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呪い屋ビシュア①

キャサリーヌ王妃は予定通り朝食を済ませると目の前のハルイ国王に向かって笑顔で言った。


「ねえ、ハルイお願いがあるんだけど」

「おや、君からの直接のお願いなんて久しぶりだね」


ハルイ国王は珍しく朝食を一緒に食べたいと申し出てきた王妃の顔をご機嫌な様子でみながら言った。


「実はね、小耳に挟んだんだけど、今日から三日間、ラファイル館の大掃除をするんですって」

「大掃除とな? それとわしにお願いとは関係あるのか?」

「ええ、あなたにしかお願いできないことですわ」

「なにやら嫌な予感がするのう~」

「あら陛下、可愛い息子のお願いなんですのよ」

「しかしのう」


「まあ、ただラファイルの代わりにあの子がしている公務の代行を三日間してくださいってお願いしているだけですわ。わたくしそんな無理をお願いしているわけではありませんのに、ああ…なんだかめまいがしてきましたわ。陛下がそんなに狭いお心をお持ちだったなんてショックですわ。またどこかの保養所に行こうかしら」


「わっわかった、わかった。しかし、その代わりに、それが終わったら、そなたと一日のんびり過ごしたいものだな」


「わかりましたわ」


キャサリーヌはニコリと笑顔を陛下にみせ陛下との休暇の予約を了承した。

その言葉を聞いた陛下は急に鼻歌混じりに朝食をとり始めた。

一方のキャサリーヌは小さくため息をついていた。


キャサリーヌはその後、いつものドレスではなく都の女性たちが来ている質素なドレスに着替えを済ませ、いそいそと馬車に乗り込んだ。

同行する騎士たちにもお忍びでの外出だから普段着でくるように指示を出した。



馬車はサフェリア館に立ち寄り、都へと出発して行った。

「よーし、頑張るかー!」


サフェリアを見送ったシャナーは両手を大きく伸ばすと動きやすいズボンに履き替えて頭と顔を布で覆いラファイル館へと向かった。


「おはようございます」


シャナーが裏口の調理場に繋がるドアから勢いよくはいっていくと、大掃除の予定を聞いた館の使用人やこの館に部屋を持つ騎士たちが既に朝食を終え、荷物の運びだしの準備を開始していた。


「シャナーおはよう」

「あっカシスさんおはようございます」

「えらいことになったな、だが一斉掃除ってのはいいことだ」

「そうですね」

「普段掃除できない場所の掃除をするってことは健康にはいいことだからな」


そう言ってカシスは自分の仕事場である調理場に置かれている調理器具の運び出しを忙しそうにこなしていた。


シャナーはそのまま、そこを通り過ぎて一階へと階段をあがって行った。

シャナーが一階に着くと、玄関ホールの大きな扉や窓が全て開放されていて、次つぎと荷物が外に運びだされていた。


「シャナー!」


シャナーは騎士たちがタンスや書籍などを運んでいる様子を眺めていると、外からラファイルがかけてきてシャナーを抱きしめた。


「でっ殿下、今朝は朝から元気ね」

「そうなんだ。すごく体調がいいんだよ」

「そうなんですか、それはいいことですね。でっ、移動はうまくいっているのですか?」


「ああ、ラースがすごい顔で支持してるよ。外はカミールが順番に外に置くように指示をだしているよ」

「そうですか、あの、私のできそうな仕事ってありそうですか?」


「あるよ、君は僕と外で座って僕のそばでニコニコしていてくれたら僕も頑張れる気がするんだけどな」

「あら、殿下は何を頑張るのですか?」

「サフェリア様が言っていただろ、呪いを探すんだよ」


「あらラファイル、今日は一階の移動でしょ。一階は図書館があるんだから、本を運ぶぐらいはできますよ。さあ、一緒に運びましょう」


「ちょっとまてよ。僕は外でゆっくり」


嫌がるラファイルの腕を掴むとシャナーは図書館に行き、本を運び始めた。



その頃、王妃が用意した馬車に乗り込み都に行ったサフェリアはキャサリーヌ王妃に念押しをした。


「王妃様、これだけは守ってくれるかい?」

「なあに?」

「何も聞かないこと」

「何も聞かないって?」


「どうしてそんな仕事をしているのだとか? 呪いってどうするのとか? 聞きたい事は山ほどあるだろうけどね。あの場所では質問はご法度なんでね。ビシュアはかなりのへそ曲がりでね、自分の事や仕事のことをあれこれ聞かれるのが大っ嫌いなんだよ」


「そんなあ、何も聞けないんだったら私は何のためにいくの?」


「簡単なことだよ。ビシュアはね権力に弱いんだよ。あの子にちょっとばかり囁いてくれたらいろいろ聞き出せると思うんだけどね」


「何を囁けばいいの?」


「例えば…ラファイル館の呪い札が他にもないか見に来てくれないかとかね」

「あら、それはこちらのお願いになるんじゃないの?」


「実はねあの子、ずっとあの門の向こう側に興味深々だったんだよ。見かけによらずナルシストでね。顔に似合わずドレスとか大好きでね。似合いもしないのに流行もののドレスばかりきたがるんだよ。な~にね、王妃様直々に、王家の領内に来てほしいなんていわれたら喜ぶだろうからね」


「あら、もしかして、わたくしを誘ったのはそれが目的なんですの?」


「そうだよ。まあ、お金も大好きだからね。それなりのお金をつめばお祓いをしてくれるだろうけど、あの子いつも法外なお金をとるからね」


「そうねえ…それならわたくしのお願いを聞いてくださるなら王宮殿を見せるぐらいたやすいことだわ」

「おや、王妃様も何か願いがあるのかい?」


「ええ、楽しみだわ。要するにうまく誘えばいいんでしょ。わたくしに任せて」


キャサリーヌは自分のひらめきに胸がワクワクしている自分に気づいた。


『あら、こんなにワクワクするのなんて久ぶりだわ、呪い返しが本当にできるのだとしたら皆様どんな顔をなさるのかしら。今から楽しみだわ』


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