↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白き天使と金色の竜眼Ⅰ  作者: 蒼空れっど
第一章 人里へ続く道
PR
12/116

第11話 特例入学試験

 特例入学試験の日が訪れた。


 書類を提出してからの四日間、ユウはリリアたちと一緒に、できる範囲で準備を進めてきた。


 数日で王国のことをすべて覚えることはできない。


 低い魔力出力が、急に変わるわけでもない。


 だからこそ、知らないことを無理に隠さず、自分にできることを見てもらおうと決めていた。


 朝の森には、木々の間から柔らかな光が差し込んでいる。


 服の襟を整え、鞄の中を確かめる。


 受験許可書と筆記具。


「よし。忘れ物なし」


 家の扉に鍵をかける。


「行ってきます!」


 近くの枝で小鳥が短く鳴いた。


 それに手を振り、町へ続く道を歩き始めた。


     ◇


 古書店の前では、リリア、カイル、エステルが待っていた。


「おはよう!」


「おはよう、ユウ」


 三人の前まで来ると、ユウは姿勢を正して頭を下げた。


「今日はよろしくお願いします」


 カイルが目を瞬かせる。


「俺たちは試験官じゃないぞ」


「でも、一緒に授業を受けてもらうから」


「ずいぶん真面目ですね」


 エステルに言われ、ユウは受験許可書の入った鞄を軽く押さえた。


「今日は試験だからね」


「緊張してる?」


 リリアが尋ねる。


「うん。ちょっとだけ」


「そうは見えないけど。いつものユウでいれば大丈夫だよ」


「……うん!」


 三人と並び、学院へ向かった。


     ◇


 門をくぐると、最初に学院長室へ案内された。


 室内ではアルベルトとクラリスが待っている。


「失礼いたします。ユウ・リシェルです。本日はよろしくお願いいたします」


「座りなさい」


 机の上には、一年生が使う教本が置かれていた。


「今日の試験では、大量の問題を解いてもらうことはありません」


 アルベルトが説明する。


「読み書きと算術はすでに確認しています。今日は実際の授業へ参加してもらいます」


「ほかの生徒の皆さんと一緒に、ですか?」


「そうです」


 今度はクラリスが続けた。


「説明を聞けるか。周囲と協力できるか。安全に魔法を扱えるか。それらを確認します」


「魔法の強さだけを見る試験ではないんですね」


「ええ。魔力出力が低いことはこちらも把握しています。無理に周囲に合わせて出力を上げる必要はありません」


「分かりました」


 クラリスに案内され、一年生の教室へ向かった。


 扉の向こうから、大勢の話し声が聞こえてくる。


「準備はよろしいですか?」


「はい」


 扉が開いた。


 教壇の横へ立つと、ざわめきが次第に収まっていく。


「あの子が特例試験の?」


「見学日に来てた子だよね」


 いくつもの視線を感じながらも、ユウは姿勢を崩さず前を向いた。


「静かにしてください」


 クラリスの声で教室が静まる。


「本日は特例入学試験の一環として、ユウ・リシェルさんが授業へ参加します」


 ユウは一歩前へ出た。


「ユウ・リシェルです。本日は皆さんと一緒に授業を受けさせていただきます。よろしくお願いいたします」


 丁寧に頭を下げる。


 教室の後方には、先日廊下で言葉を交わした赤茶色の髪の男子生徒もいた。


 こちらを見ていたが、今日は何も言わない。


「リリアさんの隣の席を使ってください」


「はい」


 席へ着くと、リリアが声を潜めた。


「最初だけだよ。授業が始まれば、みんな自分のことで忙しくなるから」


「うん。ありがとう」


     ◇


 今日の授業は、基礎結界の共同実習だった。


 実習場の床には大きな円が描かれ、その中央に水晶が置かれている。


 床と水晶には、共同結界を作るための術式があらかじめ組まれていた。


 今回は一人ずつ魔法を発動するのではない。


 四人が別々の位置から術式へ魔力を送り、その流れを合わせることで一つの結界を完成させる。


 一人だけが強すぎても、反対に弱すぎても安定しない。互いの流れを合わせる必要がある。


 この実習では、一人につき一つの属性を選んで魔力を流す。四人はそれぞれ、扱いやすい属性を選ぶことになった。


 班分けの結果、ユウはリリア、カイル、エステルと同じ組になった。


