自己紹介
こうして残った十四人で軽く自己紹介をすることになった――まぁ、そんな行儀の良い感じでは無いから各々言いたいこと言って険悪な雰囲気にならないことを祈るばかりだ。
「そんじゃこの十四人で俺から時計回りにしよう。俺はヨーグってんだ。前世って言っていいのか分からんが、死ぬ前は義賊をやって悪い奴らを懲らしめてたんだ」
「義賊?アンタ怪しいわね、そんなこと言って善良な市民からみかじめ料でも巻き上げてたんじゃないの?」
義賊って確か非公式で民間人が集まって勝手に治安を守ったりする人たちだっけ?よく物語とかでも出てきたけど善悪のどっちのタイプもいたからどう反応すれば良いか分からんな。他の人たちも反応に困っていて良い顔をしている人はこの中にはいない。
「いやいや、そんなことしてないって。てか別にやましいことは無いけどよ、俺のことはいいから先へ進めようぜ。お嬢ちゃん名前は?」
「…私の名前はサキ。前世はやり手のイベントスタッフだったの。だから私は結構なんでも器用にこなせるから困ったら私になんでも言ってくれて良いわよ!」
「イベントスタッフ?なんだそれ?」
サキはまだ疑いの目でヨーグを見ているようだ。だが自分の自己紹介をするサキは胸を張って自信満々な表情をしている。まぁ、ヨーグはイベントスタッフのことが全く分かっていない様だ……ヨーグの自己紹介からも予想は出来るが、サキとヨーグが生きた世界はやはり全く違うようだ。因みに俺も学生でバイトはやったりしたがイベントスタッフはしたこと無いのでなんとも言えない。
「い、色んな催し物を準備する人だと思います、ヨ、ヨーグさんの生きていた場所には多分無かったんですね」
「イベントスタッフてそう言うことか、だけどそんなの下っ端がやることだろ。それに魔法士がいればあんまり役に立たないんじゃ…」
「そ、その…多分魔法が無い世界もあると思うので多分そういうことなんじゃ…」
ヨーグの散々な言われ様に更にオド男からの追い討ちにサキが怒りでプルプルと震えている。デリカシーがないのか異世界ギャップが原因なのか…
「私の世界には魔法が無いのよ――でもアンタたち覚えて起きなさいよ、次はオドオドしてるアンタの番よ」
「ご、ごめん、あ、あの…ぼ、僕の名前はロイ。前世は冒険者兼配信者をしていました。そ、その配信の方は見てくれる人が結構いたんだけど冒険者としては全然で」
「冒険者は俺の時代にもいたからなんとなく分かるけど、配信者ってのはなんだ?」
「時代が合わないと話をするのも不便ね」
ロイの話的にロイの世界は創作物の中のジャンルの一つの現代ファンタジーの様な世界観の世界なのだろう。
正直言って羨ましい――転生するならチート云々の話は抜きにしても第二の人生としてその世界に生まれ変わってみたいものだ。
――にしてもサキはイベントスタッフの件で当たりが激しくなっている。幸いにもヨーグは喧嘩っ早い性格では無いようだが、そうじゃなかったら拳が飛んできそうな気がする。ヨーグと喧嘩するサキ、それを見てなんとか収めようとするが空回りしているロイを眺めながらその渦に入らずに静観して話が終わるのを待つ。
「ったく、直ぐ頭に血が昇る厄介な嬢ちゃんだぜ」
「ハァ〜?」
「と、とりあえず先に進めましょう…そ、その、お願いします」
変に絡まれると面倒くさいのであんまり変なことは言わないようしよう、特にサキとか…
「俺の名前はタクト。前世は学生だったんだけど、成人した年に事故で亡くなったんだ。それと、前世の世界では魔力とかは無かったから多分サキさんがいた世界と似てると思う。よろしく」
「よろしくなタクト、この二人よりはマトモそうで安心したぜ」
「アンタぶっ殺すわよ!?」
「僕も!?」
それから他の人たちの自己紹介も聴いて小一時間程過ごしたが、色んな世界のことを聞く機会なんて勿論無かったので退屈しなかった。
一通り自己紹介も終わったので、適当に眠いとか理由を付けて帰ろう。時間も時間なので如何にこの天使の身体でも疲れてしまう。
「ところでみんなはもうスキルは手に入れたか?」
「スキル?もらってないけど」
「僕も」
帰ろうとしたがヨーグが何やら気になる話が出たので、もう少し残ることにする。それに知らない人もいるみたいだからそんなに周知されていることでも無さそうだ。
「図書館エリアの外にある別館に行くとなんでも好きなスキルが三つ手に入るんだよ」
「なんでも!?凄いじゃない」
「た、たしかに」
マジかよ!?何それスゴ!…てか図書館から外に出られるんだ、それも全然知らなかった。
「なんでもって言っても、そんな特別なスキルじゃなくて凡庸スキルだけだけどな」
「初めからそう言いなさいよ!」
「さ、流石にそうだよね…」
確かにちょっと期待したけど、スキルが三つ手に入るだけでも全然美味しい話だ。そのうちみんな気づくと思うし戦争に参加する前に知ることが出来て良かった。
「今から行ってみましょ!」
「で、でも流石に夜中じゃ」
「昼は混むだろうし開いてるかどうかだけでも見に行かない?」
俺の最後の一押しで図書館エリアに行くことになったので案内をヨーグに任せて早速庭園エリアから出て図書館エリアに向かった。




