共闘 (1)
異世界ゆうしゃA ~亡国の残響~ 第四章
門が開いていた。
裂け目が大きかった。
夜明けの光が届く前から、門の光の方が強かった。青白い光が遺跡全体を照らしていた。
空間が歪んでいた。
門の周囲だけ、空気が違った。熱くも寒くもなかった。でも何かが違った。肌が反応した。何かに触れている感触があった。
「いよいよまずい」バルゼディスが言った。
何度か言っていた。でも今回の声は違った。
「どのくらいまずいんだ」レイオンが言った。
「完全起動まで時間がない」バルゼディスが言った。
「どのくらいかはわからない。でも今日中かもしれない」
「今日中か」
「あるいはもっと早い」
「レイオン王、バルゼディス様ご無事ですか」そこにヴァルガンの兵が数名到着した。
「ガルゴン様からの命で護衛に参りました。到着が遅れて申し訳ありません」
「そうか」レイオンが言った。
その時、遺跡の外で音がした。
地面が揺れた。
また揺れた。
「これは」エルクが言った。
「門が引き起こしている地震だ」バルゼディスが言った。「門の活性化が地層に影響している。このまま——」
また揺れた。
今度は大きかった。
遺跡の壁から石が落ちた。
「周辺が崩壊する」ノクトが言った。
「門が開ければ、それで止まる可能性もある。だが開ければ——」
「世界が混ざる」エルクが言った。
「そうだ」
全員が黙った。
外から音が来た。
足音だった。
大量の足音だった。
「誰が来た」レイオンが言った。
警戒した。
剣を握った。
遺跡の入り口から人が入ってきた。
軍服だった。
レグルスの軍服だった。
先頭に、白銀の法衣を着た男がいた。
「ライディス」エルクが言った。
ライディスが遺跡の中を見渡した。
全員を確認した。
ノクトを見た。
少し止まった。
「来たのか」エルクが言った。
「届いていた」ライディスが言った。「門の反応が、レグルスの観測網にも届いていた。今ここへ来ない理由がなかった」
「門を奪いに来たのか」レイオンが言った。
「違う」ライディスが言った。「門が完全に開けば、何が起きるか理解している。今は——」
少し間を置いた。
「今は敵ではない」
レイオンが警戒を解いていなかった。
エルクがレイオンを見た。「信用しろとは言わない。でも今は同じ方向を向いている」
「また同じことを言う」レイオンが言った。
「また同じ状況だからな」
レイオンが少しの間、考えた。
「わかった」レイオンが言った。「今は共闘だ」
ライディスが頷いた。
軍を動かした。
レグルスの魔導兵が遺跡に展開した。門の周囲を囲む形を取った。
「何をする気だ」バルゼディスが言った。
「封印を試みる」ライディスが言った。
「アルテフェインから聞いた手法がある。完全には無理でも、時間は稼げる」
「どのくらい」
「わからない。でもやらないよりはいい」
バルゼディスが少し止まった。「それはそうだな」
空に、魔法陣が展開した。
また来た。
紫と黒の魔法陣だった。
全員が上を見た。
「ルシラか」リアが言った。
「そうだ」ノクトが言った。
「また戦うのか」レイオンが言った。
魔法陣から降りてきた。
ルシラだった。
浮遊円盤だった。
でも今回は違った。
魔術兵が少なかった。十人ほどだけが降りてきた。
攻撃の隊形を取らなかった。
ルシラが門を見ていた。
「これは」ルシラが言った。
いつもの余裕がなかった。
「想定以上ね」
門を見つめていた。楽しんでいるわけではなかった。純粋に驚いていた。
「攻撃するなら相手をする」エルクが言った。
「しないわ」ルシラが言った。目を門から離さなかった。「これは観測しなければ」
「観測?」
「第二軍は情報軍よ。この現象を記録するのが私の仕事。戦争より優先」ルシラが言った。
「信用できるのか」レイオンが言った。
「できない」エルクが言った。「でも今は別の問題がある」
門が鳴った。
また揺れた。
裂け目がさらに広がった。
向こう側から、何かが出てきた。
昨夜と同じだった。形が不安定な存在だった。
でも数が違った。
昨夜より多かった。
十体。二十体。数えられなかった。次々と出てきた。
「なぜこんなに」レイオンが言った。
「門が開くほど、漏れる量が増える」ノクトが言った。「完全に開けば、もっと大きいものが来る」
ルシラが口を開いた。「私も知らない存在ね、これは」
全員が振り返った。
「第二軍が持っている情報の中に、この形態の存在は記録がない」ルシラが言った。
「門の向こうから来るものとして想定していた存在とは違うわ」
「魔王軍でも知らないのか」エルクが言った。
「そうよ」ルシラが言った。
「誰も知らないものが来ているのか」
「そういうことね」
全員が黙った。
形の不安定な存在が来た。
「戦う」リアが言った。




