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白き天使と金色の竜眼Ⅰ  作者: 蒼空れっど
第四章 学年別対抗戦編
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第71話 残る強者たち

 四回戦を終えたあと、ユウたちは試合区域から離れ、実技場の端にある待機場所へ戻っていた。


「疲れた……」


 椅子へ腰を下ろしたカイルが、大きく息を吐く。


「カイル、途中から見てただけじゃん」


「最初に場外になったからこそ悔しいんだよ」


「そっち?」


 リリアが呆れたように返した。


 その隣で、エステルがユウへ目を向ける。


「ユウさんは大丈夫ですか?」


「うん」


 答えてから、自分の手を見る。


 痛みがあるわけではない。


 ただ、何度も《光障壁》を使ったせいか、身体の奥にまだ重さが残っていた。


「ちょっと疲れてるけど、休めば大丈夫だと思う」


「最後の方、かなりきつそうだったよな」


 カイルが言う。


「うん。たぶん、あのあと何回も同じことはできなかったと思う」


「危なかったね……」


 リリアが改めて息を吐いた。


 エリオたちの連携は、事前に見ていた以上だった。


 一人が動けば、別の誰かが補う。


 助けに入ろうとすれば、その動きまで止められる。


 最後に突破口を見つけられなければ、結果は逆だったかもしれない。


「でも、強かったですね」


 エステルが言う。


「うん。すごく強かった」


 ユウも素直に頷いた。


 その時、試合区域の方から次の班を呼ぶ声が聞こえた。


「アレン・クロイス班、試合区域へ!」


「あ」


 ユウが顔を上げる。


「アレンたちだ」


「見るか?」


 カイルはそう言いながら、もう立ち上がっていた。


「休んでなくていいの?」


「座って見るから大丈夫」


「休む人が一番先に立たないでよ」


 リリアの言葉に、カイルは聞こえないふりをした。


 四人は観戦できる場所へ移動した。


     ◇


 試合区域には、すでに八人が向かい合っていた。


 アレン。


 セリア。


 ルーク。


 ディン。


 向かい側も、ここまで勝ち残ってきた四人だ。


「始め!」


 教師の声が響く。


 最初に飛び出したのは相手の前衛だった。


 アレンへ向かって真っ直ぐ距離を詰める。


 だが、アレンはすぐには動かなかった。


「来るよ」


 短い一言。


 それだけで、セリアが一歩横へ移る。


 ルークも反対側へ。


 ディンは二人の間を埋める位置へ下がった。


「……前にも、あんな感じだったよね」


 リリアが呟く。


「うん」


 ユウは試合から目を離さない。


 一回戦でも、アレンたちはほとんど声を掛け合わずに動いていた。


 互いに次の行動を分かっているように見えた。


 けれど――。


「前より速い」


「そうなの?」


「うん。迷う時間がほとんどない」


 相手の後衛が詠唱へ入る。


 その時には、セリアはもう射線から外れていた。


 詠唱を終えて放たれた魔法が、誰もいない場所を抜けていく。


 空いたところへルークが踏み込んだ。


 相手もすぐに援護へ入る。


 ルークの進路が塞がれた。


 けれど、その時にはディンが別方向から動いている。


 ディンが杖を向けると、相手の後衛がそちらへ反応して一歩下がった。


 その瞬間、ルークの正面から援護が薄くなる。


 ルークは迷わず前へ出た。


 アレンが相手の木剣を受け流した。


 その背後から、別の生徒がアレンへ迫る。


 けれど、アレンは振り返らない。


 セリアがすでに二人の間へ入っていた。


 アレンはそのまま次の相手へ踏み込む。


「……振り返らないんですね」


 エステルが静かに言った。


 アレンは背後をセリアに任せ、そのまま前へ進んでいる。


 セリアの横ではルークが空いた位置へ回り、ディンも後方から杖を構え直していた。


 四人の位置が次々に入れ替わる。


 相手が進もうとした場所には、その時にはもう別の一人がいた。


 しばらくして、相手の一人が場外へ出る。


 四対三。


 それでもアレン班の動きは変わらなかった。


 人数が有利になったからといって無理に攻めない。


 少しずつ立つ場所を奪い、相手が動ける範囲を狭めていく。


 やがて二人目が降参。


 残った二人も粘ったが、一人が場外となり、最後の一人が杖を下ろした。


「……降参します」


「試合終了!」


 教師が腕を上げる。


「勝者――アレン・クロイス班!」


 観戦席から拍手が上がった。


「強いな……」


 カイルが呟く。


「エリオたちとは全然違うね」


 リリアも試合区域を見つめている。


「うん」


 ユウはアレンたち四人を目で追った。


「一回戦の時より、もっと揃ってた」


「アレンが?」


「ううん」


 首を横に振る。


「四人とも」


     ◇


 四回戦がすべて終わった頃、掲示板が更新された。


 残っている名前は四班だけだった。


「これで……次は準決勝か」


 カイルが言う。


 ユウたちの班。


 アレンたちの班。


 そして、残る二班。


 組み合わせも、その横へ新しく貼り出されていた。


 リリアが先に見つける。


「あ」


「どうしたの?」


「アレンたちとは……別だよ」


 ユウも掲示板を確認した。


 自分たちの次の相手は、別の班。


 アレン班も反対側の組み合わせに入っている。


「じゃあ、当たるとしたら」


 カイルが口元を上げた。


「決勝だな」


 ユウの視線が、アレン班の名前に止まる。


 さっきの試合が頭に浮かんだ。


 けれど、まだそこまで進めると決まったわけではない。


「まずは次だね」


「そうですね」


 エステルが頷いた。


     ◇


 その頃。


 人の少なくなった校舎の別棟で、一人の生徒が小さな箱を両手に抱えていた。


「ここだったかな……」


 手にした紙と、壁際の棚を見比べる。


 指定された場所はここで間違いない。


 生徒は棚の下へ箱を置くと、紙に書かれた一つの項目に、小さく印をつけた。


「これで、ここも終わり……っと」


 何のために必要なのかまでは聞いていない。


 対抗戦で使用する補助器具だと、それだけ説明されていた。


 紙には、ほかにもいくつか場所が記されていた。


 生徒はそれを折り畳み、制服のポケットへしまった。


 やがて足音が遠ざかっていく。


 棚の奥には、置かれたばかりの箱だけが残っていた。

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