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白き天使と金色の竜眼Ⅰ  作者: 蒼空れっど
第四章 学年別対抗戦編
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第76話 読み合い

「僕たちから動こう!」


 ユウの声を合図に、四人が一斉に散った。


 今度は待たない。


「リリア!」


「任せて!」


 杖先がカイルへ向く。


「風よ、背を押して――《追風》!」


 背後から吹きつけた風が、カイルの身体を押し出した。


「おおっ!」


 一気に速度を上げる。


 だが、向かった先はアレンではない。


「セリア!」


「えっ?」


「炎よ、刃に宿れ――《火纏》!」


 木剣を炎が包む。


 セリアが咄嗟に杖を構えた。


「大地よ、道を分かて――《岩路》!」


 地面がせり上がる。


 カイルは止まらない。


 岩の手前で踏み切った。


「ユウ!」


「うん!」


 ユウが《光障壁》を唱える。


 斜めに展開された光の板へ、カイルが足をかけた。


 そのまま、さらに高く跳ぶ。


「上!?」


 セリアが顔を上げる。


 炎を纏った木剣が振り下ろされる――その前に。


 カンッ!


 別の木剣が割り込んだ。


「やっぱり来るか!」


 カイルが笑う。


 割り込んだのは、アレンだった。


「そこまで読んでた?」


「いや。でも、来てくれたなら好都合だ」


 二人の剣が離れる。


 その瞬間、ユウが叫んだ。


「リリア、今!」


「うん!」


 杖がルークへ向く。


「流れし水よ、我が意に従い、ここに集いて形を成せ――《水球》!」


「俺?」


 ルークが横へ跳ぶ。


 水球は外れた。


 だが、リリアは追わない。


 水が地面へ弾ける。


「エステル!」


「はい!」


「氷よ、足場を閉ざせ――《氷床》!」


 濡れた地面を白い氷が一気に走った。


「うわっ!」


 着地したルークの靴が滑る。


 すぐに体勢を立て直したものの、《雷歩》で踏み込める場所が狭くなった。


「そういうことか……!」


 ルークが地面を見る。


 狙ったのは本人ではない。


 速さを支える足場だった。


「これなら――」


 リリアが言いかける。


「まだ!」


 ユウが声を上げた。


「大地よ、道を分かて――《岩路》!」


 セリアの魔法。


 凍った地面を割るように、岩の道が隆起した。


「あ」


 その上へルークが飛び乗る。


「助かった!」


「走れるなら行って!」


「もちろん!」


「雷よ、その身を駆けよ――《雷歩》!」


 雷光が岩の上を駆けた。


「エステル!」


 ルークが迫る。


 エステルが杖を上げるより早く、ユウが《光障壁》を唱えた。


 光の板が、その前へ滑り込む。


 ルークは踏み込みを止める。


「またそれか!」


 だが、拳を打ち込まない。


 身体を低くし、その脇を抜けようとする。


 ユウは障壁を動かした。


 進路を塞ぐ。


 ルークも向きを変える。


 右。


 左。


 さらに右。


「っ……!」


 ユウも追う。


「ユウさん、後ろです!」


 エステルの声。


 振り向く間もなく、水が足元へ迫っていた。


「流れる水よ、その足を捕らえよ――《水帯》!」


 ディンだ。


 避ければ、ルークへの障壁が外れる。


 ユウの判断がわずかに揺れた。


 そこへ、駆け戻ってきたカイルが割り込んだ。


「こっちは任せろ!」


 炎を纏った木剣が《水帯》を横から薙ぎ、流れを散らした。


「ありがとう!」


「いいから前!」


「うん!」


 再びルークへ意識を戻す。


 だが。


 もういない。


「え?」


「上だよ」


 声がした。


 ルークが宙にいた。


 足元には、小さな半透明の板。


 アレンが使っていたものと同じ、魔力の足場。


「ルークも……?」


「アレンに教わったんだよ!」


 板を蹴り、頭上から飛び込んでくる。


「集いし光よ、我らを包み、守りの環となれ――《光護陣》!」


 淡い光が広がった。


 ユウとエステルを包むように、光の守りが立ち上がる。


 ルークの攻撃がぶつかる。


 鈍い音。


 光が揺れた。


「中級……!」


 ルークの目が見開かれる。


「今です!」


 エステルの杖が動く。


「凍てつく氷よ、道を閉ざせ――《氷列》!」


「うおっ!」


 ルークは空中に新たな魔力板を作り、それを蹴った。


 身体が強引に横へ流れる。


 氷柱がそのすぐ脇を伸びていく。


 着地。


 数歩下がる。


「危な……!」


 そこへ、詠唱を終えたリリアの《風弾》が飛ぶ。


「まだ来るのかよ!」


 ルークが慌てて身を伏せた。


     ◇


 攻めている。


 今度は確かに、こちらが流れを作っている。


 けれど。


「簡単には崩れないね」


 ユウが息を整える。


 カイルが隣へ戻ってきた。


「そりゃ決勝まで残ってる連中だからな」


「うん」


 少し離れた場所では、アレンたちも再び四人の距離を整えていた。


 氷で足場を奪えば、セリアが道を作る。


 一人を狙えば、アレンが間に入る。


 ルークを止めても、ディンの魔法が別方向から届く。


 こちらが仕掛けても、即座に形を変えてくる。


 一方で、それはこちらも同じだった。


 アレンがユウを見る。


「途中で狙いを変えたね」


「うん」


「最初からセリアを倒すつもりじゃなかった?」


「途中までは、そのつもりだったよ」


 アレンがきょとんと目を瞬かせる。


 それから、小さく笑った。


「……そっか」


 ユウも笑う。


「先を読まれるなら、途中で変えればいいかなって」


「それ、読む方は大変なんだけど」


「僕たちも大変だよ」


「だろうね」


 アレンが木剣を握り直し、ユウも杖を構えた。


 互いの次を読み、先回りして連携をつなぐアレンたち。


 相手の反応を見ながら、その場で手を組み替えていくユウたち。


 どちらかが一方的に押しているわけではない。


 だからこそ。


 次の一手が、勝負を大きく動かす。


「カイル」


「ああ」


「リリア」


「いつでも!」


「エステル」


「はい」


 向こうでも、アレンが仲間へ短く何かを伝えていた。


 八人が再び構える。


 観客席のざわめきが大きくなる。


 決勝は、さらに熱を帯びていった。


 誰も気づいていなかった。


 実技場の片隅。


 大会用の器具に紛れて置かれた箱。


 その内側に刻まれた術式の一部が――ほんの一瞬だけ、淡い光を帯びていた。

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