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白き天使と金色の竜眼Ⅰ  作者: 蒼空れっど
第四章 学年別対抗戦編
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第74話 決勝の相手

 掲示板の決勝欄には、ユウたちの班名だけが先に記されていた。


 その向かい側は、まだ空いている。


 準決勝を終えたユウたちは観戦場所へ戻り、その空白を埋める試合を待っていた。


「本当に決勝まで来たんだな」


 カイルが掲示板を見上げる。


「何回確認するの?」


 リリアが笑った。


「何回見ても決勝は決勝だろ」


 ユウも椅子へ腰を下ろし、ゆっくり息を整える。


 身体にはまだ疲れが残っているが、決勝までは時間がある。


「ユウさん、大丈夫ですか?」


「うん。少し休めば平気だよ」


 エステルへ答えたところで、教師の声が響いた。


「次の準決勝を行います。アレン・クロイス班、試合区域へ!」


「あっ」


 アレン。


 セリア。


 ルーク。


 ディン。


 四人が並んで入っていく。


「来たな」


 カイルも座り直した。


 対戦相手の四人が反対側から姿を現す。


 前衛が二人。その後ろに杖を持った二人。


「どっちが来ると思う?」


 リリアに聞かれ、ユウは首を横に振った。


「分からない。でも、ちゃんと見たい」


「アレンたちを?」


「うん。四回戦の時とは、また違う動きをするかもしれないから」


 教師が両班を確認する。


「――始め!」


 開始と同時に、前衛の一人がアレンへ飛び込んだ。


 もう一人は正面からぶつからず、ルークとディンの間を切るように斜めへ走る。


 その後ろで詠唱が始まった。


「大地よ、我が意に応え、ここに隆起して壁を成せ――《土壁》!」


 地面が盛り上がる。


 低い土壁が、アレンとセリアたちの間へ伸びた。


「分けるつもりだ!」


 リリアが声を上げる。


 さらに反対側から風の詠唱が続く。


「巡る風よ、我が意に従い、ここに集いて前へ押し流せ――《風押》!」


 風がルークへぶつかり、二歩ほど外側へ押し出した。


 一瞬で四人の距離が広がる。


「連携を切るつもりか」


 カイルが呟く。


 ユウも同じことを考えていた。


 アレンたちは、誰かが困る前に次の位置へ動く。


 なら最初から、助けに入れないほど離してしまえばいい。


 相手の前衛がアレンへ剣を振るう。


 アレンは受け流したが、すぐ横には土壁がある。


 反対側ではもう一人の前衛がルークを押さえ、セリアもすぐには壁の向こうへ回れない。


「これ、まずくない?」


「はい。動ける場所を分けられています」


 エステルが答える。


 その時。


 アレンが一度だけ土壁へ目を向けた。


 相手の斬撃を半歩下がってかわし、短い詠唱を終える。


 足元に、小さな魔力の板が現れた。


「……あれ」


 ユウは思わず身を乗り出す。


 斜めに傾いた板。


 アレンはそこへ足を乗せ、強く蹴った。


 身体が斜め上へ跳ぶ。


「えっ!?」


 リリアが目を見開いた。


 アレンは低い土壁を越え、その向こう側へ着地する。


 ユウには見覚えがあった。


 灰牙狼との戦い方を話した日の午後。


 《光障壁》を足場にした話を聞いたアレンが、授業前に何度も試していた方法だった。


「できるようになったんだ……」


 思わず笑みがこぼれる。


 だが、試合はまだ続いていた。


 アレンを追って前衛が壁を回ろうとした瞬間、セリアが杖を向ける。


「大地よ、道を分かて――《岩路》!」


 低い岩の隆起が斜めに走り、追ってきた生徒の進路を変える。


 そこへディンが《水帯》を唱えた。


 細い水の流れが足元へ絡みつき、踏み込みを鈍らせる。


 その時には、ルークも動いていた。


「雷よ、その身を駆けよ――《雷歩》!」


 足元を雷光が走る。


 一気に距離を詰め、相手の逃げ道へ回った。


 前にはアレン。


 横には岩の隆起。


 反対側にはルーク。


 相手は空いている後方へ下がり――白い線を越えた。


「一名、場外!」


 歓声が上がる。


「分けられたのに……逆に囲んだ」


 リリアが呟いた。


 ユウは頷く。


 元の形へ戻したわけではない。


 アレンが壁を越えた場所から、そのまま新しい形を作った。


 けれど、相手も準決勝まで勝ち残った班だった。


 残った三人はすぐに狙いを変える。


 後衛の生徒が再び《風押》を唱えた。


 吹きつけた風にセリアが一歩押し戻され、その隙へ前衛が一気に距離を詰める。


「セリア!」


 ルークが向き直った時には遅い。


 セリアは攻撃を避けながら後退し、白い線を越えた。


「セリア・ノルヴァ、場外!」


「一人やられた!」


 カイルが声を上げる。


 三対三。


 それでも、アレンたちは止まらなかった。


 セリアがいた場所を埋めるようにディンが横へ動く。


 ルークは少し後ろへ下がり、アレンが前へ出た。


「形を変えた……」


 ユウが呟く。


 一人減った瞬間には、もう三人で戦う位置へ変わっている。


 そこからの試合は長かった。


 魔法が何度も交差する。


 アレンの木剣が相手の前衛とぶつかり、ルークが左右を走る。


 ディンは無理に攻めず、二人が動ける場所を残し続けた。


 やがて相手の一人が場外へ出る。


 もう一人もアレンとの打ち合いの末に降参した。


 最後の生徒が周囲を見回し、静かに杖を下ろす。


「……降参します」


「試合終了! 勝者――アレン・クロイス班!」


 大きな拍手が実技場を満たした。


「決まったね」


 リリアが言う。


「うん」


 アレンたちは敗れた四人と短く言葉を交わしてから、こちらへ戻ってきた。


「ユウ」


「アレン、おめでとう!」


「ありがとう。ユウたちも」


 アレンが少し笑う。


「決勝で会えたね」


「うん!」


 胸の奥が高鳴った。


 強い相手と戦うから、というだけではない。


 アレンが何をするのか。


 自分たちがどこまでできるのか。


 それを実際に戦って確かめられる。


「さっきの足場、できるようになったんだね」


「ああ。まだ角度は直したいけど」


「準決勝で使っておいて、まだ直すの?」


「もっとやりやすくできると思う」


 変わらない答えに、ユウは笑った。


 その横で、掲示板の紙が新しく貼り替えられる。


 決勝。


 ユウ・リシェル班。


 対する名前は――アレン・クロイス班。


「次で最後だな」


 カイルが言った。


 ユウは二つの名前を見上げる。


 入学してから、何度も話してきた相手。


 戦い方を見て、学んできた相手。


 今度は、見るだけではない。


「うん」


 ユウは小さく拳を握った。


「絶対、いい試合にしよう」


 決勝の組み合わせが、ついに決まった。

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