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白き天使と金色の竜眼Ⅰ  作者: 蒼空れっど
第四章 学年別対抗戦編
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第59話 対抗戦の幕開け

 世界樹遠征から戻って四日目。


 一年生の生徒たちは、朝から学院の実技場へ集められていた。


 普段ならいくつもの班に分かれて使う広い場所も、今日は中央が大きく空けられている。


 学院からは、遠征後の心身の状態に応じて、休養や出場辞退も選べると伝えられていた。


 ユウたちも、それを聞いたうえで参加を決めていた。


「やっぱり一年生全員だと多いな」


 カイルが周囲を見回した。


「別のクラスの人もいるからね」


 リリアの隣で、ユウも辺りを見る。


 知っている顔もいれば、ほとんど話したことのない生徒もいる。


 少し離れた場所には、アレン、セリア、ルーク、ディンの四人も並んでいた。


「あ、アレン」


 ユウが気づくと、向こうもこちらを見た。


 アレンが軽く手を上げる。


 ユウも同じように返した。


「もしアレンたちと当たったら、どうなるんだろうね」


「気が早くないか?」


 カイルが言う。


「まだ組み合わせも分からないよ」


「でも、遠征では一緒だったでしょ? 今度は相手になるかもしれないから」


「確かに、少し気になりますね」


 エステルもアレンたちへ視線を向けた。


 やがて実技場の前方へ、クラリスを含む数人の教師が並ぶ。


 ざわついていた生徒たちも、少しずつ静かになった。


「それでは、学年別対抗戦について説明します」


 クラリスの声が実技場へ響いた。


「以前にも伝えましたが、この対抗戦は個人の強さだけを競うものではありません」


 黒板へ、大きく文字が書かれる。


『四人班対抗』


「普段の授業で組んでいる四人班を一組として参加してもらいます」


「やっぱり四人なんだ」


 リリアが小さく言った。


 ユウも黒板を見る。


 カイルは前衛。


 リリアは水と風。


 エステルは氷。


 そして自分は、光魔法による防御と補助。


 世界樹の遠征でも、四人それぞれのできることを何度も考えてきた。


「対抗戦は、四人班によるトーナメント形式で行います」


 教師の一人が大きな紙を広げた。


 いくつもの枠が枝分かれするようにつながっている。


「一度敗れた班は、その時点で対抗戦終了です。勝利した班は次の試合へ進み、最後まで勝ち残った班が優勝となります」


 実技場のあちこちから声が上がった。


「一回負けたら終わりか」


「緊張しそう……」


「勝敗はどう決めるんですか?」


 一人の生徒が手を上げる。


「試合では、一人ずつ離脱判定を行います」


 黒板へ三つの言葉が加えられた。


『戦闘続行不能』


『降参』


『場外』


「このいずれかに該当した生徒は、その試合から離脱となります。一度離脱した生徒は、その試合へ戻ることはできません。そして四人全員が離脱した班の敗北です」


「場外は、どこからですか?」


「身体全体が試合区域の外へ出た時点で離脱となります」


 カイルがすぐに実技場の線を見る。


「じゃあ、倒さなくても外に出せばいいのか」


「そういうことだね」


 ユウも頷く。


 一人を倒す。


 降参させる。


 場外へ出す。


 相手を傷つけることだけが、勝つための方法ではないらしい。


「また、教師がこれ以上の戦闘は危険だと判断した生徒については、戦闘続行不能として離脱させることがあります」


 クラリスは生徒たちを見渡した。


「対抗戦は授業の一環です。勝利を目的として、相手へ重大な怪我を負わせるような行為は認めません」


 使用する武器は、学院が用意した訓練用のもの。


 剣や槍、杖などは試合前に教師の確認を受ける。


 そして、魔法の使用も認められていた。


「魔法なら、何を使ってもいいんですか?」


 別の生徒が尋ねる。


「基本的には構いません。ただし、教師が危険性が高いと判断したものについては、使用を止める場合があります」


 魔法には、術式の難度や必要な魔力によって階級がある。


 学院で教わるのは、初級、中級、上級、最上級――そして、ほんのわずかに極級まで。


 もっとも、一年生が実際に扱う魔法のほとんどは初級か中級だった。


「階級が高ければ有利、ってわけでもないのかな」


 カイルが小声で言う。


「発動するまでに時間がかかれば、その間に攻撃されますからね」


 エステルが答えた。


「それに、当たらなかったら意味ないもんね」


 リリアも続ける。


 ユウは三人の話を聞きながら、遠征で見た戦いを思い出した。


「遠征の時と一緒だね」


「ん?」


「同じ魔法でも、人によって使い方が違ったでしょ?」


 強い魔法を使えるだけで決まるわけではない。


 いつ使うのか。


 誰を狙うのか。


 仲間とどう合わせるのか。


「……考えること多そうだな」


 カイルが黒板を見ながら呟いた。


「だから四人班なんじゃない?」


「なるほどな」


     ◇


 一通りの説明が終わると、教師たちが実技場の端から大きな掲示板を運んできた。


「来た!」


 カイルがすぐに身を乗り出す。


「まだ前に行かないでください」


 エステルに止められ、カイルは足を戻した。


 掲示板には、大きなトーナメント表が描かれている。


 今度はそれぞれの枠に、四人ずつ生徒の名前が並んでいた。


「それでは、対戦組み合わせを発表します」


 クラリスの言葉と同時に、生徒たちの視線が一斉に掲示板へ向いた。


 ユウも上から順番に名前を追っていく。


「僕たちは……」


「あったよ」


 リリアが一か所を指差した。


 そこには四人の名前が並んでいる。


 ユウ・リシェル。


 リリア・フェルナ。


 カイル・フェルド。


 エステル・ヴァレイン。


「ここか」


 カイルが、その隣の枠へ視線を移す。


 一回戦。


 そこにも、別の四人の名前が並んでいた。


「知ってる人いる?」


 リリアが尋ねる。


 カイルとエステルが、そろって首を横に振る。


 ユウも四つの名前を上から順に見ていった。


「僕も、たぶん初めてだよ」


 最初の相手は、誰も知らない四人だった。

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