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白き天使と金色の竜眼Ⅰ  作者: 蒼空れっど
第四章 学年別対抗戦編
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第65話 勝ち残る班

 二回戦を終えたユウたちは、再び試合区域の外へ戻った。


「今度は一回戦より動けたな」


 カイルが満足そうに言う。


「途中からだけどね」


 リリアが答える。


「相手の動きを見てから、すぐ別の手へ切り替えられたのはよかったと思います」


 エステルも試合区域へ目を向けた。


「うん。次も同じようにいくとは限らないけど、最初から一つに決めすぎない方がよさそうだね」


 ユウが頷く。


 その時、試合場では次の班が呼ばれていた。


「エリオ・ヴァンス、マナ・セルフィ、ユリス・カーデン、フェナ・ルミア」


「次の試合みたいだね」


 ユウがそちらを見る。


 四人の生徒が並んで試合区域へ入っていった。


 一人は剣を持った黒髪の少年。


 その後ろに杖を持った女子生徒が二人と、男子生徒が一人。


「あの班、一回戦勝ってたのは覚えてる」


 カイルが言う。


「見てたの?」


「最後だけな。結構まとまってたぞ」


 ユウたちもその場に残り、試合を見ることにした。


     ◇


「双方、準備はいいですね」


 教師が八人を確認する。


「――始め!」


 最初に動いたのは相手班だった。


 二人の前衛が同時に駆ける。


 エリオもすぐに前へ出たが、一人を受け止めるだけで、もう一人は横を抜けていく。


「フェナ!」


「分かってる!」


 杖が前へ向いた。


「風よ、背を押して――《追風》!」


 初級魔法《追風》。


 淡い風がエリオの背後から吹き抜ける。


 踏み込む速度が一気に増した。


 エリオは目の前の相手と一度だけ剣を合わせると、その力を横へ流し、そのままもう一人の進路へ回り込んだ。


「行かせないよ」


 二人目の剣を受け止める。


「一人で二人止めた」


 リリアが目を丸くした。


「でも、長くは持たないと思います」


 エステルの言葉通り、二人を同時に相手にしたエリオは少しずつ押され始めた。


 その後方で、相手の女子生徒が杖を向ける。


「燃え立つ炎よ、我が意に従い、ここに集いて矢を成せ――《火矢》!」


 初級魔法《火矢》。


 細く鋭い炎が放たれる。


「マナ!」


「うん!」


 杖が横へ払われる。


「水よ、薄き壁となれ――《水膜》!」


 初級魔法《水膜》。


 薄い水の幕が広がり、飛んできた火矢を包み込む。


 じゅっ、と音を立てて炎が消えた。


 だが、その横では別の生徒がすでに詠唱を終えようとしていた。


「巡る風よ、我が意に従い、ここに集いて弾を成せ――《風弾》!」


 初級魔法《風弾》。


 圧縮された風が、水膜の横を抜けて飛ぶ。


 狙いはフェナだった。


「危な――」


 フェナが避ける。


 しかし、下がった先は試合区域の端に近い。


 そこへ相手の前衛が一人、エリオから離れて追いかけた。


「フェナ!」


「大丈夫!」


 そう答えながらも、後ろへ下がれる距離は少ない。


 相手が剣を構えて踏み込む。


 その瞬間。


「大地よ、我が意に応え、ここに石を連ねて弧を成し、隔てとなれ――《石環》!」


 ユリスが杖を地面へ突きつけた。


 中級魔法《石環》。


 フェナの前に半円状の石壁がせり上がり、相手との間を遮った。


「うわっ!」


 前衛が慌てて止まる。


「今だよ!」


 フェナが石壁の横から杖を伸ばす。


「巡る風よ、我が意に従い、ここに集いて前へ押し流せ――《風押》!」


 初級魔法《風押》。


 強い風が吹きつけた。


 相手は後方へ押される。


 その頃には、エリオも残った一人の剣を受け流して距離を取り、フェナの方へ回り込んでいた。


 相手の剣へ木剣を当て、外側へ流す。


 相手の体勢が崩れた。


「そっち!」


 エリオの声。


 マナがすぐに反応する。


「水よ、流れよ――《水輪》!」


 初級魔法《水輪》。


 円を描くような水流が足元を横切り、踏み直そうとした足をさらに外へ滑らせる。


 そのまま身体全体が試合区域の外へ出た。


「一名、場外!」


「うまい……」


 ユウは思わず呟いた。


 誰か一人が特別に強いというより、困った場所へすぐ別の誰かが入っている。


 その後も試合は続いた。


 エリオが前で相手の一人を押さえる。


 マナが水で魔法を弱め、ユリスが土で動く場所を狭める。


 フェナの風が、その間を繋いでいく。


 しばらくして二人目が降参。


 残った二人も粘ったが、最後には一人が場外となり、もう一人が杖を下ろした。


「試合終了!」


 教師が腕を上げる。


「勝者――エリオ・ヴァンス班!」


 拍手が起こった。


 エリオは剣を下ろすと、すぐに場外となった相手へ歩いていった。


「大丈夫?」


「ああ。ちょっと尻打っただけ」


「ならよかった」


 差し出された手を、相手が掴む。


 その後ろでは、フェナがユリスの肩を軽く叩いていた。


「さっき助かったよ」


「端まで下がるからだろ」


「避けるしかなかったんだから仕方ないじゃん」


「次は気をつけて」


「はーい」


 マナが二人の間で苦笑している。


「仲良さそうだね」


 リリアが言った。


「うん」


 ユウも頷いた。


     ◇


 試合を終えた四人が戻ってくる途中、ユウたちの前を通った。


 マナが足を止める。


「あ、さっきの光魔法の子」


「僕?」


「うん。《光護陣》、すごかったね」


「ありがとう」


「三人まとめて守ってたでしょ。あんなふうに広く守れるんだね」


「うん。うまく防げてよかったよ」


 マナが笑った。


 少し後ろにいたエリオも足を止めた。


「二回戦突破、おめでとう」


「そっちも!」


 ユウが答える。


「このまま勝ったら、どこかで当たるかもしれないね」


「その時はよろしく」


「ああ。お互い頑張ろう」


 短く言葉を交わし、エリオたちは仲間と一緒に離れていった。


 少し先では、またフェナとユリスが何か言い合い、マナが二人を宥めている。


 エリオもその会話へ加わった。


 四人のやり取りを見て、ユウもつられて笑った。


 その日の二回戦がすべて終わる頃には、外の空も少しずつ夕方の色へ変わり始めていた。


「本日の対抗戦はここまでです」


 教師の声に、生徒たちが前を見る。


「三回戦は明日の朝から行います。勝ち残っている班は、遅れないよう集合してください」


「明日か」


 カイルが掲示板を見る。


 そこには、次へ進んだ班の名前が並んでいた。


 ユウたち。


 アレンたち。


 そして、先ほど戦っていたエリオたちの名前も、その中に残っていた。

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