第25話 砂糖注意と乙女心? 後編
本当に遅くなってすみません。
予定していた以上に時間がかかりました。
「あちゃー、ちょっと買いすぎちゃったね」
困った顔で言ってきた姉貴の手には、両手で抱えまいな程の焼きそばや菓子等の食べ物があり……俺はその光景を一瞥し息を吐き出して答える。
「姉貴があれもこれもと取って買うからだろ。つーか本当にこれどうすんだよ。まさかと思うが全部食うつもりか?」
「ん~、食べようと思えば食べられるよ。でも、こんな量食べてるの見られるのって恥ずかしいよ」
(いやいや見られるのが恥ずかしいって、それ以前にその量食えば完全に太――――――)
姉貴の返答にヒキながらも内心ツッコミをいれようとある言葉を連想しようとした瞬間―――――
「み・ら・い♪」
――――――明るいが背筋が凍りそうな声によって遮られた。
その声に冷や汗を流しつつ立ち止まるともう一度名前を呼ばれた。
「未来、いま何を考えてたのかな?お姉ちゃん気になっちゃうな~♪」
「ごめんなさい。謝りますので許して下さい」
「……今回は許すけど次はないからね?」
謝罪を受け取ってもらえたようで、先程までの圧が消え小さく頬を膨らませた状態の忠告ですんだ事に感謝しながら答えた。
「肝に命じます」
その言葉で終わりとでもいうように姉貴が歩きだし俺も遅れてその後をおった。
そうしてお互いに歩いているとどんどん人通りが少ない場所に行ってる事が気になり聞いてみる。
「なあ、姉貴?」
「ん?何かな」
「いや、屋台や人がいない方に向かってるから気になってよ」
「ああそれはね。さっき言ったようにこの量食べてる所を他の人に見られたくないから♪っていう理由もあるけど実際は……未来と少しお話したいからだよ」
最初は照れたように答えたが、最後に言ってきた言葉の際に……罪悪感と怒った顔が混ざった複雑な表情で見られた事で、二人で回るとなった時に感じた違和感に納得した。
「……気付いてたのか?」
俺自身、姉貴にそんな顔をさせてしまった事にバツが悪いとばかりに頭を掻きながら……訪ねると俯きながらも「うん、気付いてた。……後はついてから話すね」と返してきた。
(確かにここじゃ人がまだいるしな。……時間も余りねえし急ぐか?)
いまだ俯きながらゆっくり歩む姉貴を横目で見つつ、思考をまとめ終えると「なら早めに行くか」と返し、姉貴から荷物をとり少しばかり歩を早める。
「え?荷物――――」
「このままだと時間がかかるだろ。それに、こっちも話したい事があんだ。だからさっさと目的の場所に行くぞ」
抱えていた物が無くなって驚くが、すぐに俺が持っていると理解し……持ち直そうとかけより言葉を発しようとしたが、それを遮り荷物を返すつもりがない事を伝える。
「……分かった。…ありがと」
何を言っても返すつもりがないと分かったのか、不承不承といった感じで頷き、間を開けて言ってきた礼の際には……わずかではあるが陰鬱な雰囲気が消えていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ついたよ」
「途中から予想がついてたが、…やっぱりここか」
呟くように言いながら久しぶりに来たこの場所を見回す。
周りには、冬でも色褪せていない葉が外界を遮断するように周りを覆い尽くしているが、その中に並ぶ形で咲き誇っている冬桜と椿の花があった。
(じいさんの葬儀以来だから六年ぶりか。…少し草が多くなった以外は……ほとんど変わってねえな)
懐かしさに感じ入るものがあり、ほんの数秒だが気を抜いて眺めこんでいた。
不意に姉貴はどうなのだろうか。と思い、横にいる姉貴に視線をやると、微笑をうかべながら目を細め見いっていた。
姉貴自身も懐かしんでたらしく、いつもなら一瞬で気付いていた俺の視線にも反応せず眺め続けていたが、目的を思い出したのか……一度ゆっくり瞬きをしてからようやく視線に気付きこちらを見る。
「あはは、ごめんね気付かなくて。…それじゃ、いつもの場所に座ろっか」
「いつもじゃなく前までの間違いだろ」
「フフ、細かいことばかり気にしないで、ほら…座ろ」
クスっと可笑しそうに笑いながら腕を掴み引っ張って行く。それにさからわず苦笑しながらついていき、真ん中に所々こけが生えているが普通の物以上に白く大きな石が鎮座している場所に近付く。
お互い一息で石のへこみに腰掛けると何も言わずに呆けたように二つの花を眺めてる。