「合図に合わせて魔力を流してください」


 四人が水晶を囲む。


「始めてください」


 四人の魔力が、水晶へ向かう。


 火、水、氷、光。


 それぞれの属性を帯びた四本の流れが、水晶の中に映し出された。


 その流れを見比べる。


 カイルの線がわずかに強く、四本で作る輪が片側へ歪んでいる。


「カイル、もうちょっと弱くしてみて」


「これくらいか?」


 歪みが戻り始める。


「うん、それくらい!」


 今度はリリアの側が外へ広がった。


「リリア、内側へ寄せられる?」


「やってみる」


 水の線が中央へ近づく。


「エステルも、もう少し中心へお願い」


「分かりました」


 三本の流れが徐々にそろっていく。


 自分の光も、そこへ静かに重ねる。


「今、合いそう!」


「じゃあ、このままいくぞ」


「うん!」


 四つの流れが一つに重なった。


 淡い結界が広がる。


 向こう側が透けるほど薄い。


 それでも傾きはなく、表面の揺れもほとんどない。


「維持してください」


 クラリスが軽い砂袋を投げる。


 袋が結界へ触れると、薄い壁が内側へしなった。


 だが崩れることなく、勢いを弱めて床へ落とす。


 周囲の生徒たちから、どよめきが上がった。


「薄いのに安定してる」


「四人の流れ、きれいにそろってるな」


 後方の赤茶色の髪の少年も、完成した結界を黙って見ていた。


「そこまでです」


 魔力を止めると、結界は淡い光となって消えていった。


「ユウ、疲れてないか?」


「ちょっとだけ。休めば平気だよ」


「無理はしないでください」


「うん」


 呼吸を整えている間、クラリスは記録用の板へ何かを書き込んでいた。


     ◇


 授業のあと、最後の面談が行われた。


「今日の授業を受けて、どう感じましたか?」


 アルベルトに尋ねられ、考えてから口を開いた。


「一人で本を読んでいるだけでは、分からないことがあるって思いました」


「例えば?」


「三人の魔力の違いは分かりました。でも、それだけじゃ結界にはならなかったんです」


 膝の上で手をそろえる。


「僕が気づいたことを言って、三人が合わせてくれた。僕もそこへ光を加えて、それで四人で一つにできました」


「一人ではできなかった?」


「はい」


 迷わず頷いた。


「でも、それがすごく面白かったです。自分一人ではできないことでも、みんなで考えたら、できることが増えるんだって」


 アルベルトは口を挟まず、静かに聞いている。


「僕は、大きな魔法は使えません」


 その声に迷いはなかった。


「だからこそ、工夫すれば何ができるのか、もっと知りたいです。いろんな人と学んで、僕にできることを増やしたい」


 一度言葉を切る。


「それでいつか、誰かが困っている時に、その人が少しでも安心できる魔法を使えるようになりたいです」


 クラリスが記録用紙へ最後の言葉を書き込んだ。


 アルベルトが頷く。


「本日の特例入学試験は、これで終了です」


 その言葉を聞いて、ようやく肩から力が抜けた。


「結果は、いつ分かりますか?」


「明日の午後、正式に伝えます」


「分かりました。本日はありがとうございました」


     ◇


 学院長室を出ると、三人が待っていた。


「終わったか?」


「うん!」


「どうだった?」


「結界はできたよ。面談も終わった」


 リリアが様子をうかがう。


「疲れてない?」


「ちょっと疲れたかな。帰る前に休みたい」


「では、ここで休みましょう」


 エステルが長椅子を示す。


 四人で並んで腰を下ろした。


「ユウ、帰りに何か食べるか?」


「食べたい!」


「急に元気になったな」


「試験中、お腹空いてたんだ」


「何が食べたい?」


「甘いもの!」


 リリアが口元を緩める。


「じゃあ、休んだら探しに行こうか」


「うん!」


 結果を聞くのは明日。


 今はまず、四人で何を食べるかを決めることになった。

少し期間を開けてしまい申し訳ございません。

少しずつ成長していくユウの姿、それに感化される周囲。

様々な出来事が今後降りかかってきます。

楽しみにしていてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。