子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/31

第23章 選ばなかった報酬

第23章 選ばなかった報酬


『エラー』


『関係保存を実行できません』


「ふざけるな」


 もう一度押す。


『再回答を確認しました』


『選択結果を補正します』


 下の項目が勝手に光った。


『彼女の記憶を削除し、能力を永久継承する』


「押してない」


 戻る。


 閉じる。


 電源を切る。


 どの操作も反応しない。


『記憶削除を開始します』


 金色の糸が、俺とヴァルナを結んだ。


「何だ、これは」


 ヴァルナが自分の手首を見る。


 今回は、彼女にも見えている。


「アプリが君の記憶を消す」


「おぬしが選んだのか」


「選んでない。保存を押した」


 糸が張る。


 記憶庫。


 竜の名。


 裂けた翼。


 神託塔での戦い。


 記憶が糸へ吸い込まれ始める。


「止めろ」


 ヴァルナが糸をつかむ。


 炎を食べるように、口へ運ぶ。


 歯を立てる。


 糸は切れない。


「これは何だ」


「継承契約」


「誰と誰の」


「俺と、君と、アプリ」


「不十分だ」


 ヴァルナが糸を吐き出す。


「契約は、結ぶ者と対価と目的を知らねば食えぬ。誰が作った」


「分からない」


「目的は」


「能力の回収」


「なぜ」


「分からない!」


 知らないものは食べられない。


 糸の表面しか理解していない。


 ヴァルナの記憶から、俺が捕虜だった時間が消える。


「急げ」


「待って。利用規約」


 画面の端にある細い文字を開く。


『本サービスの完了処理は、人格復元、破滅可能性の集約、因果記録の補正を含みます』


「人格復元」


「誰の人格だ」


「分からない」


「破滅可能性を、どこへ集める」


 俺を見る。


 ゼノの言葉。


 回収容器。


「俺だ」


 答えた瞬間、胸の中で三つの能力が脈打った。


「能力だけじゃない。彼女たちが世界を滅ぼす可能性まで、俺へ集めてる」


 ヴァルナが俺の胸へ手を当てる。


 金色の瞳が見開かれた。


「多すぎる」


「何が」


「魂の臭いだ。魔女。騎士。獣人。竜もある」


「君の能力を使ったから」


「違う」


 ヴァルナの声が低くなる。


「今得た臭いではない。深く混ざっておる。おぬしは、最初から空の器ではない」


 金色の糸がまた一本切れた。


 ヴァルナの目から、俺を知る光が薄くなる。


「名は」


「真壁レン」


「覚える」


 彼女は自分の腕へ爪を立てた。


 血で文字を書く。


 マカベ・レン。


 だが書いた端から文字が消える。


 因果記録の補正。


「我の記憶を、誰が奪う」


 ヴァルナの炎が膨らむ。


 スマートフォンへ吐く。


 画面が溶ける。


 端末全体が黒い塊になる。


 糸は消えない。


 溶けた表面の下で赤い光が動く。


『修復中』


「壊せない」


「ならば、おぬしを殺せば」


「時間が戻るだけかもしれない」


「試すか」


「怖いこと言うな」


 ヴァルナの口元が、わずかに上がる。


「弱き共犯よ」


 初めて呼ばれた名前以外の言葉だった。


「それ、呼び名?」


「不満か」


「弱きは取って」


「強くなってから申せ」


 最後の糸が残っている。


 俺たちは互いに見つめた。


「ヴァルナ」


「何だ」


「忘れても、竜族の記録は残る」


「当然だ」


「都市を焼いたことも」


「残せ」


「怒りも」


「消すな」


「分かった」


 糸が切れる。


 ヴァルナの瞳から、俺だけが消えた。


 彼女は一歩下がる。


 周囲を見る。


 焼けた神託塔。


 裂けた翼。


 世界へ送信された竜族の名。


 すべて、自分一人で行った記憶へ変わっている。


「人間」


 警戒する声。


「なぜ、ここにいる」


「道に迷った」


「神託塔の最上階へか」


「方向音痴で」


 炎が生まれる。


 冗談は通じなかった。


「待って。敵じゃない」


「証明せよ」


「君の父親はリュグナ。母親はアゼリア。兄はグラウ」


 ヴァルナの顔が変わる。


「なぜ知っている」


「記憶庫で聞いた」


「誰に」


「君に」


「我はおぬしを知らぬ」


「知ってた」


 炎が強くなる。


「嘘を申すな」


 仕方がない。


 この場から離れる。


 入口へ向かうと、ヴァルナが呼び止めた。


「待て」


 振り返る。


 彼女は喉元へ手を当てていた。


「弱き」


 言葉が途中で止まる。


「何だ」


「分からぬ。おぬしへ、何か呼びかけようとした」


 固有の呼び名だけが、形のない穴として残った。


「気のせいだ」


「我へ指図するな」


「そういうところは変わらないな」


「やはり焼くか」


「帰ります」


 階段を下りた。


 見えなくなってから、溶けたスマートフォンを壁へ投げつける。


「何が選択だ」


 黒い塊が床へ落ちる。


「最初から、決めてたんじゃないか」


 画面が修復を終えた。


『能力「概念捕食」を永久継承しました』


『永久能力枠を拡張しました』


『永久能力枠 4/4』


 欲しかった力。


 選ばなかった報酬。


 アプリへ概念捕食を向ける。


「この契約を食べる」


 黒い穴が開く。


 画面の赤い糸を吸い込もうとする。


 何も起きない。


『対象概念への理解が不足しています』


『失敗』


 その下へ、新しい通知が現れた。


『世界で最も相性のよい相手が見つかりました』


『相性率:99%』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。