「…それじゃあ――――食べよっか♪」
「いやそこは普通に話からだろ!?」
「だってそれを先にしちゃったら食べ物が冷めちゃうもん!それにお腹すいたもん」
「絶対に後半の理由が本音だろ!…はぁ~、身構えてた俺が馬鹿に思えてきた。つーかヨダレ拭け腹減らし娘」
口の端しからヨダレが垂れかけさせながら、俺達の間に置いた食い物を凝視している姉貴の姿を……呆れたように顔を覆いながら、横目で見つつ後ろポケットに入れてたハンカチをわたす。
姉貴は、ハッ!とした表情になり差し出したハンカチを急いで取り、慣れた仕草で匂いを嗅いでヨダレを拭き懐にしまい「ありがとう♪」と気恥ずかしそうに言ってきた。
(つっこむなつっこむなつっこむなつっこむなつっこむな)
流れる仕草で行われた変態行為にキレそうになるが、なんとか怒りを飲み下して先に進めようと口を開く。
「……礼はいいからさっさと食うぞ。冷めたのは食いたくないんだろ?」
「うん♪それじゃお姉ちゃんはこの焼きそば貰うね♪」
「なら俺はこれ貰うな」
「うんいいよ♪あ、この焼きそば思いのほか美味しい!これなら他のも――――」
そんな会話を挟みながら食べ進めていきある程度食い終わった所で聞く事にする。
「結構食ったな」
「そうだね。未来は余り空いてなさそうに見えたんだけどね」
「ああ、俺もそう思ったんだがな。……まあその辺はどうでもいいとして姉貴――――――心配しなくとも支払った対価は少ない。だから大丈夫だ」
姉貴の方は見ず世間話でもする口調で伝えると、横から息を飲む声が聴こえたが俺は何も言わず姉貴が話し出すのを待つと、その雰囲気を感じ取ったのか一拍して話し出した。
「……ハハハ、まさか未来から言ってくるとは思わなかったな」
「姉貴からのを待ってた時間がかかるからな」
「ひどい!いくらお姉ちゃんでも舞が始まる直前にはきりだしてたよ。……多分」
「遅いうえにそれでも多分かよ」
「むー、あげあし取らないでよ。意地悪」
「あげあしじゃなく正論だ。それに意地悪でもない」
「……本当に異常はないの?」
そんなたわいもない会話を続けていると、意趣返しとでもいわんばかりに聞いてきたが、あらかじめ予想できていた為……特に慌てることなく姉貴の方を向いて答える。
「…ああ、ほぼない。しいて言うなら少しばかり視界が歪む事と鈍い頭痛位だ」
「え、待って!それ本当に大丈夫!待ってて今回復の魔法を」
「待て待て、一度落ち着けって本当に大丈夫なんだからよ。それに俺のこの代償からくるものに姉貴の回復魔法も治療も意味をなさない事を思い出せ、このアホ娘」
「でも、それでも気休め位にはなるはずだから。だからお願い」
「……はぁー、分かったなら頼む」
断れば泣くとでも言いたげに目を潤ませ頼んでくる。その事に寧ろお願いするのはこっちだろ。と思いながらため息をついて頼んだ。
聞き入れた事にホッとした表情になるとすぐに笑顔になり、自身の膝を叩く。
その時点で何を言いたいのかが分かり、眉を潜め断ろうかと思ったが自分から頼んでてどうかとも思い少しの逡巡後、ゆっくりと倒れこむ。
迷っている間に言霊を唱えていた様で膝に頭を置くと目元を覆う形で手が置かれた途端……朝と同じ温かい物が流れ込んでくる。
目を瞑っていても映り込んでくる光は眩しいが、温かくどこか優しさを感じさせ痛みを和らげてくれる。
(対価でできる痛みに回復魔法や薬は効かない筈……なんだがな)
「不思議なもんだな」
「ん?なにがかな」
「実際に痛みはひかず続いてるんだがな……何故か痛みが和らいでいく様に感じる」
「それはね――――未来を思い続けているからだよ」
「ッ!?!」
慈愛に満ちた笑みを浮かべ、問いに答えた姉貴に不覚にも心臓が高鳴り顔が熱くなる。
「フフ、未来の顔真っ赤だよ」
「いちいち言うな」
いつもの調子で俺をからかってきているが、その顔はいまだ慈愛にみちた笑みのせいでなにも言えず、顔を横に背けぶっきらぼうに返した。
ただそれがよくなかったのかクスクスと笑い、頭を撫でながら「はいはい、ごめんなさい」と言ってくる。そのせいで恥ずかしさに拍車がかかり更に顔が熱くなる。
(いつもは残念美人のくせに、こんな時だけ本当に綺麗になるなよ!……はぁー、いつもこれなら男も放っておかないだろうに……ただこれも、今日で終わるんだよな)
目を閉じながらそんな事を考えていると、不意に頬に柔らかい物が当たりなにかしら言おうとしたが先に姉貴が口を開く。
