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この森はすごいんですね!

時間は少しさかのぼる、ラファイルが王宮殿から脱走を企てようと企みながら来城してくる客の応対をしていた頃、朝カシスと共に森に入ったシャナーはうっそうと茂る森の中を存分に堪能していた。


「すごいですね。いつもあまり長い時間滞在できなかったので下ばかりみてましたけど、様々な木々があるんですね。これだけの種類の木々の森を見たのは初めてかも~」


シャナーは多くの種類の木の一つ一つ手でふれ、上を眺め葉の様子を観察しながら見上げ、興奮した様子で喋っていた。


木々の下にはコケなども生えている場所も多くあったり、小川が流れていたり、木の葉の絨毯が敷き詰められている場所や、伐採された切り株の横には苗木が植えられていたりと、放置されている森ではないことが見て取れた。


「そうさ、この森は人の手によってつくられた森だからな、枯れた木や病気を持つ木などがないか、より自然体に近い森のように見えるが、見回りは定期的にされているんだよ。わしらが狙う。雑草やキノコ類は自然発生したのがほとんどで管理はされていないけどね」


「そうだったんですね。ここの自然達は生き生きしてますもんね。自分もとり過ぎには気を付けます」


「お前さんは大丈夫だろう。薬草を摘む時でも全てとるような事はしないだろ? いつも間引くようにしてるのをみて感心してたんだよ。人間の悪い所はやり過ぎることだ。人間がこの世界で一番偉いんじゃない、生かされていることを忘れちゃいかんのだ」


「そうですね。全ての生きとし生けるものに感謝の気持を持つことが大切だと、自分の師匠もよく言ってました」


「まあ、何事もほどほどが大切ってことだな。確かこの先にキノコが生える木があった気がするんだが」


カシスも楽しそうに森の中に分け入っていた。

森の中を日中夢中になって散策した二人は袋にさまざまな食用キノコや薬草などもたくさん摘むことに成功していた。

気が付くともうずいぶん夜が更けてしまっていた。


「すごい量ですね」

「ああ、今年は忙しくて収穫にこれなかったからかなり増えちまっていたようだ」

「あのこれどうするんですか?」


「これか? 今夜のわしらの飯以外は持ち帰って乾燥させておくんじゃよ、そうすると長く保存がきくからな」


「薬草の保存方法と同じですね」


「そうなるな。さて、後はお前さんの探し物だな」

「そうですね。でももうすぐ日が沈みそうですし、そろそろ寝床を見つけた方がいいんじゃないでしょうか?」


「そうだな…この森には危険な猛獣がいるって聞いたことがないからそこらへんで横になっても大丈夫だろうが、よく考えたら、今夜はこの王宮領土全体の警備が厳重になっているからな。森の中で火を焚くと万が一森が森林火災と誤解されてさわぎになったら大問題になっちまうなあ。うかつだったな」


「そっそうでしたね」

「まったき火はまた別の休暇にするとしようか」

「じゃあ館に戻りますか?」


「いや、お前さんも知っての通りこの王宮領内の岬は南側の大陸に繋がる都がある南側は東西に森が広がっているだろ。その森の向こう側には海岸まで東西に長い塀が築かれていてな西と東の端には見張り塔があるんだよ。そこに行けば簡易的な調理場もあるし、寝床は借りれないだろうが屋上にあがるとな海と満天の星が見えて最高なんだよ。あそこなら地面を蜘蛛や毒虫が這うこともないだろうし、館よりは野宿の気分を味わえると思うんだが。それに取れたての木の子汁も作れるしな」

