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白き天使と金色の竜眼Ⅰ  作者: 蒼空れっど
第二章 王立学院編
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第30話 冒険者ギルドへ

 学院の正門前へ着くと、すでにカイルとエステルが待っていた。


「今日は本当に早いね、カイル」


「こういう日は早いって言っただろ」


 得意げに答える腰には剣があり、背中の鞄には採取道具が入っている。


「おはようございます、ユウさん」


「おはよう、エステル!」


 ほどなくして、リリアも小走りでやって来た。


「おはよう。私が最後?」


「まだ七時四十五分前だよ。全然遅れてないよ」


 四人がそろったところで、昨日まとめた確認用の紙を開く。


「じゃあ、最後に一回だけ確認しようか!」


 水筒。


 昼食。


 地図。


 依頼書。


 採取図。


 二つの籠と採取刃。


 記録用紙。


 応急手当用品。


 雨避けの布。


 そして学院冒険者の登録証。


 担当した物を一つずつ確認していく。


「全部あるな」


「うん。これで揃ったね」


 ちょうどそこへクラリスが歩いてきた。


「全員、時間を守れていますね」


 荷物を簡単に確認したあと、一枚の書類が差し出される。


「東門へ向かう前に、冒険者ギルドへ寄ってください。学院で受けた依頼でも、活動を開始した記録はギルド側へ残します」


「帰ってきた時もギルドへ行くんですか?」


 エステルが尋ねた。


「結果の報告は学院で構いません。ギルドにも記録が共有されます。今日は受付で四人の登録証と、この確認書を提示してください」


「分かりました」


 書類を折らないよう、依頼書と一緒にしまう。


 クラリスは四人を順番に見た。


「最後にもう一度。十五束を集めることより、四人で無事に戻ることを優先してください」


「はい!」


「では、行ってらっしゃい」


「行ってきます!」


 四人は学院を出て、朝のリーヴェルを歩き始めた。


     ◇


 冒険者ギルドは、学院から東門へ向かう大通りの途中にあった。


 石造りの建物の入口には、剣と盾を組み合わせた紋章が掲げられている。登録の日に講堂で見たものと同じだ。


「ここが本物の冒険者ギルドか……」


 カイルが扉を見上げる。


「学院に来てくれた人たちも、普段はここにいるんだよね」


「入ってみようよ!」


 扉を開けると、低い話し声と椅子を引く音が重なって聞こえた。


 学院にあったものよりずっと大きな掲示板には、何十枚もの依頼書が並んでいる。


 武器を携えた者。


 地図を囲んで相談する者。


 受付で依頼の結果を報告している者。


 制服姿の四人は、その中ではよく目立った。


「本当に冒険者ばっかりだな」


「カイル、前見て」


「分かってるって」


 受付へ向かうと、短い茶髪の女性が顔を上げた。


「学院冒険者の依頼開始記録をお願いします」


 確認書を差し出す。


「はい。四名で、東門外の旧街道周辺における薬草採取ですね」


 女性は内容を確認し、四人の登録証も順番に確かめていった。


「今日が最初の依頼ですか?」


「はい!」


「指定区域は人通りが少なくなります。道から大きく離れず、何かあった場合は無理をせず戻ってくださいね」


「ありがとうございます」


 その時、少し後ろの机から声がした。


「学院冒険者って、本当に学生だけで行くんだな」


 振り返ると、軽い革鎧を着た若い冒険者が二人、こちらを見ていた。


「初仕事が薬草十五束か。四人もいれば昼前には終わりそうだな」


 からかうというより、珍しそうに見ているだけらしい。


 それでもカイルの眉がわずかに動いた。


「……ちょっと軽く見られてるよな」


「カイル」


 リリアが小さく名前を呼ぶ。


 ユウは二人へ向き直った。


「初めてなので、僕たちにはちょうどいい依頼だと思っています」


「薬草を採るだけだぞ?」


「似た草もあるそうですし、採る場所や帰る時間も決められています。道を覚えることも、採り方を間違えないことも、僕たちには初めてなので」


 少し明るく続ける。


「まずは一つ、きちんと終わらせてきます」


 若い冒険者が少し意外そうに目を瞬かせた。


 すると、近くで大きな鞄を整理していた年配の男が口を開いた。


「初仕事なら、それでいい」


 灰色の混じった髪に、使い込まれた外套。


「薬草を見分けられず、似た草だけ持ち帰る新人だっている。依頼は戻って報告して終わりだ。派手さは要らん」


「別に馬鹿にしたわけじゃないさ」


 若い冒険者は肩をすくめ、仲間との話へ戻った。


 受付の女性から登録証が返される。


「開始記録は終わりました。お気をつけて」


「はい。行ってきます!」


     ◇


 ギルドを出て大通りへ戻る。


「……薬草だからって、適当にやるつもりはないぞ」


 カイルがまだ少しだけ不満そうに言った。


「うん。だからちゃんと十五束集めて、四人で帰って報告しようよ。それで十分だと思う」


「そうだな」


「似た草だけ十五束はやめてよね」


 リリアが言う。


「もう見分け方は覚えたって」


「葉の縁は?」


「切れ込みがない方」


「茎は?」


「下の方だけ薄く赤い」


「ちゃんと覚えてるね」


「昨日あれだけ見たからな」


 エステルが前方を指した。


「東門が見えてきました」


 町を囲む石壁と、その一角に開かれた大きな門。


 荷車や旅人が順番を待ち、門兵が一人ずつ確認している。


 四人の番になると、依頼書を差し出した。


「学院冒険者の依頼です。旧街道周辺へ薬草採取に向かいます」


「登録証も確認する」


 四枚を順番に見た門兵が返してくる。


「旧街道は今の街道より人が少ない。学院から指定された範囲を出ないようにな」


「ありがとうございます」


 門を抜けた瞬間、視界が一気に広がった。


「わあ……!」


 街道の両側には草地が続き、その向こうには畑や林が見える。


 町の外にも荷車や旅人はいる。それでも、高い建物に囲まれていた街の中とは空の広さがまるで違った。


「地図だと、しばらくこのまま真っ直ぐだよ」


「石標が見えたら右ですね」


「見落とさないようにしないとな」


 四人は周囲の景色も確かめながら街道を進んだ。


 やがて道端に、草で半ば隠れた古い石標が現れる。


 その脇から、今の街道より細い道が分かれていた。


 地図と見比べる。


「ここで合ってるよ!」


「じゃあ、いよいよ旧街道だな」


「最初の一株は、四人で採取図と比べようね」


「分かってるって」


「昨日の『葉っぱは全部同じに見える』があるから念のため」


「もう忘れてくれよ」


 そんなことを話しながら、四人は石標の脇から続く旧街道へ入っていった。


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