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殿下、顔が赤いですよ!

シャナーは昼食を食べ終わると後片付けを済ませ、早速ラファイルが持参した舞踏会用のドレスに着替えた。


(この前のもそうだけど、これオーダーメイドよね。生地も最高級のものを使っているみたいだし、デザインは最新じゃなさそうだけど私好みだし、それにすごく着心地がいいのよね。それにしてもこのサイズウエストとかもピッタリなのよね。胸はさみしいから詰め物しないといけないけど、王妃様ってどんな方なんだろう。私よく考えたら、王妃様の絵姿も見た事がない気がするのよね。この館に一枚も絵がないし、いや正確には一枚あるか…なんだか自分が描かれている絵をみるのは気恥ずかしいけど、だけどすごく上手に描いてあるのよね。まあ知らない人が見たら普通の男女の絵よね。こっそり破いてやろうかとも思ったけど、カミールもそのうちたくましくなるだろうし、そうなったら誰もカミールの女装なんて思わないかもしれないよね。私っていう実在の女の子がいるんだし、あれはあれでありか)


シャナーは着替え終わったドレス姿を全身鏡に映し確認しながら足元で丸くなっているドリマーに話しかけた。


「ねえドリマー、私ってやっぱり可愛いでしょ。ドレスって走り回ったりするには動きにくいけど、やっぱりいいと思わない?」


「ワオ~ン」


ドリマーはめんどくさそうにチラリとシャナーを見てまた眠ってしまった。


「もうドリマーったら、どうせ似合ってないって言いたいんでしょ。わかっているわよ。私は女装は似合わないって。これでも正真正銘の女なんだけどな、どうして胸が大きくならないんだろう」


シャナーは自分の胸をのぞき込んで大きくため息をついた。


シャナーは一応念入りに用意されていた鬘をブラッシングし可愛い大きなリボンをつけ、それを被りもう一度念入りに前や後ろ姿あらゆる場所から見られてもおかしい所はないかチェックし、ウトウトしているドリマーを起こし一緒に部屋を出た。


そのまま食堂に行き、カシスにドリマーを託した。今夜の舞踏会を最後まで出席していると、館に戻るのはかなり遅い時間になるだろうと予想がついたからだ。そうすると、お腹を空かせて待たせることになるからだ。


「カシスさん、ドリマーの餌よろしくお願いします」


「ああ任せな、ドリマー今夜は二人きりだからな、特製のごちそうを作ってやるからな」

「ワン」


ドリマーは言葉を理解して返事しているかのように嬉しそうに尻尾を振りながらカシスに向かって吠えた。


「じゃあ、明日の朝向かえにきます。ドリマーお利巧にしてカシスさんに迷惑をかけちゃ駄目だよ」


シャナーはドリマーの頭を撫でながら言うと立ち上がり、カシスに頭をさげた。

カシスは椅子に腰かけながら笑顔ですっかり女の子らしく変身したシャナーを眺めながら言った。


「楽しんでおいで、まあ、その姿じゃあ楽しめって方がおかしいか、まっ一般の人間には一生出席できない舞踏会だ、どんなものか経験しておくのもまたいいもんだよ」


「そうですね。つまずかないように気をつけて行ってきます」

「ああ、頑張れよ」

「はい!」


シャナーはスカートの両端を持つと食堂をぬけ、ラファイルが待つ玄関ホールへと急いだ。


「お待たせしました」


「!」


ラファイルはシャナーの姿を見て顔を真っ赤にさせた。

それを隠すかのように、急に向きを変え、先に外へと歩き出した。


「遅いぞ、説明は馬車の中でするから、お前も早く乗り込め」


そう言ってラファイルは先に馬車に乗り込んだ。

その後、シャナーとラースが乗り込んだ。


どうやらベン騎士団長は既に先に王宮殿に戻っているようだった。

馬車が動きだすと、しばらくの間沈黙が続き、ラファイルは窓の外を向いていて何も話しかけようとはしなかった。

ラースは何やら、メモ用紙をしきりに眺めている様子で、シャナーに話しかけるという雰囲気ではなかった。


しばらく大人しくしていたが、このまま、何もしらないまま王宮殿に入るのはどうかと思い直しとりあえず横の殿下に話かけることにした。


「あの…」


(どうもこの姿だと緊張するなあ~でも簡単な経緯と作戦を立てておかないと、私舞踏会は初めてだしなあ…全然勝手が違うもんな…殿下のパートナーって言ったら一番の注目の的だろうし…簡単に引き受けるんじゃなかったかなあ)


シャナーは自分のドレスを気にしながら既にこの馬車に乗り込んだことを後悔しながら姿勢を整えて横に座っているラファイルにとりあえず話しかけることにした。


「なっなんだ」


ラファイルは突然のシャナーの声に驚いたような顔をして振り向いた。

シャナーは首を傾げながら横に座っているラファイルの顔をのぞき込むようにラファイルの顔を見たが顔がまた赤くなっていた。


「殿下、熱でもあるのですか?」


シャナーはそういいながらラファイルの額に手を当ててみた。熱はないようだ。


「熱はなさそうですね」

「やっやめろ、なっなんでもないよ」


ラファイルは慌ててシャナーの手を払いのけた。


「そうですか? 無理をなさってはいけませんよ」


シャナーは不思議に思いながらも半年ぶりに向かう王宮殿に緊張していた。


(失敗したらどうしよう。まさか知り合いに出くわすことはないと思うけど)


シャナーが思いを巡らしていると、チラチラと横から顔をのぞいてくるラファイルの様子がどうもおかしいことに違和感を覚えた。


「殿下、今日はどうかしたのですか? いつも変ですが今日は特にご様子が変ですよ」

「変とはどういうことだ? 僕はいつも変ではないぞ、おっお前は鬘をかぶってドレスを着ると別人になる気がするな」


「そっそうですか? そうならありがたいのですが、ところで殿下、王宮殿につくまで時間がございませんので手短に今日、こういう事態になった経緯を話してくださいませんか? その内容によっては対応の仕方がありますから」


「そっそれもそうだな。説明しよう」

ラファイルはシャナーの方に向き直りながら真剣な顔で話し始めた。




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