ウインクしてみせるカシスにシャナーも頷いた。


「いいですね。波の音を聞きながら満天の星を眺めるなんて最高じゃないですか! それに朝になったらまた捜索をすぐに開始できますしね」


「いいアイデアだろ、明日は馬車が通る抜け道を避けて中央と西側ルートを探してみよう。大方東側はそれらしい場所は捜し尽くしたしな」


「すみませんカシスさん、自分の捜索に付き合ってもらって」


「なあにお互い様だ。今日はキノコ採りを手伝てもらったしな」


そう言ってカシスはシャナーに向かってウインクしてみせた。

つられてシャナーも笑顔を向けた。

カシスと過ごしていると祖母のサフェリアを思い出して懐かしく会いたくなってくるシャナーだった。


(あああ~また旅に行きたいなあ…ここの生活は食事はおいしいし、ベッドはフカフカだし、お小遣いもたまって充実していて楽しいけど、やっぱり、おばあ様と資金が底をついてパンを半分ずつかじりながら船底でお腹を空かせて旅をしたりしてる方がスリルがあって楽しかったな。やっぱり今のうちにお父様にお願いして、おばあ様の所にまたいられるようにおばあ様と連絡をつけてもらおう。いつもおばあ様の所に乾燥薬草送っているけど、きっと管理人さんが倉庫に放りこんでいるだけだろうしな。一端旅にでると中々帰ってこないもんなおばあ様)


シャナーは半年前までの自分の生活を懐かしく思い出しながら、前を行くカシスの後をついて歩いた。 

かなりの時を歩いて木々のすき間からようやく塔らしきものが見えてきた。

一日中歩き回ったせいか少し疲れがでてきたのか大きなあくびがでた。


「カミールあれがそうだ。見張りの当直がいると思うが奴らにキノコ汁を食わせてやるっていえば泊めてくれるだろ」


カシスは先に塔の下まで小走りにかけて行くと、下から灯りがともっている上の階の見張り場の辺りに向かって声を張り上げた。


「おーい! 誰かいないのか~!」


カシスが声を張り上げると、灯りがともっているかなり高い所に設置されているらしい解放感のある窓らしき場所から見張りの騎士顔を出した。


「お前は誰だ!」


「わしはラファイル殿下の館で料理長をしているカシスだ。今日は非番で森にきたんだが、明日も朝から森ですることがあってな、一晩ここの屋上で寝させてもらえないかと思ってな。キノコを収穫しているからおいしいキノコ汁を振る舞うからさ」

「ちょっと待て!」


見張りの騎士がそういって窓から顔をひっこめるとすぐに塔の入り口の扉が勢いよく開いた。


「おっお前がカシスか!」

「そっそうだが」

「一人か!」


やけに慌てた様子の騎士の態度に不審に思いながらも首を横に振って後ろの方から歩いてくるシャナーを指さして言った。


「同じ非番だった殿下の世話係のカミールと一緒なんだが」

「カミールだと! おい!」


驚いた騎士の一人が後からおりてきた同僚の騎士に向かって何かをつぶやいたかと思うとカシスをすり抜け、後から歩いて近づいてきたシャナーを挟み込み両腕を羽交い絞めにした。


「えっえっ! あっあのこれはいったい」


シャナーは突然の事でパニックになりながら両側をがっちりつかまれて身動きできないこの状況を頭の中で整理しようとした。


「ちょっとまってくれ! 彼は不審者ではないぞ、正真正銘の王宮の使用人の一人だ。あやしいもんじゃない」


あわてて、騎士たちに説明をしようと駆け寄ってきたが、騎士たちにはね退けられ地面にしりもちをついてしまった。


「お前がカミール・ラベリーに間違いないな」

「はっはいそうです。あの…自分が何かしたのでしょうか? 野草の収穫許可なら陛下からいただいています」

「いいから、中に入れ! おい、騎士団長に見つかったと連絡してこい」


さわぎを聞きつけて集まった数人の騎士にシャナーの腕を掴んでいる騎士の一人が命令をした。


(えっ騎士団長ってベン様? えええ? もうわかわかんない! いったい何がなんなのよ~)


シャナーは声にならない叫び声をあげながら抵抗しようともがいたが両腕の拘束は解かれそうになかった。




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