スキル
「ほんとに図書館の外にこんな建物があったのね」
図書館エリアに来て図書館の外に出てから右の後ろに続いている石畳みを進むと本館よりは小さいが、一軒家程の大きさの建物があった、この中でスキルを得られるらしい。
中に入ると二階吹き抜けで横向きの石版が縦に五つ並んでおり、その前に幾何学模様の魔法陣らしきものが刻まれた台座がある。
「あの台座の下にある本の中に得られるスキル一覧が載ってるから好きなのを選んで台座にスキルに割り振られてある番号を書き込めばスキルブックがあの魔法陣から出てくるんだぜ」
ヨーグがやり方を教えてくれたので、石版の下にある分厚い本を取り出してスキル一覧を見る。
「剣術、槍術、武術系も感知系も耐性系も本当になんでもあるわね」
「どれが良いのか選択肢が多い…」
「まぁ凡庸スキルだし取り立てじゃあたかが知れてる、変な期待は持たない方が良いかもな」
ヨーグが今からスキルを取るワクワク感を潰してくる様なことを言うのでそこら辺ちょっと黙ってて欲しいのだが、二週間後には戦場に行かねばならないから浮かれてばかりだとマズイのも事実だ。
「……俺は決まったから先にやるぞ」
「何を取るの?」
「暗殺術に隠密、気配感知だ」
今からちゃんとした武器を持っても武器に振り回される未来しか見えないので真正面からの戦闘は捨てるスタイルでスキルを取る。すると自分の中に何かが芽生えた様な感覚が流れ込んできた――ステータスは無いけど本能で自分がどんなスキルを持ってるのか分かるのは有難い。
「暗殺者か、対人では不利だけど良いのか?」
「ん〜なんて言うか、性に合ってるからかな。それに今から対人の実力を上げるのは個人的には厳しそうだし」
後二週間しか猶予がないのだ、経験者の助言を聞いて後悔することになるなら自分で信じた道を進んで後悔したいからこの決定に迷いはない。
多少戦争には時間があるとはいえ完璧に鍛えるどころか戦場で自信を持って戦える程の下地を付けることも厳しそうなので暗殺スタイルで戦い方を磨こうと思っている。
――と言っても基礎を疎かにしたりはせずにこれからの訓練では土台作りも行っていくつもりだ。
「二人は決まったか?」
「私はあと少しで終わるわ、なんだったら先に帰ってても良いわよ」
「ぼ、僕も同じく」
「ハイハイ、待ってるからゆっくりで良いぞ〜」
先程からサキとロイ、ヨーグの四人と自然と行動を共にしている。他の人たちも元々グループが出来ていたり個人で来てた人たちで固まってもうある程度固まったグループが出来ている。でもヨーグはちょいちょい他のグループにも絡みに行っていたりしている様で誰とも話せるコミュ力は羨ましいものだ。
「スキルは取ったけど、戦場で使う武器はどうするか知ってたりするのかな?」
「俺は訓練場から適当に拝借したぜ、当日丸腰で集合するのは不安だしな。あんなに武器があるなら一本ぐらい大丈夫だろうし」
サキとロイがスキルを選んでいる時に質問すればなんでも答えてくれそうなヨーグにもしかしてと思って聞いてみたが、まさかの訓練場から借りパクしていた。
マジかよ!それダメやろ――なんて言って当日不安になって同じことをすることになりそうだし、それにここは日本では無いから生き残る為に行儀良くするのも違う気がする。
サキとロイはかなり悩んでいたみたいでヨーグも助言していたが決めるのが遅くなって他の人たちは各々帰ってしまった。
結局サキのスキルは『槍術・気配察知・補助魔法』に決まって、ロイのスキルは『剣術・逃げ足・気配察知』に決まった。
「もう今日は遅いから――ここいらで解散するか」
「そうね、流石に私も眠くなってきたし」
今度こそ解散になった。明日のことは特に決めなかったのだが、少しでも生き残る確率を高める為に迷宮にでも潜ってスキルを鍛えようかと考えている。
* * *
次の日、今は朝六時ごろでとりあえず広場に来ている。
何故か部屋には時計が無いが広場にはあるので若干不便ではあるがそこは低級天使、低級クオリティーということで我慢するしかない。
「ん〜、皆んなまだ起きてないかな〜」
広場を見渡すが人も疎でまだこの時間から活動している人たちも少ない。まぁ、無理にタイミングを合わせなくてもその内鉢合わせると思うから早速訓練場へ向かう。
「ん?」
ゲートに向かうと昨日神殿にいた酒好きジジイのガロルドが丁度庭園ゲートに入って行くところで、ガロルドは俺に気付いた様子は無くそのまま庭園に入って行った。
「散歩?」
酒が無いから眠れなかったりしたんだろうか……なんて思ったがガロルドも癖がありそうな性格してそうなので今はスルーして訓練場に向かう。訓練場にある迷宮は良く創作物の中に出てくる迷宮で浅い階にはゴブリンやスライムが徘徊しているのだ。普通にダンジョンデビューは嬉しいのだが、例え迷宮を攻略出来ても悪魔との戦闘では無双出来る状態にはなれない――むしろそこからがスタートラインになる可能性があるのが怖いところだ。悪魔と戦ったことが無いからなんとも言えないけどね……




