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白き天使と金色の竜眼Ⅰ  作者: 蒼空れっど
第三章 学院遠征編
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第49話 それぞれの戦い方

 次の樹甲蜥蜴が見つかったのは、観察を再開してからしばらく後だった。


 先ほどと同じように、ガレスとマルクが先に周囲を調べる。


 個体は一体。


 近くに新しい足跡はなく、周囲にも十分な広さがある。


「問題ありません」


 マルクが戻ってきた。


「次は、アレンさんたちの班に担当してもらいます」


「分かりました」


 アレン、セリア、ルーク、ディンの四人が前へ出る。


 相手は、先ほど自分たちが戦ったものと同じ種類の樹甲蜥蜴だ。


 背中は硬い。


 腹側と首の下が柔らかい。


 攻撃は突進と尾。


 条件が似ているからこそ、戦い方の違いも分かりやすい。


 離れた場所から、四人が動き出すのを待った。


 ――アレンは、どうするんだろう。


 以前、学院で話した時、今度はアレンの戦い方を見せてもらう約束をしていた。


「さっきと同じように倒す?」


 ルークが尋ねる。


「それでもいけると思う。でも、俺たちには氷魔法を使える人がいない」


 アレンはすぐに答えた。


「だから、ひっくり返すことにはこだわらない」


「首の下を狙うんですね」


 セリアが確認する。


「うん。ただ、そのまま近づけば尾を使われる。まず動ける方向を減らしたい」


「なら、私がやります」


 セリアが杖を構えた。


「俺は?」


「ルークは正面から注意を引いて。ディンは足元をお願い」


「分かった」


「了解」


 短いやり取りだった。


 誰が何をするのか。それだけを決めた。


「俺は、首の下が開いた時に行く」


     ◇


 最初に動いたのはセリアだった。


 地面へ杖先を向け、詠唱する。


「大地よ、我が意に応え、ここに隆起して壁を成せ――《土壁》!」


 低い音とともに、地面が二か所で盛り上がった。


 樹甲蜥蜴の左右に、低い土壁が一つずつ。


 完全に閉じ込めるほど高くはない。ただ、横へ動ける幅が狭くなっている。


 ――なるほど。


 逃げ道をなくすのではなく、動ける方向を絞ったのだ。


「こっちだ!」


 ルークが正面へ出た。


 樹甲蜥蜴が顔を上げ、低く唸る。


 ルークは後ろへ下がりながら詠唱を始めた。


 次の瞬間、樹甲蜥蜴が地面を蹴る。


 狙いはルーク。


 左右には土壁。進めるのは、ほとんど正面だけだ。


「ディン!」


「分かってる」


 杖先が地面へ向く。


「流れる水よ、その足をさらえ――《流水》!」


 初級魔法《流水》。


 地面を這う水が樹甲蜥蜴の前脚へ向かって走った。


 濡れた土を踏み込んだ瞬間、脚の力がわずかに横へ逃げる。


 止まったわけではない。


 けれど、突進の勢いが一瞬だけ鈍った。


 その間にルークが横へ跳ぶ。


 続けていた詠唱を結んだ。


「奔る雷よ、我が意に従い、ここに集いて一瞬の光を放て――《雷閃》!」


 初級魔法《雷閃》。


 短い雷が樹甲蜥蜴の顔の横を走る。


 直撃させるためではない。


 突然の光と音に、樹甲蜥蜴が反射的に頭を上げた。


 首の下が露出する。


 その瞬間、アレンが踏み込んだ。


 ――速い。


 けれど、ガレスの剣の時とは違う。


 踏み込み、身体を低くし、剣を抜く。


 途切れずにつながる一連の動きを、きちんと追うことができた。


 一閃。


 刃が、露出した首の下を正確に通る。


 アレンは足を止めず、尾が届く範囲から離れた。


 樹甲蜥蜴が二歩進み、前脚から崩れるように地面へ倒れた。


「近づくな」


 ガレスの声に、四人がすぐ距離を取る。


 代わりにガレスが近づき、状態を確かめた。


「討伐完了」


     ◇


「早かった……」


 リリアが呟いた。


 自分たちは、突進を逸らし、脚を止め、横倒しにしてから腹側を狙った。


 アレンたちは違う。


 横倒しにする必要そのものをなくした。


 セリアが動ける方向を狭める。


 ディンが踏み込みを鈍らせる。


 ルークが頭を上げさせる。


 そこへアレンが入る。


 全部が、次の一手につながっていた。


「アレン、一人で倒すのかと思ってた」


 戻ってきたアレンに声をかける。


「どうして?」


「アレンって、できることが多いから」


「たぶん、一人でも対処はできたと思う」


 アレンは倒れた樹甲蜥蜴へ顔を向けた。


「でも、その分時間がかかるし、失敗する可能性も増える」


 一拍置いて、三人の仲間を見る。


「四人いるなら、四人でやった方がいい」


「うん」


 使える魔法も、得意なことも違う。


 同じ種類の魔獣でも、自分たちとはまるで違う倒し方になった。


「どうだった?」


 ガレスがアレンたちへ尋ねる。


「予定通りではありました。ただ、ディンの水で思ったより踏み込みが落ちました。もう少し余裕を取れたかもしれません」


「戦った直後に改善点か」


「次に樹甲蜥蜴と戦うなら、使えると思うので」


「そういうのは悪くない」


 ガレスは四人を見渡した。


「ただし、次も同じ動きをするとは限らない。それだけは忘れるな」


「はい」


 その後も観察を続け、別の場所でもう一体、実習に適した樹甲蜥蜴が見つかった。


 今度はレオンたちの班が担当した。


 三班目も、これまでの二班とは違う方法で対処した。


 全員の実習を終える頃には、日もかなり傾いていた。


 帰り支度を始める頃、記録用紙の余白には、植物だけでなく三班それぞれの戦い方まで書き加えられていた。

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