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あれは誰?

その頃、ラファイルはフラフラしてたまに足がもつれ地面に倒れこんだりしながらも後ろを追いかけてきていたラース達を巻くことに成功していた。


(くそーカミールの奴、僕がこんなにボロボロになって駆けつけたのに、全く喜ぶどころか、厄介払いしやがった。この僕がこんなに思ってやってるのに、どうして邪見にするんだ)


ラファイルは自分でも感情のコントロールがきいていないのが良くわかっていた。

どうしたらいいのかわからなかった。ただ、じっとしていられなかった。


どこに向かっているのか考えるでもなく道なき茂みを歩き続けた。

そして歩き疲れたラファイルはその場にしゃがみ込んで地面にゴロンと横になり空を見上げた。

視界に入ったものは、木々のすき間から見える満点の星々だった。


「そう言えば、昔こんな事があった気がするな。どこだったっけな…」


ラファイルはいつの間にかウトウトと眠ってしまっていた。


******


「ねえ、あなたはどうしてそんな所で寝ているの?」


ラファイルが目を覚ますと目の前には明るい金髪のウエーブがかかった長い髪の小さな女の子がのぞき込んでいた。


「寝ているんじゃない、目をつむっているだけだ」


「あらそうなの? ねえ、そんな所で目をつむっていても楽しくないわよ。それより、私いい所知っているのよ、一緒に行かない?」


その少女はそういうなりラファイルの意見も聞かず、ラファイルの手を掴んで起き上がらせた。

だがおかしい、立ち上がったにも関わらず視線の高さが変わらないのだ。


(どういうことだ、僕が縮んだのか?)


漠然としながらもそんな事を考えながらラファイルはその少女の後に続いて歩き出した。

手を払ってしまうと消えてしまいそうだったからだ。

しばらく歩くと、今まで雑草だらけの場所が急に開けて、緑の芝生が引き詰められた庭園にでた。

ここは確か…そうだ、母上のいるロクスターの保養所の庭園だ。なんで僕はこんな所にいるんだ?)


「あのね、この向こうって砂浜があるのよ。私秘密の通路を知ってるの」


少女はそういいながらまた歩きだした。


「駄目だよ、あの砂浜は近づいちゃいけないんだよ。だって僕は泳げないし」


「馬鹿ね、こんな季節に泳がないわよ。貝殻を拾うのよ、この辺りはたまに大きな巻貝の貝殻が流れついてる時があるのよ。すごくきれいなのがあるの」


少女はそういうと庭園の隅の垣根の下を慣れたように潜り込んでその先に続く砂浜に足を踏み入れた。ラファイルも思い切って垣根に顔を突っ込んだ。


「痛い」


少女と同じように通り抜けようとしたが垣根の枝が邪魔をして砂浜に抜けることができない。その様子を向こう側からケラケラと笑いながら見ている少女の姿だけははっきり見えた。


「その垣根はね、真っすぐ突っ切ろうとしちゃ駄目なのよ。優しくそっと下から押し上げるように進んでいくのよ、そしたら垣根は通してくれるわ」


少女の忠告通りにすると、不思議とすんなり通り抜けることができたのだ。


「ほらできたでしょ」


砂浜で待っていた少女が手を差し出して、引っ張ってくれた。


「ふん! これぐらい簡単なことだ」


「クスクス、おかしな子ね。こういう時はありがとうっていうものよ。さあ一緒に探そう」


そう言って少女はラファイルの手を繋いだまま砂浜を歩きだした。

反論しようとしたが聞いていない素振りで、目をキラキラさせながら砂浜を歩きながら砂浜に流れついている流木に紛れている貝殻を探し始めていた。


どれだけ歩いただろう。

少女は既に大きな貝殻を見つけているのにラファイルは一向に見つけることができていなかった。

長い間探し回ったが結局小さな貝殻一つしかみつけることができなかった。

それをみた少女はラファイルの頭に手をのせて頭を撫でながら言った。


「ねえ、そんなにがっかりした顔をしないで、貝殻拾いは運だもの、また見つけられるわよ」


「運だと、僕に運が無いっていうのか? 僕に手に入らないものなんかないんだ。見てろよ」


ラファイルはそういうとその少女に手を払いのけると、砂浜に這いつくばって一心不乱に貝殻を探し続けた。

日が傾きかけた頃、ようやく巻貝を発見した。先がかけてはいたが白くてきれいな巻貝だった。


「どうだみたか!」



******


振り向くと少女はいなくなっていた。あれはいつのことだったんだろうか?

