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白き天使と金色の竜眼Ⅰ  作者: 蒼空れっど
第四章 学年別対抗戦編
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第60話 一回戦の相手

 掲示板の前には、まだ多くの生徒が集まっていた。


「ロイド・ハーゼン、ナディア・アルノ、バルト・ノルド、シア・エルメ……か」


 カイルが隣の枠を上から順に読み上げる。


「同じクラスの人はいないね」


 リリアが首を傾げた。


「別のクラスなのでしょう」


 エステルは周囲へ目を向ける。


 実技場のあちこちでは、対戦する班の姿を探している生徒たちがいた。


「顔が分からないと、探しようがないな」


「でも、一人だけ見たことあるかも」


 リリアが名前の一つを指差す。


「ナディアって人。前の合同実技で、火の魔法を使ってた気がする」


「どんな魔法だった?」


「うーん……そこまでは覚えてないかな。離れたところから見ただけだし」


「そっか」


 ユウは四つの名前を見直した。


 得られた情報だけでは、相手の戦い方までは読めない。


 なら、不確かな予想を重ねるより、自分たちの動きを確認しておく方がいい。


「まずは僕たちがどう動くか決めようよ」


「そうだな」


 四人は掲示板から離れた。


「俺が前に出るのは、いつも通りでいいよな?」


「うん。でも、今回は魔物じゃなくて人だから」


 ユウは試合区域に引かれた境界線を見る。


「無理に倒そうとしなくてもいいと思う。端まで追い込めたら、場外にできるし」


「ああ、さっき説明してたやつか」


「カイルが前で揺さぶって、私たちが横から魔法を使えば、逃げる方向を絞れるかもしれないね」


 リリアが言うと、エステルも頷いた。


「逆に、私たちが狙われた時は、基本はユウさんに守ってもらう形ですね」


「うん。できるだけみんなを見るようにするよ」


 ユウが答えると、カイルが腕を組んだ。


「でも、向こうも四人いるだろ? 思ったより忙しそうだな」


「だから、最初から全部決めなくてもいいんじゃない?」


「え?」


「向こうがどう動くか分からないから。始まってから合わせた方がいいところもあると思う」


 エステルが静かに頷く。


「私もそれがいいと思います。まずは位置を崩さないことを優先しましょう」


「よし。じゃあそれでいくか」


     ◇


 しばらくすると、生徒たちは試合区域の周囲へ移動させられた。


 中央の試合区域には、最初に戦う二班が入っていく。


「俺たちじゃないのか」


「僕たちは、まだみたいだね」


 ユウたちも観戦する生徒に交じり、区域の外側へ並んだ。


 向かい合うのは、それぞれ四人。


 剣を持つ者もいれば、杖を構える者もいる。


 中央に立った教師が左右を確認した。


「双方、準備はいいですね」


 八人が構える。


「――始め!」


 合図と同時に、木剣を持った男子生徒が正面へ駆け出した。


 その後ろで、杖を構えた女子生徒が詠唱する。


「燃え立つ炎よ、我が意に従い、ここに集いて球を成せ――《火球》!」


 杖先に集まった赤い光が、炎の球となって放たれる。


 初級魔法《火球》。


 迎え撃とうと前へ出ていた相手の男子が、横へ身をかわした。


 だが、その回避先を読んでいたように、別の生徒が杖先を地面へ向ける。


「大地よ、我が意に応え、ここに隆起して壁を成せ――《土壁》!」


 初級魔法《土壁》。


 低い音とともに地面が盛り上がり、避けた先へ膝ほどの壁がせり上がった。


「うわっ!」


 進路を塞がれ、足が止まる。


 そこへ木剣を構えた男子が一気に距離を詰めた。


 攻撃を受け止めた相手は、その勢いに押されて後ろへ下がっていく。


「あ」


 ユウが声を漏らした。


 さらに一歩。


 押し込まれた生徒は勢いを止めきれず、そのまま区域の外へ出た。


「そこまで!」


 教師の声が飛んだ。


「一名、場外!」


「早っ」


 カイルが目を丸くする。


 始まってから、まだほとんど時間は経っていない。


「魔法で倒したわけじゃなかったね」


 リリアが言った。


「逃げる場所をなくしたんだ」


 ユウは攻防から目を離さずに答える。


 《火球》を避けさせ、《土壁》で動ける方向を絞り、最後は前衛が押し込む。


 一つ一つは、特別な動きではない。


 けれど三人が続けて動いたことで、立て直す隙を与えなかった。


「なるほどな……」


 カイルも気づいたらしい。


「さっきユウが言ってたの、ああいう感じか」


「うん。でも、僕たちが同じことをしたら、見ていた班も警戒すると思う」


「そりゃそうか」


 試合はそのまま続いた。


 最初の離脱者が出たことで、人数は四対三になった。


 劣勢になった班は互いを守ろうとして動ける範囲が狭くなり、ほどなく二人目も場外へ追い出される。


 残った二人も粘ったが、一度傾いた流れを取り戻せない。


 やがて最後の一人まで離脱し、勝敗が決まった。


「試合終了!」


 教師が勝利した班の側へ手を上げる。


 周囲から拍手と歓声が上がった。


 ユウも手を叩きながら、今の攻防を頭の中でなぞる。


 一人抜けるだけで、その後の動き方まで変わってしまう。


「最初が大事そうですね」


 エステルが静かに言った。


「うん」


 その時、進行役の教師が手元の紙を確認する。


「次の試合に出る班は、準備してください」


 いくつかの名前が呼ばれた。


 そして――。


「ユウ・リシェル、リリア・フェルナ、カイル・フェルド、エステル・ヴァレイン」


「来た!」


 カイルが一歩進み出る。


 三人も続き、試合区域へ向かった。


 反対側からも、四人の生徒が歩いてくる。


 掲示板に名のあった、ロイドたちだ。


 ユウは仲間を振り返った。


「行こう」


「ああ」


 カイルが応じる。


 リリアも小さく頷き、エステルは杖を握り直した。


 四人は境界線の内側へ足を踏み入れた。


 向かい側でも、ロイドたちがそれぞれの武器を構え始めていた。

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