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ラース様はもしかして・・・

シャナーがビュランテの館につくと玄関のベルを鳴らした。

すると召使いが姿をみせ応接室に通してくれた。

一緒に戻ったダザルは別室に行ったようでついては来なかった。


「シャナー様、本日はようこそいらしてくださいました」

シャナーが応接室に通されてしばらくすると、車いすに乗ったビュランテが応接室に入ってきた。


「このような乗り物に乗ってのお出迎え申し訳ありません。少し立ち眩みがするものですから」


ビュランテはそういうと頭をさげ近づいて、むかえ合わせの席に座り直した。

シャナーもそれをみて自分もソファーに腰を下ろした。


「いえ、体調がすぐれないようでしたらご無理をなさらずに、私はすぐにおいとましますので、おばあ様からビュランテ様の体調のご様子を伺ってくるように言われてきただけですから。少し貧血気味なのですか?」


「サフェリア様にはいつも本当にありがとうございます。おかげ様で調合してくださるお薬を毎日飲ませていただくようになってからとても体調がいいんですのよ。実は昨夜は遅くまでラビニア様とユシィア様のお別れ会をしていたものですから。きっと寝不足なだけですわ」


「あら、もうお帰りになられるのですか? 殿下のお妃候補に選ばれていると思っていましたのに」


「あら、仕方ありませんわ」


「どうしてですか? どなたも王族の姫君ばかりですよね。私なんか到底及ばないはずですのに、皆様とても素敵な方々ばかりでしたし」


シャナーは本気でどうして帰るのか分からないような態度にビュランテはクスクス笑い出した。


「あら? 私何か変なことを言いましたか?  ねえトリアさん、あなたもわかるの?」

後ろに立っているトリアの顔見上げながらいうとトリアは小声でシャナーに言った。


「シャナー様、この間こちらに殿下といらした時のことをお忘れですか?」


「えっ? 覚えているわよもちろん、せっかく皆様が殿下に話かけて下さっているのにムスッとしてすごい顔で睨み続けて、そのうち居眠りしはじめたじゃない」


「それですよ。いくら何でも、目の前でそんな態度をとられたら自分は嫌われているのだとどれだけ鈍い方でも気づきますよ。殿下は、好き嫌いははっきりなさっているようですからね」


「そうなの? えっじゃあ、私がこちらにお邪魔しちゃったから、姫様方がもう帰られるってことですか? 何だか悪いことをしちゃたかしら」

「・・・」


トリアはさすがにそれ以上はいわなかった。


「あら、これでよかったんですわ。だってシャナー様はあんなにラファイル様に愛されているらっしゃるんですもの。あんなラファイル様の溺愛っぷりをみせつけられては、付け入る隙がありませんわ。側室も無理なようですしね」