それとも幻だったのか…ラファイルは目を閉じたまま今みた幻影の少女の事を考えていた。


その時、頬に生ぬるいものがべっとりついた。

ふいに目を開けるとそこにはよだれをべっとりたらしたドリマーとカミールがのぞき込んでいた。


驚いて勢いよく起き上がると突然ラファイルの頬にカミールの手のひらが飛んできた。


ポカーンとして自分の手でたたかれた頬を撫でていると、カミールがラファイルの胸に飛び込んできて、ポカポカとラファイルの胸を叩きはじめた。


「バカバカ! 心配したんですからね。殿下にもしものことがあったらどうしようって、普段みたいにただのわがままならまだいいですけれど、こんな危険な事をするのは止めてください!」


「べっ別に僕みたいな人間が一人いなくなってもこの国は何も変わらないんじゃないのか? きっと父上が亡きあとは別の誰かが王になるさ」


「駄目! 殿下じゃなきゃ、この国は駄目なんですよ。他の誰かが王になったファーマールズ王国なんか自分は見たくありませんからね。そうなったら私はこの国には二度と帰ってきてあげないんですからね」


その声はとても小さくて、ラファイルは一瞬、カミールの声がさっきまで見ていた少女の声と同じ気がした。


(そんなはずはないよな…)


ラファイルは自分に言い聞かせるように何度もつぶやいていた。ようやく落ち着いてきたが、シャナーは離れようとせず、ラファイルの左腕に自分の両腕を巻き付けて放そうとしなかった。


その時、雑草をかき分けて、すごい剣幕のラースが走ってきた。


「ラファイル殿下! 人がどれだけ心配したと思っているんだ!」


ラファイルはまだボーっとする頭でラースの怒鳴り声をただ聞いていた。そしてひとしきり聞き終わると、ポツリと言った。


「二人ともごめん、心配してくれてありがとう」


ラースはその言葉に驚くとともに真っ赤になった顔を隠すかのように後ろを向いた。

その時拍手が聞こえてきた。そこに姿を現したのはベン騎士団長だった。


「なんだ殿下、きちんといえるじゃないか。迷惑をかけた相手に謝るのと、ありがとうをいうのは人間として当たり前の礼儀だからな。さあ、お前ら殿下がみつかったぞ。一端東の塔に集合して王宮殿に戻るぞ!」


ベン騎士団長は後ろに控えている部下たちに向かって指示を出していた。 

彼の言葉で一斉に部下たちはその場を去って行ってしまった。


「ベッベン! ぼっ僕を何だと思っているんだ」


ラファイルはベンの言葉で真っ赤になってしまった。

その様子をニヤニヤしながらベン騎士団長は森中に散らばった仲間にラファイルが見つかった合図の笛を響かせた。


「カミール、せっかくの休暇中悪いが、とりあえず東の塔までその大きな荷物を引っ張ってくれないか? また逃げられても面倒だからな。明日は何としても舞踏会に元気で出席してもらわないとならないかなら、あっもう今日か…頼んだぞ」

