共闘 (2)
異世界ゆうしゃA ~亡国の残響~ 第四章
戦いが始まった。
レイオンがいた。
ヴァルガン兵がいた。
ライディスがいた。
レグルスの魔導兵がいた。
エルクとリアとノクトがいた。
ルシラがいた。
全員が同じ敵を向いていた。
レイオンが剣を振った。形の不安定な存在の安定した瞬間を狙った。消えた。
隣でライディスの魔導兵が風魔法を撃った。別の一体を止めた。
「そこだ」エルクが叫んだ。
レイオンが向かった。
剣が入った。消えた。
「ライディス、左から三体来る。まとめて止められるか」
「試みる」
風魔法が広がった。
三体が止まった。
「リア、左から」
リアが走った。大剣を一振りした。三体がまとめて消えた。
「相変わらず使えるわね、残響」ルシラが上から言った。観察しながら言っていた。
「今は邪魔しないわよ、安心して」
「信用しない」エルクが言った。
「それでいいわ」
ノクトが大規模な魔法を撃った。
一度に十体が止まった。
全員で叩いた。
消えた。
「強い」レイオンが言った。
「第四軍も戦えないわけではない」ノクトが言った。
「改めて言うが、お前は本当に何者だ」
「敵だ」
「それはわかっている」
「今は仮の味方だ」
「それもわかっている」
「では十分だろ」
レイオンが苦笑した。
戦いながら苦笑した。
轟音と共に、ライディスの剣に魔導兵の風魔法が集まる。
ライディスは一振りで竜巻を起こした。不安定な存在の動きを一瞬止めた。
ヴァルガン兵が一斉に動いた。複数体を叩いた。
「よし」ライディスは次の攻撃へ構えた。
リアとノクトが並んでいた。
リアが一体を押さえた。ノクトが魔法で固めた。リアが斬った。
「また組むことになるとは思わなかった」リアが言った。
「互いにな」ノクトが言った。
「次は組まない」
「そうだな」
二人が別の方向へ向かった。
形の不安定な存在が減ってきた。
門の裂け目はまだ広がっていた。
「中心へ行く必要がある」エルクが言った。
「門の前か」リアが言った。
「残響と王家の力で、何かできるかもしれない。エルナトでやったことの——」
「大きい版だな」リアが言った。
「そうだ。でも今回は制御できるかわからない」
「やるしかない」
二人が門へ向かった。
ライディスが通路を開いた。魔導兵が形の不安定な存在を押さえた。空間が開いた。
エルクとリアが門の前へ立った。
門が鳴っていた。
光が強かった。
目が痛かった。
「やるか」エルクが言った。
「やる」リアが言った。
エルクが《残響》を開いた。
門から来る情報を受け取った。
流した。
でも全部は流さなかった。
門と繋がった感触があった。
引き寄せられる感触があった。
リアが右手を上げた。
胸元の紋様が光った。
王家の紋章が光っていた。
銀色の光が、腕を伝っていた。
門へ向かって伸びた。
残響と王家の力が、門の前で重なった。
光が変わった。
青白かった光に、銀色が混ざった。
「おお」バルゼディスが言った。
遠くから見ていたバルゼディスが、声を上げた。
驚いていた。
「そうか…これが——」バルゼディスが言った。
「先生」レイオンが言った。
「開く者と閉じる者だ」バルゼディスが言った。
「二つが揃った時、門はどちらでもなくなる。開くも閉じるも選べる状態になる」
「ならリアが閉じれば」
「それだけでは足りない」バルゼディスが言った。「何かが——何か別の要素が必要だ」
門の光が揺れた。
安定しかけた。
また揺れた。
「もう少しだ」エルクが言った。
頭が痛かった。《残響》が限界に近かった。
「持つか」リアが言った。
「持つ」
リアも限界に近かった。腕が震えていた。でも止めなかった。
その時、ノクトが止まった。
戦闘の最中だった。
形の不安定な存在が来ていた。
でもノクトが止まった。
門を見た。
門の向こうを見た。
顔が変わった。
今まで見たことのない顔だった。
余裕がなかった。
動揺があった。
「来るな」ノクトが言った。
小さい声だった。
でもエルクに届いた。
「まだ来るな」
誰かへ向けた言葉だった。
門の向こうの誰かへ向けた言葉だった。
「ノクト、何が来るんだ」エルクが言った。
ノクトが答えなかった。
門を見ていた。
答えなかったことが答えだった。
ルシラが上から言った。「ノクトが動揺している。初めて見た」
「それがどういう意味か分かるか」エルクが言った。
「わからない。でも良いことではないわね、確実に」ルシラが言った。
門の光が、また一段強くなった。
裂け目が大きくなった。
向こう側の霧が晴れてきた。
霧の向こうに、影があった。
大きくなかった。
不定形だった。
人型だった。
立っていた。
大きく歪んで輪郭が透明だった。
エルクは《残響》を向けた。
残響と門が繋がっていた。
その接点から、過去が来た。
剣を持つ青年が見えた。昨夜も見た映像だった。
今度は、現在が重なった。
影が重なった。
「あ」
エルクが言った。
言葉にならなかった。
昨夜見た青年の動き方と、影の動き方が、同じだった。
右足が先に出る。
大きく踏み込む前に、一度重心を後ろへ引く。
同じ癖だった。
「まさか」エルクが言った。
「何が見えた」リアが言った。
エルクは答えられなかった。
答えが出ていなかった。
影が近づいていた。
霧がさらに晴れた。