ビュランテは笑顔でいったが、シャナーは真っ赤になってしまった。


「そっそんな…あっ愛されているなんて」

「ていうか、自覚なかったんですか? あれだけ毎日しつこく言い寄られているのに…婚約されているんですよね」


トリアはボソッというと、聞こえていたのかシャナーが反論した。


「だってあれは世話係としてうまくこき使おうとしているのかと…それにこっ婚約はその、他国の王女様とのご婚約が決まるまでのカモフラージュ的なものかと」

「はあ?」


『このお嬢は本気でそんなことを思っていたのか…』


トリアは大きなため息をついた。それをみてビュランテはまたクスクス笑い出した。


「シャナー様は可愛いかたですね。わたくしラファイル様のお気持ちが少しわかるような気がいいたしますわ?」


「えっ? どのような気持ちですか? ビュランテ様?」


「あら、独り占めしたくなる気持ちですわ。ほら噂をすれば、あの声はラファイル様の声ではありませんか?」


そういうと、ビュランテはゆっくり立ち上がると、横の窓に近づくと窓を開け外を見た。

すると確かに殿下の声が近づいてきているように聞こえた。

シャナーは立ち上がり窓から外をのぞくとラファイルとすぐ後ろからラファイルを追いかけてくるラースの二人が見えた。


「でっ殿下!」


シャナーは体を乗り出しながら叫んだ。

ラファイルは荒い息遣いのまま、館の中に入ると応接室に飛び込んできた。


「シャナー、だっ大丈夫か? やっぱり心配できてやったぞ」

「殿下! また仕事を放り出してきたんですか? さっき説明したじゃないですか!」

「だけどな…気になって」


ハアハア荒い息遣いをしながら、部屋を見渡しながら言った。


「あれ、今日はビュランテ叔母上だけなのですか?」

「はい、ようこそいらっしゃいました。ラファイル様、皆様は王宮殿にいかれておりますわ」


「なんだ、そうだったのか…じゃあ来なくてもよかったのか」


ラファイルはそういいながらもソファーにどかっと座りながら息を整えた。

そのすぐあと同じく息を切らせながらラースが入ってきた。

ラースはビュランテに一礼してから入ってきた。


「ビュランテ様、申し訳ありません。すぐにラファイル様を連れていきますから」


そういうと座っているラファイルに近づきラファイルの腕を掴みながら立たせようとするがラファイルは抵抗していっこうに立とうとしない


「殿下! いい加減にしてください」

「嫌だ、せっかくきたんだから叔母上と少し話していってもいいだろ」

「何を言ってるんですか、邪魔なだけですよ」


二人の押問答をみたビュランテがまた笑い出した。


「お二人とも仲がよろしいのね。うらやましいわ」

その言葉を聞いてラファイルはもちろんラースも顔を真っ赤にさせて固まってしまった。

それを眺めていたシャナーが急に目を輝かせて二人の間に割って入った。


「そうだわ、殿下! 私もう帰ろうかと思っていたんですよ。急用を思い出してしまって、一緒に戻りましょう」


「何? もう戻るのか、今来たばかりだろう?」


「そうなんですけど、ビュランテ様、申し訳ありません。また後日ゆっくりうかがいますわ。あっそうだわ。ラース様、今日は殿下とカミールと私で仕事は済ませておきますから殿下がくださったこの本をビュランテ様に読んで差し上げてくださいませんか? これ男性が書かれた冒険記みたいですから、きっとラース様のような方の声で聞かれた方が楽しめると思うんです。ビュランテ様は少し貧血気味のようですし、ベッドに入られて側で読んで差し上げてもらえませんか? その方が治療になるかもしれませんから。後これは今朝焼いたクッキーですわ。よかったら後でお召し上がりください。ハーブも入れてますから」


そういうとトリアに預けていたラフアイルから預かった本とクッキーを目の前の机の上に置いた。


「あっあら、その本はわたくしが探していた本ではありませんか。よろしいのですか?」


「あっああ、僕が持っていても読まないからな。叔母上に差し上げますよ、シャナーが言うようにラースの奴は読むのがうまいからな、読ませたらいい。そして少し眠るといいですよ。疲れている時は二度寝三度寝と何度も睡眠をとる方がいい時もありますから。子守唄替わりに貸しますよラースを」


「いいえ、ラース様にそのようなことをしていただくわけにはまいりませんわ」


「いいや、ラースこれは命令だぞ、きちんとビュランテ叔母上が眠られるまで読んでさしあげるんだぞ。シャナー館に戻ろう。カミールが心労で倒れているかもしれないからな」


ラファイルはそういうと困っているビュランテにお辞儀をするとシャナーの手を掴むとスタスタと応接室を出て行った。

その後をトリアも続いた。


「あっあの、お嫌でなければお読みいたしましょうか?」

ラースは赤くなりながらも頭をかきながらいうと、ビュランテは小さく頷いた。


ビュランテの館をでると、ドリマーが待っていた。

ドリマーは何故か自分からビュランテの屋敷には入ろうとしなかった。


「ドリマーお待たせ! 戻りましょう。今日は散歩は夕方にしてね。その代わり、館に戻ったらトリアにとっておきのおやつをもらってね」


「ワン!」


ドリマーはしっぽを振りながら嬉しそうに後をついてきた。


「トリアさん、おやつお願いね」


「かしこまりました。ですがあの…シャナー様、もしかしてラース様はビュランテ様の事をお好きなのではないでしょうか?」


「あらあなたもそう思う?」

「はい」

「私もそうじゃないかなってピンときたのよね」

「なんだ? しらなかったのか?」

「え? 殿下は気付いていたのですか?」


「わかりやすいしな。あいつ、毎朝、王宮殿に行ってこっちにくる途中に必ずビュランテ叔母上の所に立ち寄っているみたいだぞ」

「そうだったんですか?」


「ああ、叔母上は体が丈夫ではないからな、誰かに嫁ぐのは無理だと医者にも宣告されているからな。静養しているのに、他の叔母上たちときたら、娘たちをあの館によこしやがって、自分の住んでいた館に泊まらせるか王宮殿でも泊まればいいものを、まったく、どれだけ抗議の書簡を送っても中々聞き入れてくれなくてな、ビュランテ叔母上の体調を心配していたんだ」


「まあ、殿下、珍しくいい事をしていたのですね」


「なんだシャナー、珍しくとはどういうことだ。僕はいつだってきちんとすべきことをだな」


「はいはい、殿下大好きですよ」


シャナーはそういうと殿下の肩に顔を寄せて、ギュッと殿下の腕に巻き付けている手に力を込めた。


「さあ~今日は仕事が終わったら、殿下の好きなことをして差し上げますよ。何がいいですか?」


「何? なんでもいいのか?」

「私が嫌なこと以外でしたら」

「なんだそれは、それはなんでもといわないんじゃないのか?」

「あら、じゃ何もなしでいいんですか?」


「いっいや…昨日も仕事を頑張ったし、今日もラースの分も仕事をするわけだから、シャナーのご褒美は欲しいぞ」


「わかりました。じゃあ…マッサージはいかがですか? 肩とか凝っているんじゃないですか? 私得意ですよ。マッサージ」


笑顔でいうシャナーに真っ赤になって頷くラファイルだったが、後ろを歩いていたトリアは青い顔をして聞こえないようにつぶやいた。


「殿下…ご武運をお祈りしてます」


そうラファイルはしらなかったのだ。

シャナーのいうマッサージというのは施術後には体の凝りは解消されるが激痛が伴うことを…。

時折、サフェリアが騎士たちにしているマッサージの施術を勉強しているシャナーがサフェリアと時折交代してするのだがシャナーがすると、恐ろしく激痛が伴い、毎回すごい悲鳴を騎士たちがあげているのを知る由もないのだ。


なぜなら、その施術室はサフェリア館の地下室にあるからだ。

外に漏れでることはなく、施術された後は嘘のように辛い痛みが解消されている為騎士たちはあえて激痛の事は口外していなかったのである。

その日の夕方、ラファイル館からラファイルの悲鳴がとどろいたのは言うまでもなかった。






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