「はっはい」


シャナーははっとして二人どころか大勢の人たちに見られていたことをしりパッとラファイルから離れた。

そして、ラファイルに手を指しだした。

ラファイルは照れて赤くなった顔を左手で隠しながらシャナーの手を取りたちあがった。

そして初めて殿下が靴下と靴を片方履いていないことに気が付いた。


「殿下、その足どうしたんですか? どうして片方だけはだしなんですか?」

「あっこれは…」


そう言って、ラファイルは自分のズボンのポケットから丸めた靴下を取り出してシャナーに差し出した。


「ここにくる時にとっさの事だったから靴下しか被せるものがなかったんだ。靴はあせって放り投げてしまってみつけられなかったんだ」

「なんですか? とっさの事って?」


シャナーはラファイルから手渡されたラファイルが履いていたであろう靴下を受け取りながらたずねた。


「グルグの種だよ」

「!」


ラファイルの言葉に驚いたシャナーはラファイルの手を放しその靴下の中をのぞき込んだ。

確かにラファイルの言う通り、靴下の中にはグルグの実と放出したばかりの小さな綿毛のような種がはいっていた。


シャナーは急いでその靴下の口を閉じ、驚きの表情をラファイルに向けた。


「でっ殿下! こっこれ、どこでみつけたんですか?」


「どこって、さっきあちこち歩いていて、そうだ大きな岩があった場所かな」

「そっそこはどこですか」


シャナーは興奮した様子でラファイルの顔に自分の顔を近づけてきた。


「どっどこって言われても覚えてないよ。お前よく寝言で言ってただろ、グルグ~グルグの種って、それだろグルグの花の種」


ラファイルの返答にがっくりと肩を落としたシャナーだったが、目的の種をゲットできてうれしさのあまりまりまた殿下に飛びついた。


「殿下ありがとうございま~す」


ラファイルは顔を真っ赤にさせながら受けとめた。

その時、足元に何かがぶつかった。というより突進してきた。

慌てて下をみると、なんとラファイルの靴をくわえたドリマーがラファイルをみあげながら唸り声をあげている。


シャナーが手に持っていたラファイルの靴下をひとまず自分のポケットにしまいながら、しゃがみ込んだ。

すると、ドリマーがしっぽを振りながら、くわえていたラファイルの靴を放り出し、シャナーにすりよってきた。


「ドリマーお利巧さんだね。殿下の靴を探してきてくれたの? いい子ね。今夜は殿下も見つけてくれたし、本当にお前は頭がいい子。館にもどったらとっておきのご褒美あげるからね」


シャナーは嬉しそうにしっぽを振っているドリマーの頭を何度も撫でてやった。

それを見ていたラファイルが膨れながらすかさず言った。


「おいカミール、僕にはご褒美はないのか?」


「はぁあ? 殿下、殿下の勝手な行動でどれだけの騎士の皆様に迷惑をかけたと思っているんですか? グルグの種を見つけてくださったことは感謝しておりますが、それと今回の王宮殿から黙ってぬけ出した事とは別ですよ」


「それはお前には関係ないことだろ? 僕が言いたいのはだな」

「はいはい、もう聞きたくありません。はい、早く靴を履いてください」


そういってシャナーはさっきドリマーがどこかから拾って加えてきたよだれでべとべとの靴をラファイルの足元に置いた。


「わかった。だったら今渡した靴下を返せよ、こんなべとべとの靴なんか履けるか!」


「殿下…わかりました。自分の予備の靴下がありますから、サイズは小さくですけどのびますから履けると思いますのでそれで我慢して履いてください」


シャナーはそういうと背中に背負っているリュックから予備の自分の靴下を取り出すとラファイルに差し出した。

しかしラファイルはそれを受け取ろうともせず、ましてや靴を履こうともせず不貞腐れたままだった動こうとしなかった。


それをみたカミールがまた大きなため息をつくとリュックから昨夜作っておいたキャラメルを一つ取り出し差し出した。


「殿下グルグの実を見つけてくれてありがとうございました。これはお礼です」


ラファイルはそのキャラメルを包んでいる紙を広げながら、キャラメルを放りこみながら素直に靴下をシャナーから受け取ると靴を履いた。


「仕方ないな、履いてやる」

ラファイルは言葉とは裏腹に顔は嬉しそうに満面の笑顔をたたえていた。


「殿下、殿下はどうしますか? このままラース様と王宮殿に戻りますか?」


シャナーが聞くとラファイルは当然だと言わんばかりに東の塔に戻ると言い出した。


「東の塔に行くに決まってるだそ。さっきカシスのやつがなんかいい匂いのする鍋を作っていただろう? あれを食おう。お腹がすいたしな」


「殿下あれは駄目ですよ。あれはカシスさんと自分の今日の夕食なんですからね」


「僕だって何も食べてないんだぞ、お前の分の半分は僕の分だぞ」


「はあ? 嫌ですよ。王宮殿に戻ってから宮殿の誰かに何か作ってもらえばいいじゃないですか!」


「なんだと、今何時だと思っているんだ。もうみんな寝ているに決まっているだろ! それともお前が作ってくれるのか?」


「すみません、耳が遠くなってしまって…何も聞こえませんでした」


シャナーはラファイルを掴んでいる腕は離さなかったが、開いている方の手で片方の耳をふさいでみせた。


「お前の耳は便利な耳だな」


そうして二人は東の塔に着くまで延々と二人は口論しあった。

だが、ラファイルは東の塔につくまで絡まっているシャナーの手を振りほどこうとはしなかった。

そしてシャナーもまたラファイルの腕から手を放そうとはしなかった。



二人の後をラースとベン騎士団長たちもやれやれといった様子で何も言わずに後に続いた。

東の塔に戻ると、カシスが大鍋にはいった大量のキノコ汁がちょうどいい具合に出来上がっていて、その場にいたラファイルとシャナーや騎士たちを含め総勢二十人がカシス特製鍋を堪能し、またそれぞれの持ち場に戻って行った。


ラファイルも素直に王宮殿へとラースと共に戻って行った。

シャナーはその夜は予定通りに東の塔の屋上で寝るつもりだったが、カシスが館に戻ろうと言い出した為にもう既に真夜中になっていたがカシスと共にラファイル館に戻ることになった。






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