↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
24/27

私はブラック気質じゃありません!!

 朝の工房で、私は鼻歌を歌っていた。


 ──作業台の上には、リーナさんの杖。

 その先に取りつけたマナ結晶の中で、小さな光がゆらゆらと揺れている。


 ガルドさんの盾に組み込んだ魔法を保存する術式。

 あれを杖にも使えば、前もって仕込んでおいた魔法を詠唱なしで撃ち出せるのでは?

 そんな思いつきのもと、ついでに何種類も保存できたら楽しそう、とか、どうせなら合体魔法なんて楽しそう──なんて勢いで悪ノリしていた結果、とてつもない規模の魔法陣を作ることになってしまったのだ。


 作業台の端には、お茶が冷めないカップと勝手に転がり続けるボール。

 どちらもセレスティアの素材で作ったものだ。

 他にも冒険者たちから預かったいくつかの武器まで──どの冒険者たちも、気が向いたらでいいなんて言いつつ、とても面白そうな"夢"を語ってくれるものだから、うっかり乗せられて張り切りすぎてしまっているのが実情。


(ふふふ。作りたいものが、次から次に浮かんでくるわね……!)


 おかげで作業台は、ここ数日で試作品だらけになっていた。



 私の手元を、リーナさんがさっきからじっと見ている。

 一緒に楽しそうに悪ノリしていたのも今や昔。

 魔改造されまくった杖を前に、リーナは若干呆れ気味だ。


「エリシア。もう、それで完成?」

「もうちょっとだけ! そうだ、続けて撃つときに連射できるように──」

「またヤバい機能足そうとしてる!?」

「だってリーナさん、これほど立派な素材を活かしきらないのは犯罪ですよ?」

「世の中の魔道具士が、全員犯罪者になっちゃう!」


 せっかく手に入った最高級の素材たちだ。

 まだ試せることがあるのに、ここで終わりにするなんてもったいない。


 私は、新しい紙を引き寄せた。

 その紙の上に、リーナさんの手がぺたりと置かれる。


「……その前に。エリシア、昨日はちゃんと寝たの?」

「寝ましたよ。……そこの椅子で」

「一昨日は?」

「……夜って短いですね?」


 リーナさんが、天を仰いだ。

 そして、こてりと首を傾げると。



「……エリシアって、ブラック気質?」


 ──ブラック気質?

 ブラック気質?

 ブラック気質──。


(なわけあるかい!!)


 ぶんぶんと首を横に振った。


 私は自由気ままなスローライフを送るのだ。

 誰かに働けと言われたわけでもない。締め切りだってないし、やめようと思えば、いつでも──。


 ……いつでも?


(全ッ然、いつでも、辞められてない!!)


 なんと恐ろしきや、魔道具の誘惑。

 私は愕然としながら、工房の中を見渡している。


 ──コロンと転がったエナジードリンク(雑貨屋で売っていた)が視界に入る。

 二度と手を出すまいと誓ったあれを、当たり前のように飲み干していた!



(こ、これ……うっかり過労死した前世と、同じような生活だ!?)


「三食昼寝オリハルコン付き! リーナさん、今日は久しぶりに羽を伸ばしましょう!!」

「ん。それがいい」

「ということで、いざ素材探しの旅へ! もっかいセレスティアに出発です!」

「……休む、とは?」


 リーナさんが、首を傾げたまま固まった。


「休暇ですよ? 景色のいいところを散歩して、好きなものを拾って帰ってくるんです」

「ひえっ、エリシア本気だ……」

「……楽しいは正義!!」


(前世でも同じこと言いながら徹夜でゲームしてる人は、山のようにいたしね!)


 もういっそ、開き直ることにした。



 リーナさんは、何か言いたそうに私を見ていたが。


「ガルドたちには、私から話しておく。出発は明日にしよう」

「分かりました。なら、おやつを用意しておきます!」

「休んで!?」


***


 リーナさんが去った工房にて。

 私はピクニックに持っていく、おやつを考えていた。


(蜂蜜パンも捨てがたいけど、バターたっぷりのクッキーも。でも、果物のタルトも───)


 一番の制約は、やっぱり保存が効く必要があるということだろうか。

 でもゲームでは、収納ボックスに入れて、なんでも持ち歩いてたしなあ。

 あの世界でも、特に美味しそうだったのは──


(港町リモーネ特産のシャーベット!! セレスティアの絶景を見ながらアイスクリームが食べたい!!)


 私は紙を引き寄せ、持ち手のついた小さな箱を描いた。

 内側には金属の板をはめて、蓋はぴったり閉まるように。

 そして、冷やすための魔法陣は──。



(そうだ! あの保冷箱、ちょっと改造すれば使えるのでは?)


 私は、ふと実家で設計していた術式を思い出すのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読み頂きありがとうございます!!
ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。