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白き天使と金色の竜眼Ⅰ  作者: 蒼空れっど
第四章 学年別対抗戦編
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第61話 一回戦

 試合区域の中央を挟み、二つの班が向かい合う。


 ロイドは木剣。


 その後ろではナディアとシアが杖を構え、離れた位置にいるバルトも地面へ杖先を向けていた。


「双方、準備はいいですね」


 教師の声に、八人が頷く。


 カイルが木剣を握り直した。


 リリアとエステルが左右へ開き、ユウは二人の後ろへ立つ。


「それでは――始め!」


 カイルが地面を蹴った。


 同時にロイドも駆け出す。


 だが、ロイドの後方からシアの声が飛んだ。


「風よ、その足を運べ――《風走》!」


 中級魔法《風走》。


 淡い風がロイドの足元を包んだ瞬間、その速度が一段上がる。


「速っ――」


 カイルが木剣を構える。


 直後、二本の剣が激しくぶつかった。


 その後ろで、ナディアが詠唱へ入る。


「燃え立つ炎よ、我が意に従い、ここに集いて矢を成せ――《火矢》!」


 杖先から、細く鋭い炎が飛び出す。


 初級魔法《火矢》。


 《火球》より小さい。


 その代わり、速い。


「集いし光よ、我が意に従い、ここに巡りて隔てとなれ――《光障壁》!」


 火矢の前へ光の壁を展開する。


 炎が突き刺さり、弾けた。


 役目を終えた障壁も、淡い光となって消える。


「ありがとう!」


 リリアが杖を構えようとした、その足元で土が動く。


「大地よ、せり上がれ――《石柱》!」


 初級魔法《石柱》。


 地面から短い石柱が次々とせり上がった。


「きゃっ!」


 リリアが慌てて横へ跳ぶ。


 攻撃そのものより、立つ場所を奪うための魔法らしい。


 その先を待っていたように、シアが杖を向ける。


「巡る風よ、我が意に従い、ここに集いて弾を成せ――《風弾》!」


 初級魔法《風弾》。


 圧縮された風がリリアへ飛ぶ。


「リリア!」


 軌道は見えていた。


 すぐに先ほどと同じ《光障壁》を唱え、小さな光の壁を斜めに展開した。


 風弾が光へぶつかり、横へ逸れていく。


 障壁はそのまま薄れて消えた。


「助かった!」


「うん。でも――」


 周囲を確認する。


 正面ではカイルとロイド。


 左にはナディア。


 右からはシア。


 さらにバルトが足元へ魔法を仕掛けてくる。


 一体の魔物へ四人で向かっていた遠征とは、まるで違う。


「見るところが多い……!」


 その時、バルトがユウを指した。


「あの子だ! 先に動きを止めよう!」


 ナディアとシアの視線が同時に向けられる。


 二人が揃って詠唱へ入った。


 先ほどと同じ《火矢》。


 そして《風弾》。


 二方向から、炎と風が放たれる。


 火矢へ向き直り、再び《光障壁》を唱えた。


 光の壁が現れ、炎の矢を受け止める。


 だが、右から風弾が迫る。


「集いし光よ、我が意に従い、ここに巡りて隔てとなれ――《光障壁》!」


 別の声とともに、右側へ光の壁が現れた。


 風弾が弾ける。


「エステル!」


「こちらは任せてください」


 杖を向けていたエステルが答える。


「ユウさんはカイルを見てください」


「うん!」


 炎と風が消えると、二枚の障壁もそれぞれ薄れて消えた。


 全部を一人で守る必要はない。


 すぐに前へ意識を戻す。


 カイルは《風走》で速さを増したロイドに押され、次第に位置を下げていた。


 その横では、バルトが再び杖を地面へ向け、詠唱を始めている。


「カイル、右!」


「分かった!」