「ねえ、本当に大丈夫なんだよね?」
「……さっきも言っただろ。大丈夫―――――」
「それはわかってる!分かってるけど!――――やっぱり不安がとれないよ」
俺の言葉を遮りながら、叫ぶように言われた言葉に最初は意味が分からなかったが、最後の弱々しく言われた言葉と触れている手の震えでなんのことか分かり訪ねる。
「……それは朝に言ってた夢のことか?」
「うん。……あの時、絶対に破らない約束をしてくれたことは理解しているよ。……でも、あの力が今まで外れた事がないのも確かな事なんだよ。だからどんなに心であの約束を肯定しようとしても不安が消えないよ」
言い終わると同時に頬に温かい水滴が落ちてくる。俺は、置かれている姉貴の手をどかし起き上がると「ぁっ」と小さく声をあげ俺の顔を見てくる。
朝と同じで今にも不安で押し潰されかけそうになっている姉貴を抱き締める。
「姉貴がどれだけ不安になっているか俺には分からない。俺にはその能力を持っていないからな。それでも不安で押し潰されそうになるのが、どれだけ怖いかは俺にもわかる。だから不安が消えないなら俺を見ろ」
「未来……を?」
「そうだ。能力で見えた未来でも約束でもなく俺を見てろ。俺は姉貴のおかげで不安が消えた。姉貴がいつでも側にいて前にいてくれたからこそ俺は不安にならずにいれた。だから今だけでいい、俺だけを見てくれ」
「ウッ、う、ん。エグッ、うあああああ」
そうして押さえきれなくなった不安を吐き出すように顔をうずめ泣き出す。それを俺は何も言わず頭を撫で続ける。
どれだけの時間撫でていたのか分からなくなった所でスフィアのアラームが鳴ったが、途中から泣き止み抱き付いてた姉貴は離れようとしない。
「あー姉貴、この状態だとスフィアが取れないからどいて――――」
「嫌!」
「いや嫌じゃなくて、彩芽達からかも「嫌ー!」おい、頼むから!腕にはくっついててもいいから、だから少し退いててくれ!」
「むー、分かった」
そう言ってしぶしぶと腕に抱き変え、すぐにスフィアを取ろうとしたがタイミング悪く切れ表記を見ると案の定、麗奈の方だった。
かけなおそうと思いコールを押そうとした瞬間またかかってきた。
「今かけなおそうとした所だ。でれなくて悪い」
『なにか問題でもあったの?』
「いや、姉貴のせいだ」
『あーうん。納得した』
最初の心配そうな声からいってんして、呆れた声で納得され少しばかりいままでの行動を反省しながら返す。
「それで、どうしたんだ?」
『あーそうだった。後15分程で舞の時間になるけど大丈夫なの?』
「は、まじか!?すまん教えてくれて助かった!姉貴を連れてすぐ戻る」
『分かったわ。遅れないようにね』
麗奈の声に「はいよ」とだけ返して通話を切り時間を見ると確かに後十七分ほどで始まる時間になっていた。
「姉貴あまり時間がないから急いで戻るぞ」
「あと一分いや二分でいいから抱き締めて撫でて」
「いや時間が「ダ……メ?」ウグッ!……分かった。だけど二分だけだぞ」
なんとか説得しようとしたが、涙目の上目遣いに何も言えず要望を聞き入れると笑顔でおもいっきり抱き締めてくる。
「エヘヘ♪未来♪未来♪」
(ヤバい、まじで可愛い。なにこの子本当にあの姉貴か!?絶対別人だろ。つーかこれ祭事は大丈夫なのかよ)
子供のように胸板に顔を押し付け笑いながら楽しげに俺の名前を呼ぶ姉貴に驚愕しながら頭を撫で続ける。
「おいそろそろ時間だからいくぞ」
「うぅ、分かった」
「姉貴、大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫だよ♪未来も見てくれるんだよね?」
「ん?ああ、まあそりゃあ当然みるぞ」
「うん♪なら、しっかり見ててね」
「?どういう意味だ?」
意味が分からず首を傾げていると、何も言わず抱き締めを止め石から降り、振り返ると―――――
「未来を思い続けて舞うからだよ」
――――――熱を含んだ目で俺を見詰め妖艶に笑う。
俺はその姿にドクン!と心臓が高鳴りそれを隠そうと「分かった。それを見るためにも早く向かうぞ」と言って逃げるように姉貴を抜いて足早にいく。
姉貴は、笑顔でその後ろを追いかけ手に飛び付きそれをひきはなそうとする俺は懐かしきその場を後にした。
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次回は5月になります。




