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白き天使と金色の竜眼Ⅰ  作者: 蒼空れっど
第四章 学年別対抗戦編
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第67話 三回戦

 翌朝。


 実技場へ入ったユウは、最初に掲示板へ目を向けた。


「昨日より、ずいぶん減ったね」


 勝ち残った班の名前だけが、前日より広く間を空けて並んでいる。


「そりゃ二回戦まで終わったからな」


 カイルが肩を回しながら答えた。


 リリアは名前を追い、すぐに二つを見つける。


「アレンたちも、エリオたちも残ってる」


「本当だ」


 ユウも確認してから、自分たちの対戦相手へ視線を移す。


 ダリオ・フェルト班。


 名前に覚えはあったが、これまで試合をじっくり観戦したことはない。


「昨日の二回戦まで勝ち残った班です。油断はできませんね」


 エステルの言葉に、三人が頷いた。


     ◇


 試合区域へ入ると、向かい側の四人もすでに準備を始めていた。


 前に木剣を持ったダリオ。


 後ろには杖を持ったミレナ、セナ、ハルが並ぶ。


 開始前、ダリオがユウを見て笑った。


「昨日の二回戦、見てたよ」


「僕たちの試合ですか?」


「ああ。光魔法で周りを助けてただろ」


 悪意のある言い方ではなかった。


「だから、自由にさせない方がいいって話してたんだ」


「……僕を?」


「そういうこと。よろしく」


「はい。よろしくお願いします」


 ユウも素直に答えた。


 教師が八人を見回す。


「双方、準備はいいですね」


 杖と木剣が構えられる。


「――始め!」


 最初に動いたのはミレナだった。


「大地よ、我が意に応え、ここに隆起して壁を成せ――《土壁》!」


 地面が揺れ、ユウと仲間たちを隔てるように土の壁がせり上がる。


「ユウ!」


 リリアの声が壁の向こうから聞こえた。


 直後、右側からセナの詠唱が響く。


「巡る風よ、我が意に従い、ここに集いて前へ押し流せ――《風押》!」


「っ!」


 強い風が身体へぶつかった。


 踏ん張ったものの、数歩横へ押し流される。


 その先へダリオが走り込んできた。


 最初から狙いは決まっていたらしい。


 振り下ろされた木剣を見て、すぐに《光障壁》を唱える。


 小さな光の壁が刃を受け止めた。


「やっぱり速いな」


 ダリオは止まらない。


 一歩下がり、角度を変えてもう一度踏み込んでくる。


 障壁をずらしながら受ける。


 攻撃そのものは見える。


 けれど、土壁に遮られた向こう側までは見通せない。


「カイルたちは……」


 言いかけた時、ダリオの木剣が横から迫った。


 その間へ、淡い光が滑り込む。


「集いし光よ、我が意に従い、ここに巡りて隔てとなれ――《光障壁》!」


 剣が光へぶつかった。


「エステル!」


 土壁の端を回り込んできたエステルが杖を向けている。


「こちらは私も受け持ちます。ユウさんだけで守る必要はありません」


「……うん。ありがとう!」


 その一瞬、ダリオの視線がエステルへ動いた。


 さらに壁の向こうからカイルの声が響く。


「ユウばっか見てる場合かよ!」


「炎よ、刃に宿れ――《火纏》!」


 薄い炎をまとった木剣が、セナの前へ迫る。


「ちょっ――!」


 セナが慌てて後退した。


 ハルが援護しようと杖を向ける。


「燃え立つ炎よ、我が意に従い、ここに集いて矢を成せ――《火矢》!」


 細い炎の矢がカイルへ飛ぶ。


「流れし水よ、我が意に従い、ここに集いて形を成せ――《水球》!」


 横から飛び込んだ水球が火矢とぶつかり、白い蒸気を散らした。


「助かった、リリア!」


「前見て!」


 カイルが蒸気の横を抜ける。


 相手がユウへ意識を集めたぶん、三人への圧力が弱くなっていた。


「ミレナ、壁を――」


 ダリオが叫ぶ。


 ミレナが再び杖を地面へ向ける。


 だが、その前にリリアが動いた。


「今度はこっち!」


 もう一つの《水球》がミレナの足元で弾ける。


 大きな威力はない。


 それでも、濡れた地面に足を取られ、構えが崩れた。


 追加の壁は出ない。


「ユウ!」


「うん!」


 その隙に、エステルとともに土壁の端を回る。


 四人が再び並んだ。


 さっきまでとは逆に、相手の方が陣形を崩している。


「右、来ます!」


 エステルが先に声を上げた。


「セナは俺が押さえる!」


 カイルが続く。


「じゃあ、私はミレナ!」


 リリアもすぐに動いた。


 三人が迷わず動き始めたことに、思わず目を丸くする。


 もう、全部を自分が決める必要はない。


 ダリオがこちらへ踏み込んでくる。


 進路へ小さな《光障壁》を斜めに展開した。


「うわっ」


 避けようとした足が止まる。


 そこへカイルが回り込んだ。


 木剣同士がぶつかる。


 押し負けたダリオが一歩、二歩と下がり――そのまま試合区域の線を越えた。


「ダリオ・フェルト、場外!」


 四対三。


 そこから大きく流れは変わった。


 残った三人も粘ったが、やがて一人が降参し、最後の二人も場外となった。


「試合終了!」


 教師が腕を上げる。


「勝者――ユウ・リシェル班!」


「よし!」


 カイルが木剣を持ち上げる。


 場外に出ていたダリオが、仲間たちと一緒に戻ってきた。


「まいったな。ユウを離せば、もう少し崩せると思ったんだけど」


「かなり効きました。あのままだったら危なかったです」


 ダリオの視線がリリアたちへ移った。


「でも、三人ともすぐ動いてきた。あれは読めなかったよ」


「ユウだけが戦ってるわけじゃないからね」


 リリアが胸を張る。


「それはよく分かった」


 ダリオは木剣を肩へ乗せた。


「次は負けないからな」


「はい。またお願いします」


 ユウが答えると、ダリオたちは軽く手を上げて試合区域を離れていった。


 息を吐きながら、リリアたちへ目を向ける。


「最初、僕だけ離された時はちょっと焦った」


「見てれば分かったよ」


 リリアが楽しそうに返す。


「今までユウに守ってもらってたんだから、たまにはこっちが守らないとね」


「たまに、なんですか?」


 エステルが首を傾げる。


「そこは言い方の問題!」


 カイルが吹き出した。


 ユウもつられて笑った。


     ◇


 午後。


 三回戦の結果が掲示板へ追加されていた。


 アレン班。


 エリオ班。


 そしてユウたちの班。


 三班の名前は、まだそこに残っている。


     ◇


 同じ頃。


 実技場から離れた校舎の一角で、一人の生徒が小さな箱を抱えていた。


「ここでいいんだよね」


 頼まれた場所をもう一度確かめ、壁際に並んだ備品の隙間へ箱を置く。


 対抗戦で使う補助器具だと聞いていた。


 置き終えると、生徒はそのまま廊下を戻っていった。


 箱は、ほかの備品に紛れ、外からはほとんど見分けがつかなかった。

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