「大地よ、我が意に応え、ここに岩壁を三方に隆起させ、囲いとなれ――《岩囲》!」


 中級魔法《岩囲》。


 カイルの周囲へ、低い岩壁が三方向からせり上がる。


 岩壁が立ち上がりきる前に、ユウが《光障壁》を唱えた。


 小さな光の板を、カイルの足元から岩壁を越えるように斜め上へ伸ばす。


 カイルはそれを見た瞬間、駆け出した。


 片足を障壁へ乗せ、そのまま大きく跳ぶ。


 役目を終えた光障壁が、その足元で薄れて消える。


「なにっ!」


 岩壁を越えたカイルが、ロイドの横へ着地する。


「炎よ、刃に宿れ――《火纏》!」


 初級魔法《火纏》。


 木剣そのものを燃やすのではなく、薄い炎が刃の周囲を包んだ。


 ロイドが反射的に距離を取る。


「リリア!」


「任せて!」


 リリアが杖を向けた。


「巡る風よ、絡みつけ――《風縛》!」


 中級魔法《風縛》。


 ロイドの周囲で風が渦巻き、足運びを乱す。


「くっ……!」


 それでも横へ逃れようとした先へ、冷気が走った。


「凍てつく氷よ、道を閉ざせ――《氷列》!」


 中級魔法《氷列》。


 エステルの前から細い氷柱がいくつも並んで伸び、ロイドの進路を塞いだ。


 前にはカイル。


 横には氷。


 背後は、試合区域の端。


「しまっ――」


 ロイドが踏み止まろうとする。


 しかし風に足を取られ、そのまま身体全体が試合区域の外へ出た。


「そこまで!」


 教師が手を上げる。


「ロイド・ハーゼン、場外!」


「よし!」


 カイルが木剣を構え直した。


 四対三。


 だが、残った三人はすぐには崩れなかった。


「まだです!」


 ナディアが杖を両手で握る。


 周囲の熱が、急に強くなった。


「燃え盛る炎よ、我が前に輪を描け――《炎環》!」


 中級魔法《炎環》。


 ナディアの正面に炎が大きな弧を描き、そのままユウたちへ向かって広がっていく。


「これ、避けるだけじゃ――!」


 リリアが後ろへ下がる。


 炎は相手を直接狙うのではなく、四人をまとめて押し返そうとしていた。


 このまま下がれば、自分たちの方が場外へ近づく。


「エステル!」


「はい!」


 《光障壁》を唱え、前方へ光の壁を展開する。


 炎環が光へぶつかる。


 広い。


 全部を正面から受ければ、魔力を使いすぎる。


 障壁を斜めに傾けた。


 炎が光の表面を左右へ流れていく。


「凍てつけ――《氷幕》!」


 中級魔法《氷幕》。


 エステルが広げた薄い氷の幕へ、逸れた炎が触れる。


 白い蒸気が一気に広がった。


 炎が途切れたところで、障壁を消す。


「今!」


 カイルが蒸気の中へ駆け込む。


 リリアも反対側から動いた。


 短い時間に何度も障壁を使ったせいか、身体の奥に重さを感じる。


 まだ動ける。


 けれど、同じように防ぎ続ける余裕はない。


 蒸気が晴れた時には、カイルの木剣がバルトの前で止まっていた。


「……降参だ」


「バルト・ノルド、降参!」


 残り二人。


 シアは《風走》で距離を取りながら、再び《風弾》を詠唱して放つ。


 圧縮された風が迫る。


 けれど、今度はリリアも風の流れを読んでいた。


 《風縛》を唱え、シアの動きを鈍らせる。


 そこへエステルも《氷列》を発動し、進路を狭めた。


 最後はカイルに追われ、そのまま場外となった。


 残ったナディアが、三人の仲間を見る。


 そして杖をゆっくり下ろした。


「……降参します」


 一瞬の静寂のあと、教師が手を上げる。


「試合終了!」


 四人がそちらを向いた。


「勝者――ユウ・リシェル班!」


「勝った!」


 カイルの声が、実技場に響いた。


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