第68話 四回戦の相手
三回戦を終えた日の午後。
ユウたちは、更新された掲示板の前に集まっていた。
勝ち残った班の名前は、さらに少なくなっていた。
「四回戦の組み合わせ、出たみたいだね」
リリアが上から順に名前を追う。
カイルも隣から掲示板を覗き込んだ。
「俺たちは……ここか」
指先が、一つの組み合わせで止まる。
ユウ・リシェル班。
その向かいに書かれていた名前を読み、ユウは目を瞬いた。
「エリオたちだ」
「本当に当たりましたね」
エステルも確認する。
二回戦を終えたあと、エリオは言っていた。
このまま勝てば、どこかで当たるかもしれない、と。
それが思っていたより早く実現した。
「面白そうじゃん」
カイルが笑う。
「前に試合見た時、かなり連携よかっただろ?」
「うん」
ユウも覚えている。
エリオが前で相手を止める。
マナが水で攻撃を弱める。
ユリスが土魔法で立ち位置を制限し、フェナが風で仲間の動きを助ける。
誰か一人だけが突出していたわけではない。
困った場所へ、別の誰かがすぐに入る。
四人の動きが途切れにくい班だった。
「カイルは気をつけた方がいいかも」
「俺?」
「マナさんが水魔法を使うから。火を正面からぶつけると、前の試合みたいに弱められるかもしれない」
「あー……確かにな」
カイルが腕を組む。
「なら火だけに頼らなきゃいい」
「それがいいと思います」
エステルが頷いた。
「ユリスさんの土魔法も厄介ですね。地形を変えられると、私たちの位置を分けられる可能性があります」
「今日みたいに?」
リリアが尋ねる。
「はい」
今日の三回戦では、《土壁》によってユウだけが一時的に切り離された。
同じことをもう一度されるとは限らない。
けれど、似た状況への備えはできる。
「フェナの風もあるよね」
リリアが続ける。
「エリオの動きを速くしたり、相手を押し返したりできるし」
「全部繋がってるんだね」
ユウが呟いた。
四人を一人ずつ考えると、それぞれの役割は分かりやすい。
けれど、一緒に動かれると別の強さになる。
カイルが尋ねる。
「で、どうする?」
「うーん……」
ユウはしばらく掲示板を眺めた。
相手の連携が強いなら、一人だけを無理に狙っても、残りの誰かが助けに入る。
それなら――。
「助けに入る動きを見た方がいいかも」
「どういうこと?」
「誰かが困った時に、誰がどこから助けるのか。前の試合でも、それがすごく速かったから」
リリアが首を傾げる。
「そこを止める?」
「できそうなら。でも、最初から決めつけない方がいいと思う」
実際に戦えば、前に見た時とは違う動きをするかもしれない。
向こうにも、こちらの戦い方は知られている。
「じゃあ結局、ちゃんと相手を見るってことだな」
カイルの言葉に、ユウは頷いた。
「うん。それが一番だと思う」
「ユウさんらしいですね」
エステルが小さく微笑んだ。
◇
「ほんとに当たったね」
マナの声に、四人が振り返る。
エリオたちが掲示板へ向かってくるところだった。
マナは組み合わせを確認すると、リリアたちへ顔を向けた。
「さっき見てびっくりしたよ」
「私たちも」
リリアが答えた。
その後ろからフェナも顔を出す。
「今度は相手なんだ」
「負けないからな」
カイルが言うと、フェナがすぐに笑った。
「こっちだって」
「ちょっと、試合は明日だからね」
マナが苦笑する。
ユリスは掲示板を確認してから、エリオへ目を向けた。
「相手が決まったなら、今日は早めに休んだ方がいいんじゃないか?」
「そうだね」
エリオが頷く。
それからユウへ視線を向けた。
「この前言った通りになったな」
「うん」
「明日はよろしく」
「こちらこそ」
短く言葉を交わす。
特別な緊張感はなかった。
これまで普通に言葉を交わしていた相手と、明日は試合をする。
それだけだった。
◇
翌朝。
実技場には、前日までとは違う静けさがあった。
勝ち残った班が減った分、一つ一つの試合へ向けられる視線も増えている。
ユウたちは試合区域へ入った。
向かい側から、エリオ、マナ、ユリス、フェナが歩いてくる。
エリオは木剣。
三人は杖。
先日の試合で見た時と同じ布陣だ。
「双方、前へ」
教師の指示で、八人が所定の位置につく。
カイルが木剣を握る。
リリアとエステルが杖を構えた。
ユウも相手の四人へ意識を向ける。
誰が最初に動くのか。
誰が、その動きを助けるのか。
前に見た試合と同じとは限らない。
「双方、準備はいいですね」
教師が確認する。
「はい」
両班から返事が重なった。
教師が腕を上げる。
「それでは――」
一瞬、実技場が静まった。
「始め!」
地面を蹴ったのは、エリオだった。
同時にフェナの杖も持ち上がる。
ユウは二人の動きを追いながら、すぐに次の一手へ意識を切り替えた。




